源次郎岳げんじろうだけ

239 2013/10/28(月) 源次郎岳 1,477m → 恩若ノ峰 982m




恩若ノ峰(おんじゃくのみね) 栖雲寺(せいうんじ) 蛤石(はまぐりいし)

物好きが歩く藪ルートと人は言う。嵯峨塩鉱泉から上り、源次郎岳から恩若ノ峰まで縦走し、塩山に下山する。昭文社の「山と高原地図」には難路を示す赤い点線で描かれているルート。注記にはなんと「道形は認められるがヤブうるさい」「源次郎岳から恩若ノ峰まで道標は殆どなく判断力を要す」とさ。大菩薩嶺には南へ延びる二つの尾根筋がある。東側の尾根は人気の高い小金沢連嶺から続く南大菩薩連嶺。一方、源次郎岳や恩若ノ峰は西側の日川尾根に連なる山である。

甲斐大和駅前のバス停には長蛇の列、凡そ80名。810発の小型バスに乗れず、30分も待たされて増車したバスに乗る。積み残された登山客は3台のタクシーに一人1,000円で相乗りする。昨日の日曜日には8台も増車したという。栖雲寺を過ぎる頃から色付き始めた山間をバスは駆け上がる。嵯峨塩鉱泉で降りたのは僕一人。残りの乗客はこのまま乗り続けて大菩薩嶺か小金沢連嶺へ登るようだ。ひっそりと佇む嵯峨塩鉱泉。源次郎岳登り口は道路を隔てた山側にある。

源次郎岳を目指して紅葉の尾根道を往く 樹木が伐採された源次郎岳山頂


道標、「源次郎岳入口」を見て石段を上る。階段が尽きると急斜面をジグザグに上る。濡れた落葉と煩わしい笹の下生え。おっとまた踏み跡を見失ったぞ。枝尾根に上る。はっきりした山道。展望はなくとも陽気な樹林。黄色に染まったミズナラ林、点在する紅葉、落葉し始めたカラマツ。深石林道を横切る。幹に括りつけられた貼り紙がある。「登山者が熊に襲われ負傷 日下部警察署」 その先が牛奥峠。傍らに「山神」と彫られた大石と真っぷたつに割れた岩がある。蛤石だとさ。

嵯峨塩鉱泉から源次郎岳まで、標高差は僅か200m。厚く積もった落葉はややもすると踏み跡を隠す。紅葉の樹林にミズナラの巨木。突然、静けさを破る鹿の鳴き声。やっと下日川峠への分岐を通過する。コブを幾つも越え最高点から少し下ったピークが源次郎岳。何だ、この山頂は。広い山頂広場には木株と輪切りの幹が雑然と転がる。西寄りには三角点と山梨100名山の標識が立つ。少しばかりの展望も得られる。あれは国師岳か甲武信岳か。すぐそこに大菩薩嶺も見える。

山名は源頼朝に追われた岩竹源次郎が頂上の枡岩で切腹したという伝説に由来するそうだ。腹拵えの後、どれ恩若ノ峰へ行くべえか。山頂の西端にある道標、「恩若ノ峰→」に従い西へ下る。さあ困った。左右に尾根が伸びるがどちらも急斜面。じっと目を凝らすと右尾根の下方にピンクのリボンテープと固定ロープがある。立木とロープの援けを借りて長い急坂を下る。滑るまい、転ぶまい。紅葉は標高1,000m以上。こぼれる落葉を蹴散らしてコブを越えヤセ尾根を行く長丁場。

恩若ノ峰へ向かう途中、源次郎岳を振り返る 下山の途中、塩山市街を一望する


キリガ尾根と北洞沢への分岐にはロープが張られ「この先作業道」の標示がある。坦々と自然林、桧林を抜ける。展望はなく道標は皆無。時々踏み跡を見失う。誤った枝尾根に踏み込んで引き返すこと数度。その度に頼りになるのは赤いリボンテープ。やがて大小のコブを南から北から巻くようになる。もしや恩若ノ峰も巻道で通過したのではないか、という杞憂は現実となる。標識「←恩若ノ峰」に出くわす。矢印は今来た方向を指している。戻って恩若ノ峰へ登る元気はもはやない。

山と渓谷社の案内書に「小さなコブをふたつ北から巻き、その先の小コブ三つは南を巻いて鞍部に出る。ひと上りで恩若の峰。右に巻く道があるので注意する」と知っても後の祭り。もう疲労困憊。右に直角に曲がればあとは塩山駅へ下るだけ。誰にも遭わなかった寂峰。煩わしいヤブもガレ場もなかった縦走路なのに、下山路はうんざりのガレ場と濃いヤブがある。背丈ほど伸びた草木を掻き分けて100m進む。桧林を大きく折り返して舗装道路に出れば果樹園の上。塩山駅は近い。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=105km 歩行時間=5時間40分

JR中央線、甲斐大和駅842⇒(栄和交通)⇒905嵯峨塩鉱泉
嵯峨塩鉱泉9101000牛奥峠→1045源次郎岳11051330恩若ノ峰を巻く→1440恩若ノ峰登り口→1510JR中央線、塩山駅