一切経山 いっさいきょうやま 

250 2014/9/28(日) 一切経山 1,949m 日本100名山




酸ヶ平(すがだいら) 前大巓(まえだいてん)


立ち昇る噴煙が、バスの真正面に見えると浄土平は近い。その途端、バスは交通渋滞にはまって二進も三進もいかなくなる。樹林が途切れて覗く浄土平大駐車場は満車。なにせ紅葉シーズンに入った快晴の日曜日、紅葉を愛でようと、磐梯吾妻スカイラインを駆け上る押すなへすなのマイカーの群れ。誘導員が路線バスを優先してくれて、20分遅れで到着。僕は三度目の東吾妻。初回は雨にたたられて一切経山を敗退、前回は東吾妻山に登る。どうしても一切経山に登りたい。

ビジターセンターの右脇の、ガレた遊歩道を避けて、左の湿原を突っ切る木道を辿る。見上げれば、一切経山の中腹から吹き上げる白い噴煙。案内板、「浄土平湿原は、一切経山の火山活動によって噴出した火山灰が堆積し、それが風化して水を通しにくい層となり、地表に水が溜まってできたと考えられます。水生植物が蓄積した泥炭層で形成された尾瀬ヶ原とは、湿原の成り立ちが異なります。浄土平では、イワカガミ、ワタスゲ、モウセンゴケなどの湿原植物が観察できます」

酸ヶ平 鎌沼に突きだした蓬莱山 左奥は東吾妻山


一切経山を指す道標に従って、歩きにくい火山岩のガレ場を上る。森林限界を越え、紅葉した低木とクマザサ、ハイマツの間を縫って上る。傾斜した木道を歩くようになれば、そこはもう酸ヶ平の一角、前方には前大巓、後ろには東吾妻山。もう噴煙は枝尾根に隠れて見えない。俯瞰すれば山頂が共に爆裂火口の吾妻小富士と桶沼。火口に水が溜まってできたのが火口湖で、吾妻小富士は明治の初め頃まで火口底に水が溜まっていたという。やがて酸ヶ平避難小屋が見えてきた。

大勢のハイカーが屯する一切経山分岐。直進すれば鎌沼から姥ヶ原へ通ずるが右折する。トイレ前にハイカーが列をなす酸ヶ平避難小屋。樹林を抜けてガレ場を急登する。傾斜が緩んでザレ場を上る。見渡せば一幅の絵のような展望が展開する。鎌沼とシラビソの蓬莱山、草紅葉の湿原、赤と黄と緑が織りなす前大巓、大きな山容の東吾妻山。やっと山頂が見えてきた。ザレ場を上って一切経山。火山礫砂の山頂に駆け回る子ら。山頂標識、ケルン、「空気大感謝塔」、なんだこれ。

東小富士 一切経山山頂


山頂の北側に数人のハイカーが腰をおろしている。一切経山と家形山に囲まれた、これが五色沼。「水面標高1,750m、水深9mで爆裂火口に水が溜まってできた火口湖です。五色沼は、その色を太陽光の具合で刻々と微妙に変化させることから、「吾妻の瞳」「魔女の瞳」とも呼ばれ、往時は雨乞いを祈願する神の宿る沼として信仰されていた沼です。水中には大量の鉱物質(ケイ酸塩など)の微粒子が浮遊しており、太陽光の一部を反射・分散させて、美しい色になるのです」

吾妻山とは、福島県から山形県との県境にまたがる峰々の総称で、このまま縦走すれば、家形山から東大巓、中大巓、西吾妻山、西大巓へと続くが、一日では歩ききれず山中泊となる。さあ、下山のとき。福島へ降るバスは、楽勝の2時間余り後。前方に展開する風景を眺めながら山を降る。多くのハイカーに混じって、コンビニ袋を提げたおじさんや、手を繋いだ軽装のカップルが次々に上ってくる。人の多さに辟易して浄土平へ真っすぐに降る。バス待ちは、ようこそレストハウスへ。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=6km 歩行時間=2時間25

JR福島駅東口950⇒(福島交通バス)⇒1150浄土平
浄土平11501230酸ヶ平、一切経山分岐12:35→1310一切経山13201350酸ヶ平、一切経山分岐14001440浄土平
浄土平1540⇒(福島交通バス)⇒1650JR福島駅西口