八甲田大岳はっこうだおおだけ

221 2012/6/25(月) 八甲田大岳 1,584m 日本100名山




酸ガ湯(すがゆ)温泉 仙人岱(せんにんたい) 毛無岱(けなしたい) 田茂萢岳(たもやちだけ)


青森駅からJRバス、みずうみ2号に乗り、木洩れ日の差す気持ちいいブナ林を走り抜け、酸ガ湯で降りる。もうここは海抜900mの高所。名湯、酸ガ湯温泉は、江戸期より農閑期には近隣からの湯治客が訪れる酸性硫黄泉。病気なら何でも治るというからスゲェ。ヒバ千人風呂は遍く世に知られ、混浴だってさ。3年前のこと、避難小屋まで辿り着いたものの雨とガスに苛まれ、登頂を諦めた八甲田大岳。今日はそのリベンジの山行、この酸ガ湯から周回して酸ガ湯に戻る予定。


トイレ脇の石段を上がって大駐車場の北端に出る。見上げれば緑の森の上に八甲田大岳を遠望する。登山口の案内板に導かれて鳥居を潜る。歩き始めは土留めの丸木階段。じきに岩ゴロからぬかるんだ山道に変わる。おまけに、伸びるにまかせたチシマザサを手で払い除けて上るうんざりの坂道。展望はなく、右方から激しい水音が聞こえる。立札がある。「火山性ガスの発生している場所があります 危険を避けるため、必ず登山道を通行しましょう 青森県観光企画課」


硫黄臭が漂うようになると樹林は終り、右下に地獄湯ノ沢が、その奥に南八甲田連峰の櫛ガ峰と横岳が姿を見せる。山腹から沢まで続く二つの雪渓を渡る。おっと、足を踏み外したらお終いよ。硫黄臭が強くなる。地獄湯ノ沢を木橋で渡り、露岩が堆積する左岸を遡る。ここにも立札、「噴気に注意 八甲田火山はまだ生きています この沢は地獄湯の沢といわれ、硫化ガスや炭酸ガスを噴出しています そのため岩は変質し崩れやすく、硫化ガスに強い植物だけが生えています」

仙人岱から八甲田大岳を目指す 八甲田大岳の山頂


地獄湯ノ沢の源頭に近づく。何度か沢を渡り低木帯を抜けると雪原が広がる。数十mほど先の赤旗を目指し、踏み跡を外して雪の感触を楽しむ。オオシラビソの森に入る。ハイマツやササを分けて木道を歩く。仙人岱。「以前この平坦地は湿原でしたが、踏み荒らされて消失、今は小岳寄りに僅かに残るだけ モリアオガエル、ヤマアオガエル、イモリなど八甲田山中に棲息している両生類の動物が多く見られます」 木道が分岐した先に仙人岱避難小屋がある。八甲田清水がある。


端正な小岳に向かう木道が北へ転じると、山腹に残雪を貼り付けた八甲田大岳が正面に現れる。この辺りは美しいところ。「アオモリトドマツ(=オオシラビソ) 下方には亜高山帯の代表的な樹種、アオモリトドマツの群林が見えます 向かいの硫黄岳は、右の山腹の木が山頂まで生育していますが、左側には生えていません これは左側の方は残雪が多いためです」 風に背を押されて長い雪渓を上る。ロープに沿って踏み跡を忠実に辿る。雪渓が終ると樹林の手前で行き止まり。


強引にチシマザサを掻き分けてみるがどうも変。やむなく引き返す。雪渓の少し下方に赤旗が立っている。よく見ると倒れたオオシラビソが山道を塞いでいる。森林限界を越えて上るガレ坂は、露岩を金網で包んだ防護柵に囲まれている。土砂流失防止と強風でも人が歩けるためだという。急登が終り鏡沼。「鏡沼は、爆裂火口に水が溜まったものです モリアオガエル、サンショウウオ、メススジゲンゴロウなどが生育しています 青森県では最も標高の高い両生類の産卵場です」

八甲田大岳を下る 左から赤倉岳と井戸岳
鞍部に八甲田大岳避難小屋が見える
上毛無岱から長い階段を下る途中に
下毛無岱を一望する


あとひと頑張りで八甲田大岳。木柵に囲まれた赤い砂地の山頂。石の祠、山位同定盤がある。強風を避けてケルンの陰に登山者が休んでいる。「複式火山の北八甲田火山は、第一次の活動でできた火口原の一部が田代平で、第二次では八甲田大岳、赤倉岳、高田大岳などの中央火口丘群が造られました」 山頂は360度の展望が得られる筈だが、南八甲田の山々を白い雲が覆いはじめ、山頂に噴火口跡がある高田大岳も雲に埋没する。北側には下陸奥湾、あれは龍飛崎。


ひと休みの後、井戸岳や赤倉岳を眺めながら避難小屋を目指して下る。初めは露岩帯、次は雪渓。上ってくる人は苦労しているようだが下りは簡単、急斜面を滑って降りればいい。最後は雪解け水の流れるガレ場に辟易する。八甲田大岳避難小屋の左脇に出る。そこには、前回、立ち込めたガスで見落とした大きな道標がある。強い日差しだが寒い。色とりどりのウィンドブレーカーを着た大勢の登山者が小屋前に屯している。さて下山。緩やかな下りも樹林に入るとまた悪路。


木道を歩くようになれば、もう上毛無岱湿原。期待していたお花畑はなく、ただの草原。広がる雪原の先には北八甲田の山。田茂萢岳、井戸岳、八甲田大岳。上毛無岱から長い階段を降る。眼下に下毛無岱が一望できる。「毛無岱湿原 八甲田山は非常に積雪が多く、融雪水が長い期間にわたって窪地に停滞することで湿地や沼となり、湿原植物が生育します」 木道が南に向かうとブナの森。岩ゴロとぬかるみの湯坂を下れば、眼下に酸ガ湯温泉が見える。旅の終りが見える。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=95km 歩行時間=5時間30

青森駅750⇒(JRバス東北)⇒900酸ヶ湯温泉
酸ヶ湯温泉9001015地獄湯ノ沢→1040仙人岱→1125八甲田大岳11351155大岳避難小屋12101240上毛無岱→1300下毛無岱→1455酸ヶ湯温泉
酸ヶ湯温泉1533⇒(JRバス東北)⇒1645新青森駅