<巻名>
藤壺女院の御前、冷泉帝の御前と両度にわたって行われた絵合の行事による。
<本文>
前斎宮の御参りの事、中宮の御心に入れてもよほし聞え給ふ。こまかなる御とぶらひまで、とり立てたる御後見もなしと思しやれど、大殿は、院に聞しめさむことをはばかり給ひて、二条の院に渡し奉らむ事をもこの思しとまりて、ただ知らず顔にもてなし給へれど、おほかたの事どもはとりもちて親めきえ給ふ。
<現代語訳>
前斎宮の御入内は、中宮が御熱心に御催促なさる。相当な人で、こまかなことまで面倒を見てあげるようなお世話役もないと、お察しにはなるが、大殿は、朱雀院のお聞き遊ばす事をはばかりなさって、二条の院へお移し申す事も今度はおやめになって、全く知らぬ顔をしていらっしゃるけれども、一通りの御用意は引き受けて、親のようにしておあげになる。
<評>