伊勢沢ノ頭5 いせざわのかしら 
#290 2018/5/21(月) 伊勢沢ノ頭 1,177m




丹沢の伊勢沢ノ頭に登る。雨山峠から林道秦野峠に続く雨山山稜、その南端に位置するのが伊勢沢ノ頭。登路には伊勢沢ノ頭の東南尾根やP1,086の西尾根から登るルートがあるという。何れもVR。5月なのに夏が来たような陽気。路線バスを終点、寄まで乗り続けたのは僕と赤シャツのお兄さんだけ。バス停に松田警察署のポスターが貼られている。「単独登山はやめましょう。登山コースを歩き枝道やわき道は避けましょう。登山カードを出して登りましょう」 なんだ僕のことか。

気持ちいい山里の朝、中津川に沿って県道神縄神山線を北へ遡る。堰堤から落ちる激しい水音、路傍の叢から聞こえる蛙の鳴き声。前方、立ち塞がるように聳える雨山山稜。あれは桧岳、雨山。道幅が幾分狭くなった松田町稲郷から、県道は秦野峠線林道と名を変える。やどりぎ水源林前に駐車するマイカーは2台。左折して赤い寄大橋を渡る。見下ろせば、中津川から名前を変えた寄沢の広くて真っ白な河原。遙か上流に鍋割山。対岸に渡ると閉ざされた車止めゲートがある。

伊勢沢ノ頭 ヤマツツジ


ゲート脇をすり抜けるとすぐに周遊歩道A入口がある。林道を歩いて10分、成長の森入口。ここは桧岳への登り口でもある。20分で中ノ沢に架かる中沢橋の赤い橋脚が見えてきた。目指す伊勢沢ノ頭東南尾根の突端は、とりもなおさず中ノ沢の右岸尾根。取り付き地点を探すが見つからない。えいままよと、法面を這い上って尾根の背に乗る。そこは間伐材が転がる杉林。取り付きから20分、左からよく踏まれた作業道が合流する。林道の先に、楽な取り付き地点があるようだ。

しっかり踏まれた尾根上の作業道を上る。展望はない。樹林は杉林から桧林、また杉林に変わる。尾根の右斜面は新緑の闊葉樹林。二つのこぶを左から巻き、次いで右から巻く。尾根を直登して1時間、ジグザグの長い上りになる。この尾根の一本道が山頂まで伸びれば楽勝だが、幸運はいつまでも続かない。標高1,000m付近、植林帯から自然林に代わり、林床は草地となる。山道は分岐する。右を選んで大正解。次の分岐も右へ進むと、下方に向かってゆく。選択を誤った。

分岐に戻って別の踏跡を辿ると道は消失する。上方に鹿柵が見える。新緑の樹林に咲くヤマツツジ。草地を遮二無二上れば、左に斜上する踏跡に出る。前方に道標が現れる。雨山峠34km、林道秦野峠21kmの標示。やっと上り着いた雨山山稜の主稜線。ここは伊勢沢の頭から秦野峠へ数分下った地点。振り返れば、草に覆われて上って来た踏跡は見えない。この東南尾根を下山したら無事に降れる自信はない。伊勢沢ノ頭山頂は陽が射さない混交林の中。展望はない。

伊勢沢ノ頭から秦野峠へ下りながら見る富士山 箱根連山 神山と金時山


山頂から南へ、林道秦野峠経向かって下山する。樹林を抜ければ拡がる好展望。シダンコ山、湘南の市街、箱根連山、相模湾、霞む江ノ島。西方に愛鷹連峰、富士山。さすが山地図に載る一般登山道、道標は金属製に新調され、かつてはカヤトが生い茂った急斜面は丸木の階段が設けられている。P1,086を巻き、急斜面の右側に鹿柵が現れる。それにしても疲労が溜まり、木段を下りる度に膝にずしんと響く。これではP1,086の西尾根を降る当初の予定を断念せざるをえない。

自然林に入れば勾配は幾分緩み、新緑の林にヤマツツジが映える。だが安心してはいけないよ。崩落箇所を鉄鎖に縋って高巻き、浮き石だらけのガレ場は虎ロープの助けを借りて通過する。樹林の秦野峠に着く。かつて寄と玄倉とを結ぶ山道の峠であったが、寄への道は越すことのできない堰堤があるし、玄倉への道は崩落、消失し、今では廃道となっている。涸沢を渡り、小さなこぶを越えて林道秦野峠に軟着陸する。しばし足を休めて、秦野峠林道を7km余り歩いて寄に帰る。


晴れ 単独行 歩行距離=153km 歩行時間=7時間10

新松田駅730⇒(富士急湘南バス)⇒755
800830寄大橋835900中ノ沢右岸尾根取付き→1150伊勢沢ノ頭12101330秦野峠13401420林道秦野峠14351535寄大橋→1600

1655⇒(富士急湘南バス)⇒1720新松田駅