鍋割山9 なべわりやま) 

212 2012/1/5(木) 鍋割山 1,273




丸萱(まるがや)尾根 櫟(くぬぎ)山 後沢(うしろざわ)乗越(のっこし) 寄(やどりき)


年が明けて鍋割山に登る。丹沢は僕にとって冬季限定の山。丸萱尾根を上り、後沢右岸尾根を下る。共にバリエーションルートを辿るリベンジの山行。丸萱尾根とは四十八瀬川の支流、本沢とミズヒ沢とを分け、鍋割山稜に突き上げる稜線のこと。昨冬、鍋割山稜からの下降点が見つからず下山を断念した丸萱尾根。恐らく踏み跡すらない急峻なヤブ尾根、上るに辛く、下るに難い尾根らしい。後沢右岸尾根は何度かトレイルを見失い遮二無二上った尾根。さてどうなることやら。


よく晴れた朝、大倉はことさらに寒い。バスから降りたハイカーは揃いも揃ってダウンジャケットを着て、ニットキャップを被り、手袋をはめている。皆大倉尾根へ向かい、鍋割山へは僕ひとり。杉林を通り抜けて西山林道に出る。四十八瀬川の左岸を遡る退屈な林道歩き。対岸の櫟山や栗ノ木洞を仰ぎ見て、廃屋の山岳訓練所を見下ろせば二俣はすぐそこ。頑丈な梯子橋の架かった勘七沢を渡り、車止めゲートをすり抜ける。西山林道が尽きると本沢、その先の流れがミズヒ沢。

ミズヒの大滝 丸萱尾根を上りつめると林床は草地となる


ミズヒ沢の左岸に微かな踏み跡がある。遡るほどに滝音が大きくなる。初めに小滝、その奥に落差20mもあろうかと思われる2段の大滝がある。背丈ほどの大岩が滝壺に近寄ることを阻む。さてこれから丸萱尾根を上る。地図では本沢の右岸辺りがやや緩やかな傾斜のようだが、ミズヒ沢を少し戻って丸萱尾根への取り付き点を探す。2個所ほど這い上がるがあえなく断念。露岩や木の枝もなく、靴がずるずると滑り落ちる急斜面。3回目は悪戦苦闘30分、枝尾根に到達する。


聞きしに勝る手強い丸萱尾根。踏み込む度に足元が崩れる砂混じりの急斜面、立木に縋って上り続ける。踏み跡がなくとも上りには困らない。尾根筋を外さずに高みを目指せばいい。ブナの樹林からアセビの群落を通り抜け、またブナ林。傾斜が緩んで926m峰、一旦下ってまた上り返す急斜面。崩落個所を通過。やがて林床が草地になると、踏み跡が忽然と現れる。ブナとウツギの樹林から鍋割山が見える。鍋割南稜の上から富士山が頭を出す。その途端、強風に襲われる。

鍋割山稜から見る鍋割山、富士山 鍋割南稜から見る小丸、丸萱尾根


草地を上りきった平坦地で風を避けてひと休み。ここは好展望の地、南に湘南の海、真鶴半島、箱根連山。遠く愛鷹連峰、富士山、御坂山塊。北に丹沢主稜の山々、桧洞丸、蛭ガ岳、不動ノ峰。丸萱尾根から続いた踏み跡は、小丸から鍋割山へ向かう鍋割山稜の下り坂に合流する。鍋割山稜は一般登山道、かなり多くのハイカーが行き交う。手入れが行き届いた半面歩き難い木段や丸木の階段、上り下りして鍋割山。見晴しの山頂なるも、強風にいたたまれずそそくさと退散する。


下山は後沢乗越に向かって下る。東に小丸から始まる丸萱尾根が見える。西に山頂の雲も消えた富士山、手前に丹沢の桧岳、雨山。標高1,000m地点に「火の用心」の標語が括りつけられた立木がある。この目印が後沢右岸尾根への降下点。前回の上りに見失ったトレイルは、上から見るとよく見えるではないか。じぐざぐ坂を下り、鹿柵を出入りし、踏み跡をひとつも外さずにボランティア林Aから水源の森登山口に降りる。寄発のバスはあと45分後。今なら間に合う、それ急げ。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=14km 歩行時間=7時間5

小田急線、渋沢駅北口716⇒(神奈川中央交通バス)⇒730大倉
大倉730905ミズヒ沢910920ミズヒの大滝930→<丸萱尾根>→1200(休憩)1225→<鍋割山稜>→1245鍋割山12501330後沢右岸尾根降下点→<後沢右岸尾根>→1445水源の森14551530
1540⇒(富士急湘南バス)⇒1605小田急線、新松田駅