八幡平2はちまんたい 

247 2014/6/20(金)  茶臼岳 1,578→ 八幡平 1,613m




日本百名山には、山頂付近まで観光道路やケーブルカーが通じ、いともたやすく登れる山がある。八幡平はその最たるもののひとつだろう。山頂直下の見返峠には2本の山岳観光道路が通じる。東から西へ峠を跨ぐアスピーテライン、南から峠へ突き上げる樹海ライン。見返峠の大駐車場からコンクリート舗装された歩道を、ものの30分も上れば八幡平山頂からガマ沼、更に木道を辿れば八幡沼を周遊できる。軽装の観光客はここまで。源太森から先はハイカーの領域となる。

前日には予約が取れないからといって、5日も前に山行日を決めざるを得ないのは、どだい無理な話よ。5日前には2日続きの晴れとの天気予報が、前日には雨に変わる。今迄、八甲田には3回登って、うち2回が雨。東吾妻は2回のうち1回。八幡平に登ったのは10年前の秋口、雨具を持たずに冷たい雨にうたれた惨めな日を思い出す。今日はリベンジの八幡平山行。盛岡駅前の八幡平行きのバス停、10人ほど並んだ列の最後尾につく。見上げればなんだか妖しい空模様。

茶臼岳山頂 黒谷地湿原


アスピーテラインをバスは駆け上がる。アスピーテとは楯状火山のことだというがよく解らない。高度を上るほどにガスは濃くなる。新緑のダケカンバの美林を抜ければ茶臼口、茶臼岳の登山口。降りたのは僕ひとり。強風が吹きつける。霧は水滴となって衣服を濡らす。これは堪らんとレインウエアを取り出して登山口の窪地に駆け込む。背よりも高いネマガリダケは強風から守ってくれる。暫くは悪路を急登する。シラビソ混じりの樹林帯を抜けると残雪の斜面、慎重にトラバースする。

10年前には折しも改築中だった茶臼山荘。茶臼岳は縦走路を外れて山荘前から傾斜の緩い山道を上る。歩いて8分、三角点の先が大岩と低木で囲まれた山頂広場。茶臼岳は八幡平三大眺望地のひとつというものの、立ち込めるガスのため展望は一切ない。山荘に戻る。自然林から鬱蒼としたシラビソの樹林を緩やかに下る。ここかしこに残る雪。路傍に可憐なショウジョウバカマが咲いている。水浸しになった石の多い山道は木道に変わり、樹林が途切れて湿原が現れる。

黒谷地湿原。オオシラビソに囲まれた湿原は見渡すかぎり地塘が点在し水路が走る。もうじきニッコウキスゲやワタスゲなどの高山植物のお花畑に化すというが、今はミズバショウがひっそりと咲くのみ。湿原の外れに湿原を見渡す木造の展望台があるが、生憎の冷たい強風が吹きつける。長居は無用、緩やかにオオシラビソの樹林を上る。どの樹木も雪の重みで傾き、或いは変形している。上るほどに山道は雪道となり漂うガスに包まれる。安比岳分岐、ついで源太森を見送る。

八幡沼 陵雲荘、避難小屋


残雪の斜面をトラバースして下れば長い木道に乗る。八幡沼。東西600m、南北200m、最大水深22.4mは八幡平でいちばん大きな沼で、周回する遊歩道が設けられている。八幡平には1,000種の植物が自生し7月にはお花畑が見られるらしい。いちだんと濃くなったガス、大小の地塘の先は見えない。沼の畔に陵雲荘、避難小屋。大きな展望台がある。ぼうと霞んだガマ沼は雪で埋めつくされている。八幡沼もガマ沼も沼の中に複数の火口が連なってできた複合火口湖だという。

コンクリート製の歩道を上って八幡平山頂に出る。オオシラビソに囲まれた平坦な山頂、以前にあった高床式の展望台は取り壊されている。八幡平頂上と記された山頂標識をバックに記念撮影している2名の男性、今日はじめて出会った人達。八幡平とは坂上田村麻呂がその美しい景色に感動し、八幡大菩薩に感謝をこめて八幡平と名付けたとか。そろそろ山旅の終りの時。今夜の宿は藤七温泉、彩雲荘。吹きすさぶ風を受けて誰も居ない見返峠から樹氷ラインを足早に下る。


曇り、濃霧 日帰り 単独行 歩行距離=91km 歩行時間=3時間50

盛岡駅前942⇒(岩手県北バス)⇒1122茶臼口
茶臼口11301225茶臼岳12351320黒谷地湿原13301420源太森→1450八幡平15001525見返峠→1550藤七温泉、彩雲荘 (泊)