『竹 取 物 語』




★ 下線の引いて、<>内にカタカナを記したものは歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直したものです。
★ オレンジ色でリンクしてある語句は、単語説明がでます。




【本文】

 脱ぎてをく衣を形見と見
たまへ<エ>。月の出でたら<ン>夜は、見おこせたまへ<エ>。見捨てたてまつりてまかる、空よりも落ちべき心地する。

(中略)

 ふと天の羽衣うち着せたてまつりつれば、翁をいとほしくかなしおぼしつることもうせ。この衣着つる人は、もの思ひ<イ>なくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して昇りぬ。




【現代語訳】

 脱いでおきますこの衣を、わたくしの形見と思ってご覧ください。月の出ている夜には、月にいるわたくしの方を見て下さい。後にお残しして去って行きます空から落ちてしまいそうな気がします。

(中略)

 天人がいきなり天の羽衣をかぐや姫の肩におかけ申し上げたので、これまで、翁を気の毒な人、可愛い人、と思っていらした姫の気持ちは跡形なくなってしまった。この天の羽衣を着た人は何の心配もなくなってしまったので、飛ぶ車に乗り、百人ほどの天人をお供に空に昇ってしまった。