作品名・作者名 あらすじ 表 紙
感想文
おすすめ度・評価
『死体洗いのアルバイト』
坂木俊公
(イースト・プレス)
これは人気のあるWEBサイトを書籍化したもので、中心は病院での噂や伝説を現役医師が記していったものである。あり得ないと思われるような心霊現象から、笑い話まで歯切れの良い文章で綴られていて、思わず読み入ってしまう内容であった。

75

 
『哲学の教科書』
小須田健
(明日香出版)
日本一分かりやすいと銘打っているだけあって、難しい哲学の世界を非常に分かりやすく説明されているものと思う。また様々なたとえが理解度を深めるのに役立ち、よりその世界を深く味わうことができる。これを読んだ後に、それぞれの著作にあたってみると、より哲学の世界を楽しめるのではないだろうか。

80

 
『あらすじで読む 日本の名著』
小川義男
(中経出版)
日本文学の中でも名著と呼ばれているもの、たとえば『浮雲』や『五重塔』、または『金閣寺』などの作品を、あらすじという形でまとめたものがこの書であるが、単なるあらすじではなく、所々で本文を引用しているため、作品の雰囲気も味わうことができるものになっている。特に中学生・高校生が読んで、興味を持ったら是非とも全文を読んでもらいたい。ただ、まだ他にも紹介してもらいたい作品もあるので、この書の第二弾を期待したい。

80

 
『岐路に立つ君へ
   −価値ある人生のために』
福田和也
(小学館文庫)
これは亡くなった親友に遺言として、息子(N君)へ「男の生き方」について教えてやってほしいということから、N君にあてた手紙8通を書物の形にしたものである。内容としては、主にN君の就職活動から就職、そして独立までのまさに人生の岐路についてのアドバイスとなっている。おそらく対象読者もそのような立場にある人たちが一番理解できる層になっているだろう。しかし僕のようなすでに職につき、ある程度年数がたった者にも、心に訴えるものがあるが、僕にとっては共感半分、そんなこと当たり前だよという内容が半分という感じであった。

70

 
『老いたる蜂』
北岡耕二
(『文學界』 2003年11月号)
ある日の夜、古い館で火事が起き、その焼け跡から3人の焼死体が発見される。2人の遺体は身元が判明したが、残りの一人は誰か分からない。その謎を握る火事の生存者真子は、数年後にようやく真相を語り出す。そしてそこで語られる驚くべき事実とは…。
容赦なく襲いかかる老いに対し、いつまでも若さを保ちたいという女性の心理を、様々な意味で歪曲した形で表現したのがこの作品である。タエのいる不思議な空間と空気、それに徐々に引き込まれていく真子と花井。三者がともに被害者であり加害者でもある状況を、迷路に迷い込むようなストーリー展開で進んでいく。なかなか深みのある良い作品であるように思われる。

75

 
『蹴りたい背中』
綿矢りさ
(河出書房新社)
高校に入学してからグループに入って無理矢理な仲間意識を持つことを拒否するハツは、徐々にクラスの中でものけものにされていく。同じようにクラスの輪に入れずにいるにな川と、ひょんなことから話をするようになり、徐々に二人は親交を深めていく。
前作は著者がまだ高校生の時に書いた作品であった。それゆえ作品自体に深みが足りないように思い、2年間の成果をこの作品でみようと思ったが、正直あまり変わりはないように思える。基本的に無駄な、分かりづらい比喩が多く、作品の内容に関しても、著者が何を言わんとしたのかが分からない作品になってしまっている。2作品とも舞台を高校にしているが、次回は、全く違った設定にも挑戦してもらいたい。

65

 
『日本語 表と裏』
森本哲郎
(新潮文庫)
普段何気なく使っている言葉の語源や成り立ちを、自分の説と他の人の説をうまく織り交ぜながら、書かれた書である。ありふれた言葉でありながら、思わぬ発見があり、言葉の面白さを感じられるものになっている。中学生以上なら誰でも読んで楽しめる書であると思う。僕としては、この著者の『この言葉!』(PHP新書)ともどもお勧めしたい書である。

80

 
『ニーチェ』
清水真木
(講談社選書メチエ)
哲学者ニーチェの生涯とその哲学の表面的な部分を非常に分かりやすく説明している。ニーチェのある意味、変人ぶりや、また努力家でもあったことや、また妹との確執、それによって以後のニーチェに対する誤解を生んだことなど、大変興味深いことが書かれている。ニーチェについて知りたいと思うなら、まずこの書から読んでみるといいかもしれない。

85

 
『異界と日本人』
小松和彦
(角川選書)
様々な絵巻物語を題材に日本人と異界との関係を述べたものであるが、一つ一つの項目に関して、物語の内容から詳しく、そして興味をそそるように書かれているので、誰にでも楽しめる書物になっている。「異界」などと難しく考えなくても、物語の魅力のみを味わっていけるところが非常にいいと思われる。

80

 
『ピジョンゲーム』
辻仁成
(『文學界』 2003年10月号)
率直に言って、主題らしきものが見つからない作品であった。ハトと妻との関連性がよく分からず、また設定も現実的な部分と非現実的な部分が錯綜し、読みながら混乱を生じるものであった。正直、難しい作品だった。

30