雨飾山 あまかざりやま 

238 2013/9/19(木) 雨飾山1,963m 日本100名山




南小谷(みなみおたり) 荒菅沢(あらすげさわ) 布団菱(ふとんびし) 頸城(くびき)


降れば豪雨、地には竜巻。天変地異が続いた夏も台風18号が列島を縦断すれば、やっと感じる秋の気配。あれから40日、捻挫した足を意識せずにやっと歩けるようになった。それでも痛んだ踵を庇って、右足から階段を降るのは一瞬の躊躇いがある。喉元過ぎればまた山が恋しい。雨飾山。信州北部と上越に跨る頸城山群にあって、妙高山地の西端に位置する山。日本100名山というよりも、その山名に惹かれて、ロマンを求める閑人がどっと押しかける騒がしい山だそうだ。

雨飾山への主なる登山道は三つあるが、小谷温泉道を往復する。小谷村は遠い。横浜からJRを乗り継いで6時間。やっと南小谷。最後は村営バスに揺られて1時間、雨飾高原に到着する。バス停から300m先が小谷温泉最奥の秘湯、雨飾荘。ブナに囲まれた気持ちいい露天風呂がある。泉質はNa、炭酸水素塩泉。効能は切傷、筋肉痛、神経痛、慢性消化器病、痔疾とか。すると何にでも効く温泉か。赤い夕日が山の端に沈むと満天の星空。やがて静かに夜が更けてゆく。

翌朝、歩けば1時間の距離を宿の車に送られて10分、キャンプ場の駐車場に着く。既に2台が駐車中。見上げればまだ空に星が瞬く。今日も快晴のようだ。風はなく、ひんやりとした高原の空気に身が引き締まる。登り口は休憩舎脇。そこには登山道案内図と山頂まで210分との標識。歩き出しは緩やかに100m下る。色とりどりに咲いた花を愛でながら板敷きの湿地を進む。道端の小川に目を凝らすと淀みに岩魚がいる。後ろから来た人が言う、「一匹1,000円で売っていたよ」

荒菅沢手前から見る布団菱の岩峰群 笹平に着くと雨飾山が姿を現す


足元に1/11の黄色い標識がある。山頂まで400m毎に設けられた道標だそうな。ベンチのあるぬかるんだ広場には2/11の道標。雨飾山頂まで180分、荒菅沢まで90分。胸衝く急登が始まる。展望のないブナの森、ガレ場を越えて、網を編んだように広がる木の根の階段を上る。4/11、ブナ平。山頂まで120分、荒菅沢まで30分。この辺りはブナの美林、幹周4mもの巨木もある。山腹を巻く笹の桟道を上りつめると今度は150mの下りになる。水音がだんだんと近づいてくる。

視界が開けて布団菱と呼ばれる岩塔群が迫る。下りになって荒菅沢、小谷温泉道の見所のひとつ。さほどの水量もなく飛び石伝いに沢を渡る。岩に腰掛けてしばしの休憩。さて登山道入口が見つからない。行きつ戻りつ登山道を探せば、背丈ほどもある叢に隠れている。樹林を上る辛い急登が始まる。ガレ場、積み重なった岩、一枚岩。7/11、上るにつれて樹高が低くなり布団菱が間近に見えてくる。8/11、森林限界を越えてタフな枝尾根を上る。3連の梯子、ロープ、また梯子。

雨飾山南峰、三角点、雨飾山大神を祀る石祠 金山と天狗原山、左奥は焼山と火打ガ岳


草原が広がる主尾根に出る。笹平。笹原の先に初めて雨飾山が姿を現す。笹の中にかなりの花が咲いている。この季節に黄色いミヤマアキノキリンソウ、白い線香花火のようなミヤマシシウド、紫色のオヤマリンドウ、トリカブト。笹平を分けて平坦な県境尾根を突っ切る。新潟県側の雨飾温泉への分岐を過ぎ、源頭から荒菅沢を見下ろす。山頂直下から最後の急登を上る。涸れることはないという小さな池を見る。紅葉の季節ならずとも、休日には大渋滞が起きて待たされるという。

雨飾山頂は北峰と南峰から成る双耳峰。長野県側の南峰のほうが僅かに高く、三角点と標柱のほか、雨飾山大神を祀る石祠がある。雨飾山は日本海を航行する船にとってのランドマーク。北峰には新潟県側に向かって四体の石仏が鎮座し、海の安全を守る雨飾山姫神を祀る石祠がある。山頂からの展望はすばらしい。妙高山地の焼山、火打山、戸隠裏山連峰。姫川を挟んで対峙する白馬岳を始めとする北アルプス、遠く槍ガ岳まで遠望する。北は海谷山塊、朧に霞む日本海。

紅葉はまだ早い雨飾山。台風の影響は皆無、倒木も沢の増水もない。続々とハイカーが上って来る。さあ下山のとき。復路は往路に気付かなかった景色が展開する。笹平の東端から露岩とガレ場の急下降が始まる。じぇ、じぇ、じぇ。恐怖の下り。上りはよいよい下りは辛い。幾人にも道を譲ってやっと荒菅沢。ブナ平を通過する頃には疲労困憊。平坦な山道でも足が前へ出ない。そろりそろりと登山口。雨飾荘まで車で送ってくれたご夫婦、ありがとう。どれ温泉に浸かって帰ろうか。


9/18(水) 快晴 単独行

 JR大糸線、南小谷駅1307⇒(小谷村営バス)⇒1348雨飾高原
 雨飾高原バス停13:55→14:00雨飾荘 (宿泊)

9/19(木) 快晴 単独行 歩行距離=7.8km 歩行時間=7時間30

 雨飾荘530⇒(旅館の配車)⇒540登山口
 登山口540→6:00ベンチのある広場→635ブナ平→715荒菅沢出合725850主稜線、笹平→925雨飾山9551155荒菅沢出合12051400登山口
 登山口1410⇒(マイカーに便乗)⇒1420雨飾荘
 雨飾荘14:55→15:00雨飾高原バス停
 雨飾高原1509⇒(小谷村営バス)⇒1550JR大糸線、南小谷駅