横 笛
よこぶえ



<巻名>







<本文>

 故権大納言のはかなく亡せ給ひにし悲しさを、飽かず口惜しきものに恋ひしのび給ふ人多かり。六条の院にも、おほかたにつけてだに、世にめやすき人の亡くなるをば惜しみ給ふ御心に、まして、これは朝夕に親しく参り馴れつつ、人よりも御心とどめ思したりしかば、いかにぞや思しいづることはありながら、あはれは多く、をりをりにつけてしのび給ふ。御はてにも、誦経などとりわきせさせ給ふ。よろづも知らず顔に、いはけなき御ありさまを見給ふにも、さすがにいみじくあはれなれば、御心のうちにまた心ざし給うて、黄金百両をなむ別にせさせ給ひける。大臣は、心も知らでぞかしこまりよろこび聞こえさせ給ふ。

<現代語訳>






<評>