鳥海山ちょうかいさん

222 2012/7/20(金)、21(土) 新山 2,236m → 七高山 2,229m 日本100名山




御浜(おばま)小屋、 七五三掛(しめかけ)、 大物忌(おおものいみ)神社


梅雨があけると猛暑が続く。こう暑くちゃ堪らねえと、いっときの涼を求めて鳥海山に登る。出羽富士とも秋田富士とも呼ばれる鳥海山は、日本海まで裾野を伸ばす独立峰。厳しい冬の気象のため残雪は夏まで残り、雪が解ければ高山植物の花畑が広がる。また、山頂に立てば東北の名峰を残らず枚挙できるという。鳥海山とて名山の例に洩れず、登り口まで観光道路が通じ、信仰の山は変じて観光の山になる。さて、鳥海山はとてつもなく遠い。鉾立に着いたのはもう昼過ぎ。


稲庭うどんで腹拵えを済ませて山旅を始める。舗装階段を上れば展望台。深い奈曽渓谷にかかる白糸ノ滝。遥か先の新山は白い雲の中。観光客はここでお引き取りを願う。傾斜が緩むと舗装階段は石畳に変わる。林相は矮小のダケカンバ、路傍にはチシマザサ。可憐な花が咲き、ウグイスの鳴き声を聞く。県境を越えると森林限界を越えて高山帯になる。小雪渓をトラバースする。雪解け水が流れる賽ノ河原、憩う数人の登山者。高山植物の咲く広い草原を上って鳥居をくぐる。


御浜小屋は神社と棟続き。ザックを降ろして靴を脱ぐ。収容50名、12食、弁当込みで¥8,500M旅行社の案内では頂上小屋泊は寝袋を持参すべしと云うが、今日の泊り客は10名だから毛布は何枚も使える。ニッコウキスゲが咲く草原に囲まれた御浜小屋は好展望の地。奈曽谷を挟んで稲倉岳、扇子森の先に新山、笙ガ岳へ続く残雪の尾根。眼下は鳥海湖、直径200mのカルデラ湖。日本海に沈む夕日、満天の星、煌く地上の夜景を眺めて眠りにつく。朝に昇る朝日を迎える。

カルデラ湖の鳥海湖、鍋森、月山は雲の中 千蛇谷の雪渓を、時には右岸の小道を遡る


山の朝は早い。快晴、無風、まだ霧のお出ましはない。露岩の扇子森を越え八丁坂を下る。鞍部が御田ガ原、上り返して御田代。御浜からこの先七五三掛まで見事な花畑が続く。今は山の陰、しかも早朝のためか花の目醒めが遅いようだ。復路には陽の当たる草原に一斉に花開く。黄色い花ならニッコウキスゲ、ミヤマキンポウゲ。紫系はヨツバシオガマ、チョウカイアザミ、ハクサンフウロ。白いカラマツソウ、シラネニンジン。小雪渓を越えると七五三掛に着く。ここでひと休み。


七五三掛は千蛇谷を見下ろす絶壁の上。この先、周回コースを歩く。千蛇谷雪渓から新山、七高山を登り、外輪山の稜線を下って七五三掛に戻る。立札、「100メーター上に分岐あり」 千蛇谷への降下点は二個所の梯子を降り外輪山の内壁をへつる。下りたところは千蛇谷雪渓の先端部。雪渓を横断して対岸の山道に入る。残雪の表面が黒ずんでいる。小屋番の話によると、自動車の排気ガスで汚染されたのだという。だから衣類に付いた汚れは水洗いでは落ちないらしい。

溶岩ドームの新山、大物忌神社と参籠所 外輪山から返り見る新山(左)、七高山(右)


雪渓を最後に突っ切って、高山植物の花咲く草原を上る。密生して咲くホソバイワベンケイ、薄紫のイワブクロ、固有種のチョウカイフスマ。最後のひと上り。上方に鳥居が見えてきた。大物忌神社のある頂上御室。御室の手前には新山への道標が立つ。新山の溶岩ドームはすさまじい大岩の重なり。こりゃあワイルドだぜぇ〜。ペンキで描かれた矢印に沿って岩を這い上がる。高みまで上ると、下方に「天切通シ岩」が現れる。渋々切り通しの底まで降りる。右上に話し声がする。


新山の山頂は狭い。居心地の悪い山頂を後にして、先に降りた人を追う。「胎内くぐり」という暗いトンネルを潜り抜けると、千蛇谷越しに外輪山の絶壁と七高山が圧倒するように迫る。さて七高山へのルートは何処だ。とりあえず雪渓を慎重に下りると大物忌神社の裏手に出る。あった、張られたロープ伝いに行けばいい。外輪山の稜線に上り着いたのは虫岩という黒い大岩の手前。赤い溶岩塊と砂礫の七高山に立つ。かなり大勢の人が居る。新山ドームには数人の姿が見える。


雲の上から頭を出す山々を同定する。月山、白神山地、岩木山、岩手山。外輪山の稜線歩きは意外に楽。コブを巻き、移り変わる景色を見ながら尾根道を歩く。荒れ地にも花が咲く。イワブクロ、ミヤマキンバイ、ハクサンシャクナゲ。伏拝岳からハイマツの生える文殊岳を下る頃には山裾からガスが忍び寄る。いつの間にか七五三掛から見る千蛇谷も新山もガスの中。草臥れて御浜小屋に辿り着く。快調に上った石畳も、復路は膝に衝撃がくる。まだか鉾立、そろりそろりと降りてゆく。


7/20(金) 晴 単独行 歩行距離=35km 歩行時間=1時間45

 JR酒田駅前1117⇒(鳥海ブルーライン快速バス)⇒1230鉾立
 鉾立13001415賽ノ河原→1445御浜神社、御浜小屋(泊)

7/21(土) 快晴のち濃霧 単独行 歩行距離=12km 歩行時間=7時間25

 御浜小屋515530御田ガ原→600七五三掛610730鳥海山大物忌神社735805新山810900七高山9101005伏拝岳→1015文殊岳→1050七五三掛10551145御浜小屋12001330鉾立
 鉾立1545⇒(鳥海ブルーライン快速バス)⇒1650JR酒田駅前