ミツバ岳2みつばだけ) 

#215 2012/3/29(木) 屏風岩山 1,051m → 世附権現山 1,019m → ミツバ岳 834m




丹沢に咲く花といったら、ミツマタとシロヤシオ。この時期ならミツマタ。山は薄黄色に彩られ、仄かな香りが漂う。山地図にはルートが記載されていないにも拘わらず、今はつとに有名になった西丹沢のミツバ岳や屏風岩山がミツマタの群生地。今日は前回成し得なかったミツバ岳山頂からミツマタ越しに富士山を眺めたいし、権現山からミツバ岳への分岐点を確認することが山行の目的である。昨年は分岐を見落として、尾根筋の末端まで直進し、道なき急斜面を降ってしまった。


西丹沢自然教室行きのバスを大滝橋で降りたのは僕ひとり。道標に従い大滝沢沿いの林道を遡る。沢水はナメ滝を滑り落ちて白い岩を砕く。春の水音。大滝沢に流れ込む小沢に「森林管理道につき立入禁止」の立札がある。ここが屏風山東峰への登り口。崩れかけた細道をジグザグに上る。針葉樹林を抜けると東峰へ突き上げる稜線に乗る。鹿柵に沿って上ればミツマタの群生が行く手を遮る。振り向けば西丹沢の山がすぐそこにある。桧洞丸、戸沢ノ頭から大杉山に続く山並。

左端は桧洞丸、その右の鋭鋒は同角ノ頭、中央右の台地は戸沢ノ頭から大杉山


春を告げる花、ミツマタは三つに枝分かれした夫々の先端に、小さな黄色い花が身を寄せ合って咲く。中国語では「結香」と記すように上品な香りが仄かに漂う。ミツマタの樹皮は、その繊維が強靱なため、古くから和紙の原料として紙幣や証書、株券などに供される。ミズナラ林に入れば山の端越しに冠雪の富士山を望み、樹間から箒沢権現山が覗く。西丹沢には権現山という名の山が二つある。紛らわしいので地名を冠して北の山を箒沢権現山、南の山を世附権現山と呼ぶ。


東峰がどこか知らずに通り過ぎて針葉樹林に入る。傾斜が緩んで屏風岩山に登頂。樹木に囲まれた山頂にはぼろぼろの山頂標識が立つ。北は大滝峠を経て畦ヶ丸へ、南は二本杉峠を指す。先客は若い人。車が世附に置いてあるので、来た道を引き返すという。へえ、すげえ。小憩後、南へ稜線を緩やかに下る。僕が先発したのに若者は僕を追い越して瞬く間に姿が見えなくなる。ここにもミツマタの群生がある。針葉樹林に埋もれてひっそりと咲く。花包も小さくまだ白い花ばかり。


縦走路はガレ場もぬかるみも無く、歩き易い土の尾根道が下山し終わるまで続く。3月ともなれば踏み跡を隠す落葉も風に飛ばされるから、尾根道を外すことはない。前方に見上げるような高さの山。あれが世附権現山。崩壊地から見る西丹沢の山々。しかし二本杉峠の手前から世附権現山の間だけは足取り軽く歩くわけにはいかない。二本杉峠に近付くと緊張を強いられる急斜面がある。ロープに縋って降る長い急坂。足元は花崗岩砂が入り混じった土。ずるずると靴が滑る。

ミツマタの花 ミツバ岳山頂からミツマタ越しに富士山


小峰を巻いて崩れかかった桟道を通り過ぎると、昼なお暗い針葉樹林の二本杉峠に着く。峠から東へ下れば上ノ原へエスケープできる。ここで昼食。これから世附権現山へ標高差300mの辛い直登が始まる。小峰を越えると大崩壊地がある。眼下に中川の集落、桧洞丸、鋭鋒の同角ノ頭。二つ目のコブを越えると正午を知らせるチャイムが聞こえる。最後の頑張り、ブナ林を上って世附権現山。三等三角点と山頂標識はあるが道標はない。山頂にはかなりのハイカー達が食事中。


手っ取り早く下山するなら「この先踏跡不明、初心者の通行不向き」との看板が立つが、南東へ浅瀬入口に降ることができる。僕は南西へ富士山に向かって尾根を下る。ふと後方、左下を見ると大パーティが列をなして上ってくる。またミツバ岳への分岐を見過ごすところだった。山旅の最後はミツマタが満杯のミツバ岳。ミツマタはまだ七分咲き。それでも天候に恵まれ、富士山の写真も撮れて満足。標高差500mを下るジグザグの山道。樹間から見える青い湖面。あれがゴール。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=11km 歩行時間=5時間25

小田急線、新松田駅715⇒(富士急湘南バス)⇒8:22大滝橋
大滝橋830840登り口→910東峰枝稜線に乗る→1005屏風岩山、東峰→1015屏風岩山10201120二本杉峠11301220世附権現山12301310ミツバ岳13151400滝壺橋→1425浅瀬入口
浅瀬入口1459⇒(富士急湘南バス)⇒1523JR御殿場線、谷峨駅