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作品名・作者名 あらすじ 表 紙
感想文
おすすめ度・評価
『死者の奢り・飼育』
大江健三郎
(新潮文庫)
ノーベル賞作家である大江健三郎が、芥川賞を受賞した当時の作品である。表題になっている作品を含め、6作の短編が収められているが、やはりもっとも印象に残る作品は、『死者の奢り』と『飼育』であろう。よくぞそこまでと言えるほどダークな世界を描ききっているのが、さすがだなと思う。また『他人の足』という作品も、人間の深層心理を描いた素晴らしい作品であると思う。

80

 
『午後四時までのアンナ』
辻原登
(『文學界』2004年3月号)
謎の多い作品でありながら、最大の謎である女性の正体は明かされない。だからといって、全く分からないという内容でもない不思議な作品であった。ただ何か物足りないという気持ちも残る。

65

 
『アッシュベイビー』
金原ひとみ
(『すばる』2004年3月号)
芥川賞受賞第一作として期待して読んだのだが、全く共感できない作品であった。何でもストレートに書けば良いというものでもないであろう。正直、単なるエロ小説にしか読めなかった。というよりも単なるエロ小説の方がもっとリアリティがあって面白いだろう。その程度の作品であった。

30

 
『図解雑学 宇宙論』
二間瀬敏史
(ナツメ社)
この世で最も神秘的かつ不思議な世界である宇宙について、その誕生から未来の予測まで、あらゆる角度から分かりやすく解説している書である。特にビッグバンやブラックホールなど、よく耳にはするが、なかなか理解できなかったことが、この書を読むと、おぼろげながら、その大枠をつかむことができる。この手の書物の中では、非常に分かりやすい1冊であると思う。

80

 
『海峡の光』
辻仁成
(新潮文庫)
刑務所の看守をしていた私の前に、少年の頃私をいじめた花井が受刑者としてやって来、立場が逆転し、花井を精神的に支配するつもりでいた私であったが、実はそうではなく、花井には花井の生き方がそこには存在していた。
これは作者辻仁成が芥川賞を受賞した作品である。内容的には、非常に平坦な物語であったが、その中に静かな激しさを感じることができる作品であった。ただもう少し、何かが欲しいという気持ちも残った。

70

 
『春の夢』
宮本輝
(文春文庫)
釘で刺してしまった単なる蜥蜴の存在は、この小説にはなくてはならないものである。まさにそれは主人公哲之の心理的なメタファーであり、蜥蜴の悲痛と安堵は哲之のそれと重なってくる。最後に蜥蜴がいなくなるのは、まさに哲之の自由の象徴であり、この先の未来を暗示している。全体として、非常にうまくまとまった作品であると思われる。

85

 
『凍裂』
瀧澤美恵子
(『文學界』2004年2月号)
あまり想像力を掻き立てない単調な内容であった。保雄の事件から自分たちの過去を顧みる手法もありきたりなものに感じた。無難な展開も悪くはないのだが、それに飽きを感じさせないような書き方をしてもらいたかった。

60

 
『パラレル』
長嶋有
(『文學界』2004年2月号)
物語の中のまさに「パラレル」な時間移動が、一貫性があり違和感を持つことなく読むことができた。また七郎と津田の素直な生き方にも共感でき、全体としてよくまとまった、面白い作品であった。

80

 
『コーヒー・チェリー』
宮崎誉子
(『文藝』2004年春号)
単調な日常生活をごく自然に描いているところがいい。ストーリーにこれといった山場はないのだが、読後に何か爽快感を味わうことのできる作品であった。

70

 
『リュウグウノツカイ』
長野まゆみ
(『文藝』2004年春号)
大正時代から現代にタイムスリップしてしまうという不思議な話である。しかし終わってみれば元の世界に……。いったい何だったの??ソイの存在意味は??基本的に意味の分からない作品であった。

55