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作品名・作者名 あらすじ 表 紙
感想文
おすすめ度・評価
『日本人のしきたり』

飯倉晴武(青春新書)
最も身近にありながら意外に知らない年中行事。たとえば正月や節分など、誰でも知っている行事・しきたりの由来・本来の意味を分かりやすく解説している。当たり前のように小さい頃からやっていたことが、実は全く間違ったやり方であったりとか、なんだそのための行事だったんだーなど、驚きが多い。日本人としてのアイデンティティの原点とも言えるこの日本文化を、是非ともこの本で見直し、理解していきたい。

70

 
『「近代日本文学」の誕生
百年前の文壇を読む』

坪内祐三(PHP新書)
これは雑誌『文学界』に連載されていたものを1冊の本にまとめたものである。内容は明治32年の尾崎紅葉についてから始まり、39年の二葉亭四迷『其面影』までの間に起きた文学世界の出来事をコンパクトでありながら、中身濃くまとめあげたものである。文学の案内書というわけにはいかないだろうが、多少なりとも近代文学に興味のある人は面白く読めるのではないだろうか。

70

 
『知ってる古文知らない魅力』

鈴木健一(講談社現代新書)
誰でも学校で勉強したことのある古文、たとえば『竹取物語』や『枕草子』・『奥の細道』など、あの有名な作品の意外な真実を分かりやすく解説。一時期、日本史で学校では習わないシリーズが流行したが、それの古典版のような作品である。古文をそれほど知らないという人も、楽しんで読める書であろう。中学生から大人まで幅広い層にお勧めの一冊。

80

 
『一瞬の風になれ1〜3』

佐藤多佳子(講談社)
高校の陸上部を舞台にした青春小説とでも言うべきもの。内容は、特に際立つところがあるわけではないが、それがこの小説の味になっているように思われる。つまりありきたりの日常における仲間との交流と心の葛藤、それが非常にうまく描けている作品ではないだろうか。読んだ後に心地よさが残った。

85

 
『100文字でわかる哲学』

鷲田小弥太(ベストセラ−ズ)
これは古代ギリシャ・ローマから近代西洋哲学、それに東洋の哲学をすべて100文字という限定字数で説明したものである。読みやすさはあるが、もちろん突っ込んで理解するに至ることはできない。あくまでも哲学案内程度に読むことをおすすめする。これを読んで興味を持ったものは、もっと詳しい書物にあたるべきであろう。

60

 
『裁判官の爆笑お言葉集』

長嶺超輝 (幻冬舎)
普段関わり合うことは皆無とも言える裁判が、いったいどのようなに行われているのかという探求心を、いっそう駆り立てる内容である。もちろん裁判そのものの仕組みが書かれているわけではないが、意外に蚊帳の外であった裁判に対して、この本を読むと、親近感すら抱くことになる。それが著者の狙いであるのだと思うが、これを読んで、是非とも遊び半分というのは不謹慎だが、裁判の傍聴をしてみたいと思う。もちろん当事者にはなりたくないが・・・。

80

 
『手紙』

東野圭吾(文春文庫)
犯罪加害者の家族の生活というものを、リアリティをもって、特にその心理描写をうまくうまく描いている作品だと思う。世間からの目とたとえ加害者であったとしても家族であるという心の葛藤が、絶妙なニュアンスで伝わってくる内容であった。

90

 
『海行き』

木村紅美(『文学界』2006年11月号)
現在と回想をうまく織り交ぜながら、学生時代の仲間と数年ぶりに再会していく物語。離ればなれになることで途切れたかに見える友情も、会ってみるとなつかしく、また過ぎ去った日々がお互いを成長させてもいた。ほんの短い再会を、音楽を通じてさらに強固な関係へと物語は進んでいく。再会することで、一つの気持ちの整理ができた主人公の描写は、ありがちな手法のようにも思えるが、心地よさの残るものであった。

