作品名・作者名 あらすじ 表 紙
感想文
おすすめ度・評価
『こころの処方箋』
河合隼雄(新潮文庫)
心理療法の医師である著者が、人生でぶつかる様々な場面において、どう対処していけばよいのかを、55章に分けてその秘策を語る書である。そんな場面あるなぁなどと頷きながら読め、また心の安心を得ることのできる書であった。

80

 
『この言葉!』
森本哲郎(PHP新書)
誰にでも心に残る言葉というものはある。これは著者・森本哲郎が感銘を受けた言葉50話を題材に氏の感想的なものを述べた書である。その通りという考えもあれば、氏の意外な視点もあり、一言の重みというものを十分に感じさせられる内容である。「おわりに」で氏が述べているように、言葉は単なる記号・道具なのではなく、人生の糧だということを再認識できる書であった。

85

 
『約束』
村山由佳(集英社)
小学4年の4人の仲間には幸せな時が流れていた。しかし突然仲間の1人であるヤンチャが原因不明の病気にかかる。3人はタイムマシンを作り未来から医者を連れてくる計画を立て、完成したらヤンチャを一番に乗せる「約束」をする。しかし、それは果たされないままヤンチャはこの世を去ってしまう。それから多くの歳月が過ぎ、だんだん記憶も薄れてしまったが僕は……。
これは悲しい小学校時代を回想して書かれた物語である。全体的には挿絵も多く、小学生向けという感じで書かれたものであるが、中味はそんなに濃いものとは思われない。また過去(小学4年生時代)と現在との言葉遣いでの区別がなく、例えば「理屈」などという言葉を小学4年生が使うとは思われない。そういう部分が随所に見受けられ、ちょっと違和感を感じた。さらにこれだけの分量で\1600はちょっと高いなとも思う。

60

 
『峰雲へ』
阿部夏丸(小学館)
舞台は昭和40年代の矢作川。少年たちはそれぞれに川への憧れを抱き、川と関わり合っていく。そこでの出会いと別れを経験することで、少年たちは、それぞれに大きく成長していく物語。
いわゆる田舎を舞台に、少年たちが川という自然を共有することで、様々な体験をする物語であるが、悲しい別れや淡い恋、そして喧嘩などをすることで、より一層友情を深めていく様子が非常にうまく描かれていると思う。また経済・科学ともに発展した現代に対する痛烈な批判も読みとることができるであろう。いろんな意味で読みやすい作品であった。

85

 
『少年』
ビートたけし(新潮文庫)
これは「ドテラのチャンピオン」「星の巣」「おかめさん」の3つの短編小説を収録したもので、東京・大阪・京都を舞台に少年時代を題材にした作品である。タレントビートたけしからは想像もつかない純粋小説で、大人が読んでも、少年時代を思い出しながら、どんどん吸い込まれていくような内容であった。少年の微妙な心理状態がうまく表現されていて、思わず自分もそんなことあったなぁと共感してしまう作品であった。

80

 
『哲学入門』
梅香彰(大和書房)
この書は、「自分らしく生き、自分たしく死ぬための」という冠題が付いているだけあって、「死」というものが「生」とどのように関わり合ってくるのかを、ギリシャからニーチェまでの哲学を扱い、分かりやすく解説したものである。「死」というものが、「生」という生命力に輝きを与えるという考えを古代哲学から掘り起こしたもので、初心者にも分かりやすい内容になっていると思う。

75

 
『物語の女性 十二講』
NHK編(日本放送協会)
この書は、昭和29年に放送されたものを、本という形で出版した古いものであるが、内容は物語の登場人物である女性から、小野小町・道綱母など実在した女性まで12人について語ったものである。一般視聴者向けということもあって、非常に分かりやすく、そして親しみやすい内容になっている。特に研究的なものではないが、その人物像の輪郭は抑えてあるものであった。

70

 
『テキストと実存』
平井啓之(講談社学術文庫)
ランボー・マラルメ・サルトル・そして中原中也と小林秀雄の作品を扱い、テキストと主題体系の関係について論じたものであるが、僕の読解力不足で、ちょっと何を言っているのか掴めないような内容であった。もう少しその分野に詳しくなってから読んでみようと思う。

15

 
『智恵子抄』
高村光太郎(新潮文庫)
詩というものがどれほどの奥深さを持っているかを語るほど、詩については分からないが、この書の持つ重みは十分伝わってくる。書の重みというよりは、高村光太郎の心の重みと言った方が適当かもしれない。妻智恵子の病気との壮絶な闘い、それは文庫の後半に載せられている「智恵子との半生」その他の文章でも理解できるであろう。自分を光太郎と同じ立場にして考えることは難しいが、もしを想像した時、自分ならどのように対処するであろうか。長い歳月を戦い抜く気力があるだろうか。非常に考えさせられるものであった。

75

 
『沈黙』
遠藤周作(新潮文庫)
島原の乱が終わった直後の厳しいキリスト教弾圧によって恩師フェレイラが「転ん(転ぶ)」(キリスト教を捨て去ること)だという噂を聞いた司祭ロドリゴは日本へ確認と布教のためやって来る。そこで見た厳しい状況に、神の沈黙という最も根本的な疑問に苦悩し、ついには自分も背教という淵に立つことになる。
この作品の感想を一言で言うなら重たいとしか言いようがない。ロドリゴの立たされた状況を自分の身として考えることはできないが、その心情が非常に強く伝わってくる。自分が信じるもの、それが一体どういうものなのか。そしてそこに存する矛盾をどう考えるべきなのか。大変難しい問題である。

80