滝子山2 (たきこやま) 

252 2014/10/19(日) 滝子山 1,620




二週続けて来襲した台風も去ると、久々の晴天が続く。快晴の日曜日となれば猫も杓子も山登り。列車は満員、笹子駅前には仲間を待つ数組のハイカーが屯する。国道20号線、甲州街道を歩き出すと、笹子名物笹子餅と、銘酒笹一のたなびく旗が目を惹く。水路橋をデザインした大月市の道標に従って吉久保集落を通り抜けると、前方に滝子山の山塊が現れる。滝子山は南大菩薩連嶺の最南端の山。標高差1,000m余り、予想時間は上り4時間、下り3時間。タフな山だ。

桜公園に猿が居る。じっと僕の様子を窺い、尻を向けて茂みに消える。大鹿橋を渡ると、路肩に寂しょう苑と記された棒杭がある。ここが南稜の入口。薄暗い樹林の中に、樹木に埋もれた一軒屋が建っている。別荘、寂しょう苑。南から滝子山に向かって突き上げる尾根は、寂しょう尾根または南稜とも呼ばれ、上部の岩稜地帯で転落事故が繰り返されて死亡事故も起きている。あるガイドブックには、南稜を下るな、上り専用と記されている。そのためか、南稜を上る人は少ない。

南稜は標高1,150mあたりから岩尾根に変わる 滝子山山頂 富士山は三ツ峠山の後方、雲の中


杉と赤松の樹林の中、よく踏まれた山道を緩やかに上る。送電線の鉄塔を過ぎる。歩き始めから1時間、林道に出る。大月市の道標がある。滝子山を示す道標は林道の左手を指し、寂しょう尾根を示す道標は、滝子山と墨書された汚れた板きれと一緒に擁壁の上方を指す。標高800m。これから山頂まで3時間の予定。落葉が積もる尾根道を緩急繰り返して上る。木洩れ日を背中に受けて、己が影を踏んで上る緑のミズナラ林。尾根を吹き抜ける風が汗ばんだ身体に気持ちいい。

木の根がはびこるやせ尾根を行く。標高900m、最初の露岩を越える。標高1,200m、岩尾根となる。岩塊を巻ければよし、さもなくば岩にペイントされた赤い丸印を探し、そこから岩に取りつき、岩を越える。鎖場もある。この辺りはコイワカガミの群生地。5月には薄紅色の花が咲く。見上げれば、錦繍の滝子山が真上に、浜立山が左上に見える。色付いた樹木の小ピークを四つほど越える。やっと浜立尾根に上りつめる。浜立尾根とは滝子山山頂から西へ、浜立山まで延びる尾根。

滝子山から見る南大菩薩連嶺の山々 左から大谷ヶ丸、破摩射場丸、黒岳 右端は雁ヶ腹摺山


大月市の道標がある。上ってきた南稜は「滑落多発 危険 寂しょう尾根」と標されている。滝子山へ向かう途中、年配の3人の女性と1人の男性グループと擦れ違う。浜立山からズミ沢へ降るのだという。地図にも載らないルート。登頂、滝子山、標高1,620m。滝子山は大月市の秀麗富嶽12景の第4番山頂。南へ目を遣って富士山を探す。御坂の三ツ峠山や本社ヶ丸の奥に聳える筈の富士山が見えない。北には陽が当たる大菩薩連嶺の大谷ヶ丸、黒岳、あれは雁ヶ腹摺山。

山頂には20名ほどの登山客が休んでいる。日曜だけあって若い人が多い。さらに続々と登山客が上ってくる。腰を下す場所もなく、早々に初狩駅へ下山しよう。降って数分、二等三角点のある小ピークを越える。S社の山地図には、標高1,590mのこの三角点峰を滝子山の山頂としている。急斜面を下って桧平。男坂女坂分岐は男坂を下る。いつの間にか紅葉は消え、ミズナラ林を下る。藤沢降下点からは桧林を九十九折れに下る。沢を高巻き、沢を何度も渡り返す。遠い初狩の町。


晴れ 日帰り 単独行 歩行距離=125km 歩行時間=6時間5

JR笹子駅830900南稜入口→925林道を横切る9351145浜立尾根11551215滝子山12301235三角点の小ピーク→1305桧平→1335藤沢への降下点13401400水場のベンチ14051445林道に出る→1520JR初狩駅