75

 
『美しい国へ』

安倍晋三(文春新書)
安倍総理が内閣総理大臣になる直前に書いた本である。内容は、祖父や父の話、自分の生い立ちなどを語りながら、現代へ目を向けていくものであるが、当然、自分が総理になることを念頭に置いて書いたものなので、ある意味、ちょっと早い所信表明演説みたいなものである。話題にはなったが、正直、言ってることを全部実現できるのかよーと叫びたくなる内容であった。安倍総理に期待はしたいが、ちょっと勢いが足りないと思うのは僕だけだろうか・・・。

50

 
『入門!論理学』

野矢茂樹(中公新書)
論理的に考えるなんて、よく言うことばだが、実際、論理とは何なのか。それを分かりやすく説明したものが、この著作である。日常的な会話から様々な論理を解説していくのだが、その中でも特に何気なく使われている、「かつ」「または」「ならば」といった単語を中心に、その本質のガイダンスを行っている。ただ、僕のような全くの素人には、入門と言っても難しく、特に専門的な用語が意味することを覚えることもままならなかった。おそらく僕の理解力が足りないことが大きいのだろうが、全体の内容の30%くらいしか理解できなかった。

60

 
『夜のピクニック』

恩田陸(新潮文庫)
第2回本屋大賞受賞作。以前からかなり人気のある本だとは知っていたが、どうも単行本で買う気が起きず、文庫が出るまで待っていたが、最近の流行語ではないが「予想外」の面白さに一気に引き込まれた。内容としては特に大きな出来事・事件が起きるわけではないし、たった一晩のウォーキングなのだが、夜という非日常的な時を超えることによって成長していく二人の高校生の人間模様がよく描かれていたと思う。また主人公の二人を囲む脇役(?)たちが、それぞれの人間性を発揮し、物語に深みを与えている。この本のカテゴリーは青春小説ということになるのかもしれないが、世代を越えて楽しめるものだと思う。

90

 
『あなたに語る日本文学史』

大岡信(新書館)
詩人である大岡信が書いた日本文学史。「はじめに」でも書かれている通り、いわゆるすべての作品を網羅した文学史とは違い、文学の源泉でもある和歌の流れから話を進めていくものである。万葉集から徐々に近代和歌へ。さまざまな歌人の人生なども織り交ぜながら、いかに和歌が文学の中心であったかを分かりやすく説明されている。教養として一般読者にも分かりやすい一冊である。ただし『源氏物語』や漱石・鴎外など、いわゆる散文の歴史を知ることはできないが、意外に文学史で軽視されがちな和歌の伝統を知るには最適である。

85

 
『日本神話と古代国家』
直木孝次郎
(講談社学術文庫)
『古事記』『日本書紀』の記述から、神武天皇など初期天皇の実在を打ち消す画期的な著作である。津田左右吉の研究を随所に絡めながら著者の見解を述べていくのだが、我々が一般的に信じてきたものが、実はウソであったことを論理的に述べていく内容に、思わずそうだったのかと納得してしまう。特に『記紀』神話は、古代天皇の作為であったという著者の見解には、驚きを感じる。神話というものは、本当に奥深い・・・。

75

 
『明るい夜』
黒川創
(「文学界」2005年4月号)
1人の女の子を主人公に据えて、その日常生活や、また心模様を描いた長編小説であるが、それが作者の狙いなのかもしれないが、内容が単調すぎて飽きがくる作品であった。文章にも、もっとメリハリをつけたものの方が良いように思われた。

50

 
『明日の記憶』
荻原浩
(光文社)
若年性アルツハイマーに罹った会社員を主人公に据えての物語である。当初はちょっと物忘れが多いな程度に思っていたが、医師の診断により病気であることが発覚する。しかし、その病気をすぐには受け入れられない主人公の気持ちは共感できる。さらに病気を介しての妻との心の交流はなんとなく重苦しい病気との闘いの最中でありながら、心温まる雰囲気を出している。逆説的だが、病気になったからこその妻との関係であったのかもしれない。もし自分が同じ病気になったら。もし自分の大切に思う人がそう病気になったら。いろいろ考えさせられる内容であった。

80