甲武信ヶ岳 (こぶしがたけ) 

249 2014/9/3(水)、4(木) 甲武信ヶ岳2,475m→西破風山2,318m→東破風山2,180m→雁坂嶺2,289m 日本100名山




十賊(とくさ)山  破風(はふ)山  沓切沢(くっきりさわ)橋  久渡(くど)沢


甲武信ヶ岳。その名が示すように、甲斐(山梨県)、武蔵(埼玉県)、信濃(長野県)の県境の山。しかも富士川、荒川、千曲川の源流でもある。いちばんよく歩かれる登路は、交通の便がいい山梨県側の西沢渓谷入口から北へ、戸渡尾根を登るコース。更に、雁坂峠へ足を伸ばせば、距離が長いが縦走路歩きを満喫できる。長野県川上村の毛木平から東へ、千曲川源流遊歩道を遡るコースはさしたる難路もなく足に優しい。今日は千曲川源流遊歩道を遡り、雁坂峠から下山しよう。

JR小海線、信濃川上駅の改札を出ると予約したタクシーが待っている。同乗者は壮年の夫婦。風になびくコスモスの花、どこもかしこもレタス畑。専らインドネシア人やフィリピン人の季節労働者に頼っているという。毛木平の大駐車場に到着。既に10台ほどのマイカーが駐車。トイレ棟がある。ベンチがある。案内板の脇が甲武信ヶ岳への林道入口。見上げれば曇り空、怪しい雲行き。車止めゲートの脇をすり抜けて砂利道の林道に入る。静寂の森。聞こえるは西沢の流れのみ。

十文字峠分岐を通過する。林道は尽きて山道に変わる。千曲川源流遊歩道。苔蒸した岩を越え、丸木で編んだ梯子を上りまた下る。カラマツ林からダケカンバの林へ。激しい流れの先にナメ滝が現れる。一枚岩を静かに流れ落ちる水。ここでひと休み。流れは細くなる。ガスが漂う樹林に標柱の白い文字がぼうと浮き上がる。「千曲川信濃川水源地標」 白い砂礫の水溜りに湧き出る地下水。この水が千曲川となり新潟県で信濃川と名を変え、367kmを旅して日本海に注がれる。

甲武信ヶ岳山頂、ガスが漂い視界不良 白ザレの賽ノ河原、西破風山と東破風山 


大粒の雨が降ってきた。樹林を急登すると稜線に乗る。金峰から国師、甲武信、雲取へと続く奥秩父主脈縦走路。樹林を抜けてガレ場を上る。甲武信ヶ岳山頂。積まれたケルンの上に建つ「日本百名山甲武信岳」の山頂標識。傍らにベンチ。立ち込める濃いガスのため展望は一切ない。写真を撮りあう一組の夫婦。雨風に辟易してガレ場を降って退散する。甲武信小屋。宿泊者は10名。17時夕食を済まして、白髪頭3名のテーブルに加わり、尽きない四方山話に夜は更ける。

甲武信ヶ岳から雁坂峠までは、奥秩父主脈縦走路の核心部で最も登下降が大きいという。雁坂峠からはひたすら久渡沢を降って道の駅みとみへゴールしたい。歩行距離14kmの長丁場、標高差1,400mを降る。翌朝、450分朝食。懸念された空も晴れて516分、小屋前のテラスからご来光を見る。出発は540分。甲武信小屋に別れを告げ、十賊山の巻き道を辿る。まだ暗い樹林、木洩れ日が差しこむ濡れた道。シャクナゲのトンネルを抜けると泣きのガレ場を下る。

西破風山を登りながら見る木賊(とくさ)山、その右肩後方に甲武信ヶ岳、三宝山、武信白岩山


樹林が途切れて花崗岩砂のザレ場に大きな露岩が点在する斜面に出る。賽ノ河原。眼下には雲海が広がる。雲の上に頭を出す富士山、愛鷹山。前方に西破風山、東破風山。ザレ場に続く樹林を下りきって笹の茂る鞍部に軟着陸。こじんまりと避難小屋が建つ笹平。見上げれば大きな西破風山。ここまで標高差300m下りてきたが、これから山頂まで200m上る。重なり合う岩を縫って樹林の直登が始まる。南斜面から笹を撫でるようにガスが這い上がってくる。嫌な予兆がする。

振り返れば見晴しの登高。十賊山の肩から覗く甲武信ヶ岳。その右に十文字峠に続く三宝山、武信白岩山。鋭鋒の黒金山、国師ヶ岳。樹木に囲まれた西破風山には「破不山」との標柱が立ち、傍らに三角点がある。東破風山へ向かう稜線は岩稜の樹林。露岩を縫い、攀じ登って東破風山。陽が差す東破風山の山頂から急斜面を下りると、そこはガスが漂う白い世界。立ち枯れの樹林を、倒木の林を包み隠すガス。更に大粒の雨。上り返して雁坂嶺。山頂には三角点とベンチがある。

雨は止む。ガスに包まれた雁坂峠。疲労が溜まって倒れ込むように座り込む。初夏ならばいちめんのお花畑も今はただの笹原。これから標高差1,000mを4時間以内で降りなければ予定していたバスに間に合わない。重い腰を上げて笹の斜面からコメツガの樹林へ入る。足が前へ進まない。かつての秩父往還は緩やかな九十九折れの下り。久渡沢を渡ること二度三度。沓切沢からは舗装された林道。国道への降り口が分からない。予定したバスの時間が迫る。バスよ、待ってくれ。


2014/9/3(水)、4(木) 単独行 歩行距離=213km 歩行時間=12時間45

9/3
(水) 曇り 歩行距離=76km 歩行時間=4時間55

  JR小海線、信濃川上駅950⇒(タクシー)⇒1010毛木平
  毛木平10201215ナメ滝12251400水源地標14051435主脈縦走路14401505甲武信ヶ岳15101520甲武信小屋 (泊)

9/4(木) 晴れのち曇り、一時雨 歩行距離=137km 歩行時間=7時間50

  甲武信小屋540610賽ノ河原615650笹平避難小屋710800西破風山810850東破風山9001010雁坂嶺10251100雁坂峠11151225渡渉点12301350沓切沢橋14101500新地平
  新地平1513⇒(山梨市営バス)⇒1608JR中央線、山梨市駅