大山13 おおやま) 

279 2016/12/3(土) 大山1,252




已んぬる哉、取り柄のスタミナも衰え、山登りが辛くなってきた。上りは心肺機能、下りは技術といわれるが、もはやどちらも頼りない。山は招く。喉元過ぎれば熱さを忘れ、また山に登る。山は丹沢の大山。起点は日向薬師。日向薬師からの登山コースは、日向ふれあい学習センター又はつづら坂を登り口とする一般登山道や、梅ノ木尾根、鍵掛尾根を上るバリ道がある。でも何だか物足りない。山地図をつらつら眺めてみる。まだ登ったことのない屏風尾根の直登が面白そうだ。

晴れて気持いい朝、日向川に沿って歩く。日向の里には由緒ある神社仏閣が続く。日本三大薬師のひとつ、霊山寺日向薬師は先月平成大修理が落慶したばかり。開門時間は1000、この時間は門前払いか。動物による作物被害を防ぐため、通電した金網で囲われた畑地を通過。対岸に三重の塔が見える。浄発願寺。80年前、台風による山津波で壊滅、1km下流のこの地に移転した。かつて、殺人や放火犯以外なら、どんな犯罪人でも許された公認の駆け込み寺だという。

屏風尾根を上って一般登山道に出る 前方に大山 晴れていれば左端三ノ塔の後方に富士山は見える
右端は丹沢山、その二つ左の峰が塔ノ岳


朝日に映える緑の山肌に黄葉が点在する大山と989米峰が見えてきた。杉林を切り拓いた一本道を進む。石雲寺を通過する。かつて幕府の手厚い庇護を受けた古刹。400mほど下った所にある石造りの五層塔は、壬申の乱で敗れた大友皇子の墓と伝えられている。浄発願寺の奥ノ院を通過。日向ふれあい学習センターの手前に、見晴台への登り口がある。その先には駐車場。既に30台ほどのマイカーが居並ぶ。鎖が張られた舗道を進んでつづら坂への登り口を通過する。

ふれあいの森キャンプ場を過ぎると道は二つに分かれる。左へ曲がると屏風沢の大堰堤へ、右への砂利道は積み重ねられた杭の束と木小屋が見える。そこは斜面を急勾配で上るモノレールの出発点、小屋はモノレールの格納庫。しかも屏風尾根の取り付き点。勿論道標なぞない。レールをくぐって地面に突き刺され曲げられた鉄棒の階段を上る。7段上ると階段は尽きる。つぎは右上に遡上する薄い踏み跡を辿る。崩れやすい泥土の急斜面。いつの間にか踏み跡は消える。

悪戦苦闘、滑り落ちまいと這い上って、尾根の背に乗ればひと安心。気が付けばモノレールとは数十米も離れている。989米峰へ上るにはレールに付かず離れず上ればいい。樹林は広葉樹が多い混交林。尾根の左斜面はまだ残る紅葉、黄葉。右斜面は針葉樹林。黒土に薄く積もった落葉。下方から緑色のシャツを着た人が上ってくる。「誰も居ないと思った。紅葉の盛りは過ぎたが、この尾根は紅葉がきれいなので、登るのは3回目」と言って、僕を追い越して軽快に上ってゆく。

三峰山、右端は八洲ヶ岳、後方は仏果山、高取山


踏み跡は時々現れてまた消える。モノレールを何度も跨いで歩き易いところを探して歩く。左方から鹿柵が迫りまた離れる。尾根の半ばから針葉樹林に入る。高圧線の下を上るようになる。針葉樹林が終ると、樹相は陽が射して明るい落葉した広葉樹林に変わる。植生は棘のある草地。傾斜が緩むと屏風尾根は終わり、唐沢峠と雷ノ峰尾根を結ぶ一般登山道に出る。あれ、989米峰頂上のベンチが見当たらない。好きなように上るうちに、モノレールと大分離れてしまったのだ。

視界が開け、大山山頂のパラボラアンテナ群が見える。振り返れば三峰山の連なり、厚木市街。雷ノ峰尾根はぬかるみと丸木の階段続き。登頂、大山。今日は晴れたウィークエンドにつき、山頂には溢れんばかりの人。辟易して本社裏手の展望地に回る。残念ながら富士山は見えない。電波塔の台座に腰を下ろして昼食休憩。前庭に出れば、ぼんやりと霞む江の島、真鶴半島。下山は一般登山道。雷ノ峰尾根から阿夫利神社下社へ、大勢のハイカーと列をなして下りてゆく。


晴 単独行 歩行距離=75km 歩行時間=5時間40分

小田急、伊勢原駅705⇒(神奈中バス)⇒725日向薬師
日向薬師バス停730810屏風尾根取付8251030P989→1100不動尻分岐→1120大山11501210不動尻分岐→1300見晴台13101335阿夫利神社下社
阿夫利神社1350⇒(大山ケーブルカー)⇒1356大山ケーブル
大山ケーブル駅14001420大山ケーブルバス停
大山ケーブル1430⇒(神奈中バス)⇒1450伊勢原駅