鍋割山14なべわりやま) 

#292 2019/3/18(月) 鍋割山 1,252m




見上げれば抜けるような青空。一日中富士山が見える日。僕を待ち構えていたかのように、バスに乗るや否や満員のバスは動き出す。大倉着。やけに中高生が多い登山客。皆塔ノ岳へ登るようだ。僕はひとり鍋割山へ。ところで今日は久々の山行。実は辛い山登りを嫌って、家で温々と過ごした3ヶ月だった。近頃は息絶え絶えに上り、怖々と下る体たらく。挙句の果てに疲労困憊、動けなくなる始末。そんな山登りはしたくない。齢はとりたくない。あと1年で傘寿を迎える。

桧の植林を抜け、西山林道を四十八瀬川に沿って遡上する。退屈な林道歩き。繰り返して現れる看板に気を紛らわす。「土砂流出防備、保安林」「豊かな森、山火事注意」「水源の森林」等々。1時間の林道歩きで二俣。勘七沢に架かる梯子橋の手前に注意板と塩が置かれている。「ヤマビル対策用塩あります」「ヤマビル防除、駆除用にご利用ください」「ヤマビルを見つけましたら、増やさないためにも必ず退治しましょう。塩や虫除けスプレーなどをかけて必ず駆除してください」

丸萱尾根 丸萱尾根の無木立広場


勘七沢を二連の梯子橋で渡る。車止めのロープを跨いで進むと小丸尾根入口がある。看板、「階段や木道を歩きましょう」「野生動物と共存するために紙は持ち帰るのが山のトイレのマナーです。ゴミはすべて家まで持ち帰りましょう」「自然にやさしい登山を心掛けていますか」 林道が北へ向かうと前方にこんもりとしたコブが見える。丸萱尾根の928米峰。二俣から30分、本沢。数十米上流に砂防ダムが見える。本沢を梯子橋で渡り、右岸を枯れた雑草を掻き分けて堰堤を越える。

丸萱尾根は本沢とミズヒ沢とを分け、鍋割山稜に突き上げる稜線のこと。高低差750m、標準時間は上り2時間30分、下り2時間だという。6年前、ミズヒの大滝の手前から急峻な尾根を上りはじめたが、ずるずると足元が崩れ、這うようにしてやっと上った尾根。上るに辛く、下るに難い。さて丸萱尾根は小丸尾根や鍋割南稜とは異なり、ヴァリエーションルート。当然道標はないにせよ、踏み跡や目印がないかと探したが見つからない。えい、ままよと植林帯に足を踏み入れる。

鬱蒼とした桧の森、下生は枯草。砂混じりの崩れやすい急斜面を上る。なんと踏み跡が突然現れる。吃驚。忠実にトレイルを辿るが時折見失ってしまう。樹林は暗い桧林から明るいブナ林へと替る。早くも疲れはじめ、遅々として歩が進まない。ブナの根が張りめぐらされた尾根を上りつめ、やっと928米峰。中央に大きなブナが生えている。ここで靴ずれの養生をしながらひと休み。一旦下って上り返しアセビの群落を抜け、白ザレの細い尾根、大木が行く手を阻むヤセ尾根を通過する。

鍋割山稜から見る富士山、手前は鍋割山 鍋割山荘 本日休業


樹木の間から鍋割山が見える。標高1000m、鍋割南稜から雪を戴いた富士山が覗く。ブナの樹林帯が途切れて草地になる。振り向けば南に湘南の市街地、相模湾に突き出る真鶴半島、箱根連山。御坂山塊。遠く愛鷹連峰、富士山。休み休み上ってきたがもう疲労困憊。枯れた草地にへたり込む。またとぼとぼと尾根筋を急登。やがて平坦になると鍋割山稜に出る。鍋割山稜とは大倉尾根の金冷シと鍋割山を結ぶ稜線。この尾根道から鍋割山越しに見る富士山がまさに絶景。

北には丹沢主稜の山々が連なる。桧洞丸、臼ヶ岳、主峰の蛭ヶ岳、棚沢ノ頭、不動ノ峰、丹沢山。この稜線も木段の上り下りに成り下がったのか。鍋割山着。なんとカヤトで埋めつくされた山頂。鍋割山荘は本日お休み。静かな山頂に2組の登山客が居る。頭を雲に纏った富士山を見納めて南稜を下山する。後沢右岸尾根を降ろうとしたが、なんと作業用の階段が出来ている。嫌気がさして後沢乗越から大倉に戻ろう。夕闇せまる西山林道。急がねばと思っても言うことを利かない足。


快晴 単独行 歩行距離=15.4km 歩行時間=9時間15

小田急線、渋沢駅北口7:16⇒(神奈中バス)⇒7:31大倉

大倉7:35→8:50二俣9:05→9:30本沢、丸萱尾根取付き→10:45丸萱尾根、928m峰11:00→12:25無木立広場12:35→13:10鍋割山稜13:15→13:40鍋割山13:55→15:15後沢乗越→16:20二俣16:30→18:00大倉
大倉18:22⇒(神奈中バス)⇒18:35小田急線、渋沢駅北口