宮宕山 みやごやま  

275 2016/5/22(日) 境沢ノ頭 1,460宮宕山 1,362棚横手山 1,306甲州高尾山 1,092




大菩薩嶺を源流とする日川、その右岸尾根を日川尾根といい、寂峰の山々が連なっている。3年前に登った源次郎岳や恩若ノ峰もそのひとつ。さて宮宕山から甲州高尾山へ縦走せんと、ガイド本やウェブを探すが、お気に召すルートがない。店頭で覗き見る最新の山地図に、嵯峨塩橋から宮宕山へ、登山路でない小道が載っている。このルートを結び付ければ極上の縦走ができそうだ。だが懸念したとおり、取り付け点が分からず、踏み跡を見失い、急登を這い上がった山行だった。

夏を思わせるよく晴れた日曜日、甲斐大和駅から上日川峠行きのバスに乗る。季節運行、しかも土日祝日限定の栄和交通バス。満員のバスは日川を嵯峨塩橋で渡ってから、随分先まで走って停車する。勿論下車するのは僕ひとり。嵯峨塩橋へ戻りながら枝尾根への登り口を探す。初めに取り付いた法面は、深い藪に遮られてやむなく退散。ようやく三角コンパを指す私製の道標を見つける。上り始めは幅広の道、やがて道は狭まり小さなじぐざぐを描いて上ると踏み跡を見失う。

泥を崩しながら遮二無二急斜面を這い上がって枝尾根の背に乗る。枝尾根を上れば右手から伸びてきた小尾根と合流する。足元に転がる「境沢橋→」との板片。境沢橋ってどこだ。もしや僕が取り付いた場所かしら。ややもすると右下の谷間へ引き込まれそうになる。南より古部山からの尾根が合流して、やっと三角コンパ。「←境沢ノ頭、↓古部山、境沢橋→」の道標がある。三角コンパとは伐採された材木を集めておくところだそうな。新緑の森、聞こえる沢音、ハルゼミの斉唱。

深沢峠から見る御坂山塊の後方に富士山 樹林の中の宮宕山山頂


北西へ延びる尾根が境沢ノ頭への道。ほどなくトウゴクミツバツツジが咲く境沢ノ頭、三角点峰。樹木が伐りとられた明るい山頂広場。展望はない。深沢峠へ向かわんと、保安林の立札から下り始めて気が付いた。南西へ下っている。慌てて山頂に戻り、25千分の1地図で方角を調べる。道標は「三角コンパ、深沢峠→」 分かり難い下り口を降ると二又。北西へ向かう尾根筋を選択して初めは急斜面を下る。境沢ノ頭から15分、幅広の作業道に合流し、尾根を巻いて下りてゆく。

緩やかに下り、さしたる苦労もなく舗装された嵯峨塩深沢林道に出る。ところでウェブを見ると、大勢の人が悪戦苦闘している。急斜面の深い藪を下ったり、コンクリートの法面から舗道へ降りられなかったりしている。恐らく尾根を巻かずに、尾根の背にこだわって進んだのだろう。さて林道を下ってヘアピンカーブに差しかかると、南面が開けて大パノラマが広がる。御坂山塊の黒岳の背後には霞んだ富士山や南アルプスが見える。同じ景色は甲州高尾山を下るまで見ることになる。

嵯峨塩深沢林道と治山工事用の林道との合流点に出る。深沢峠。宮宕山へ上るには、この辺りから尾根の背へ上らなければならないが、取り付き点が分からない。林道を行きつ戻りつ探すが見つからない。よくよく合流点を見ると、人が斜面を擦ったような形跡がある。ままよと、小木を掴んで赤土の急斜面を強引に上る。山と高原の山地図には、登山路でない小道が薄茶色の線で描かれているが実際とは大いに異なる。恐らく嵯峨塩深沢林道が開通する前のルートなのだろう。

甲州高尾山、山頂直下を巻く菱山深沢林道 甲州高尾山剣ヶ峰、二等三角点峰


尾根上にはしっかりした踏み跡。ひたすら尾根を外さずに高みを目指す。鬱蒼としたミズナラの森に映えるヤマツツジ。それにしても纏わりつくアブには閉口する。五月蝿とはよく云ったものだ。茂みが揺れて突然現れた黒い動物。クマか。目を合わせるなというが、じっと見つめると目の周りに黒い隈がある。もしやタヌキさん。そいつはくるりと尻を見せてまた藪の中へ。うっかりするとそのまま通過しそうなコブに、樹木に括りつけられた木片に宮宕山の文字を見つける。宮宕山山頂。

国土地理院によると、宮宕山は大滝山、甲州高尾山の剣ヶ峰は宮宕山と記載されている。尾根の一本道を南下する。緑の天蓋がなくなり東斜面が開ける。この山域は度重なる山火事が発生したという。植林した樹木はまだ若く、その結果好展望が得られる。棚横手山は三角点峰、山梨100名山。南面の大富士見台からは、富士山や南アルプスを遠望し、甲州盆地を俯瞰する。この先は一般登山道となり、随所に勝沼町の道標が立ち、火気厳禁・たばこ厳禁の看板が見られる。

棚横手山直下を巻く嵯峨塩深沢林道を横断して甲州高尾山へ向かう。富士見台を通過、大滝不動尊分岐を通過。菱山深沢林道を山頂直下に巻いた甲州高尾山が見えてきた。甲州高尾山は三つの峰から成る。まず東峰を越え、最高点峰の主峰に登り、三角点峰の剣ヶ峰に出る。無線中継所を過ぎるとじぐざぐの急斜面に悩まされ、送電線鉄塔から尾根を離れる。遥か下方の勝沼を見てうんざりし、ザレた急坂に泣く。五所大神社から国道20号線に降りて大善寺。山旅の終わり。


快晴 単独行 歩行距離=85km 歩行時間=6時間10

JR中央線、甲斐大和駅745⇒(栄和交通バス)⇒805嵯峨塩橋
嵯峨塩橋805815三角コンパ登り口→915三角コンパ920930境沢ノ頭9351020深沢峠10301105宮宕山11151135棚横手山11451310甲州高尾山13201430送電線鉄塔14401515大善寺
大善寺1540⇒(甲州市民バス)⇒1550JR中央線、勝沼ぶどう郷駅