南天山 なんてんやま) 

225 2012/11/3(土) 南天山 1,483




「なんてぇ山?」と聞かれて「南天山」と咄嗟に答えたのが山名の由来とか。紅葉の便りを追うように降雪の報を聞く。秋深し。紅葉といえば、関東の行楽地でも見ごろか色付き始めらしい。紅葉を訪ねて南天山に登る。案内書によると、南天山は中津川の寂峰だという。言い換えれば訪れる人が殆どいない山のことさ。一方、北東僅か6kmに位置する両神山ならさぞかし大賑わいのことだろう。両神山は日本100名山のひとつ。日本100名山とかつての秘峰とはこうも違うものか。


文化の日。見上げれば曇り空。いつになったらこの渋滞を抜け出せるやら。笹子トンネル辺りから車の流れが良くなって、トンネルを抜ければ眩しい青い空。満杯の西沢渓谷駐車場脇を通過、雁坂トンネルを通り抜ける。紅葉が始まった中津峡、こまどり荘に着いたのはもう正午過ぎ。レストランもあり宿泊もできるこまどり荘。隣接した森林科学館の脇で遅い昼食を摂る。「出発時間が遅いので、南天山へは尾根コースを往復します。沢コースは通りません」とガイドさんが説明する。

鎌倉沢に懸かる法印ノ滝、落差20m 頂上直下の主稜線を上る


身支度を整えて、再びバスで鎌倉橋へ。平家の落人が隠れ住んでいたところ、源氏の追捕使に掴まり鎌倉へ送られた。それでこの地を鎌倉と呼ばれるようになったそうな。駐車スペースはマイカーが10台ほど。南天山登山口には「体験の森歩道」と「南天山32km」と標示された道標、登山届箱、それに熊出没注意の看板がある。自然林の中、北へ鎌倉沢沿いを遡る。陽が差すことのない谷間は薄暗い。日没は1650分頃。復路は夜道を歩くことにならなければいいが。


鎌倉沢は小滝が多い。岩を噛む激しい水音。舐めるように一枚岩を滑り下りる滑滝。山道は沢に下りる。流れを何度も渡り、また渡り返す。梯子を倒したような木橋。桟は丸木。おっと、滑ったらお終いよ。人が渡れば梯子橋は上下に揺れる。前の人が渡り終えるまで次の人は渡れない。体験の森歩道と銘打つだけあって登山道はよく補修されている。つぎつぎに現れる道標。寂峰の筈なのに大勢のハイカーが降りてくる。団体さん、姿を見せる前から賑やかな女性群、山ガール。


優美に水が落ちる2段の滝が現れる。法印ノ滝、落差20m。道標は方円の滝。カメラに納めようと薄暗い谷間に無駄なフラッシュが光る。光は滝まで届かないよ。小憩後、またゆっくりとツアーは進む。山道は山腹をへつり、沢を木橋で何度も渡る。二俣を通過する。水流は細くなり、いつの間にか沢音は消えている。流れは伏流水となっている。沢コースとの分岐点に出る。左岸の道は杉林へ直進するが、南天山と標示された道標は涸沢を渡る登山道だけを指す。二度目の小憩。

南天山頂から南西を見る 右端に雁坂嶺、中央奥に和名倉山


右岸尾根に取り付いて桧の斜面をじぐざぐに上る。面白味のない植林歩きに飽きた頃、黄葉したカラマツ林に入る。陽光を遮る桧の森から、一瞬にして陽を浴びて金色に輝く黄葉のカラマツ林に変わる。アセビの木が混じるようになると稜線は近い。沢コースが合流して紅葉のやせ尾根を上る。傾斜が増して岩場を這い上れば登頂、南天山。岩塊が積み重なった東端に山頂標識がある。狭い山頂、その先は切れ落ちた絶壁。群馬県境の岩峰群、奥秩父の重厚な主脈を展望する。


大きなパノラマは南に五郎山、甲武信岳、遠く和名倉山、北に赤岩、両神山等が広がる。下山は往路を戻る。ガイドさんが大声を張り上げる。「復路の途中で暗くなるかもしれません。ライトをすぐ取り出せるようにして下さい」 ライトを持参していない人は2人。列の先頭付近に並び直す。幸いにして薄暗いがライトを使わなくとも足元が見える。日没前に鎌倉橋に帰還する。暗闇にひっそりと佇む帰りのバスに乗り込んでほっと安堵する。さて、中央道が渋滞していなければいいが。


快晴 日帰り 毎日旅行会、山岳ツアー 歩行距離=64km 歩行時間=3時間

新宿駅西口730⇒(まいたび、ツアーバス)⇒1210こまどり荘12351250鎌倉橋
鎌倉橋12551315法印ノ滝13201335二俣→1345沢コース分岐13551445主稜線→1455南天山15101520尾根コース降下点→1550沢コース分岐16001615法印ノ滝16201640鎌倉橋
鎌倉橋1655⇒(まいたび、ツアーバス)⇒1705こまどり荘17152100新宿駅西口