御 法
み の り
<巻名>

<本文>
紫の上、いたうわづらひ給ひし御ここちの後、いとあつしくなり給ひて、そこはかとなく悩みわたり給ふこと久しくなりぬ。いとおどろおどろしうはあらねど、年月かさなれば、たのもしげなく、いとどあえかになりまさり給へるを、院の思ほし嘆くこと限りなし。しばしにてもおくれ聞え給はむことをばいみじかるべくおぼし、みづからの御ここちには、この世に飽かぬことなく、うしろめたきほだしだにまじらぬ御身なれば、あながちにかけとどめまほしき御命ともおぼされぬを、年ごろの御契りかけはなれ、思ひ嘆かせたてまつらむことのみぞ、人知れぬ御心のうちにもものあはれにおぼされける。
<現代語訳>
<評>