根名草山ねなぐさやま)   

207 2011/10 /17(月) 根名草山 2,329




金精(こんせい)峠  武尊(ほたか)  温泉(ゆぜん)平

紅葉は山の上から降りてくる。秋色に染まるいろは坂、「標高1,000mから上が紅葉です」とはバスの運転手さんの話。中禅寺湖畔も紅葉真っ盛り。「赤く色付いている木は、サクラ、ドウダン、トウゴクミツバ...」と数え上げるタクシーの運転手さん。黄葉のカラマツ林を抜けて金精峠に到着する。トンネル入口に駐車スペースがある。乗り物から解放されて固まった身体をほぐす。見上げれば鈍色の空、吹く風は冷たい。ここが根名草山と奥白根山への登り口。丸木の急階段を上る。


奥日光でも最北端に、金精峠から奥鬼怒温泉郷へと連なる標高2,300m級の縦走路がある。尾根筋はシラビソやコメツガの原生林に覆われ、日光連山の例に洩れず好展望が得られるという。振り向けば、すぐそこに黄葉のカラマツ、光る湯ノ湖、大きな山容の男体山が見える。ガレ場を慎重に横切って上れば金精峠に着く。白い石造り、赤い屋根、中国風の社は金精神社。なんと男根がご神体だという。背後に金精山が傲然と聳える。この峠は奥白根山と根名草山との分岐点。

男体山、戦場ガ原、中禅寺湖


峠を右に折れて北へ向かう。シャクナゲが散見するコメツガ林を上る。林床は笹、道床は歩き易い砂礫まじりの土。緩やかな山道は次第にきつくなり急坂をジグザグに上る。樹林の間から青い湖面の菅沼が覗く。その奥はもしや武尊の山。高みへ上るにつれて景観は変わる。鋭鋒の金精山の背後から奥白根山が見えてくる。男体山の裾野には枯れ野の戦場ガ原、その先には中禅寺湖が望める。シラビソの樹林に入ると勾配は緩やかになる。右手には雄大な山群が展開する。


遥かに刈込湖に切込湖、山王帽子山から稜線を辿れば太郎山、山頂に突起のある大真名子山、そして男体山。温泉ガ岳への笹を分けた一筋の踏み跡をやり過ごす。樹林を抜けて温泉ガ岳を巻く。深い笹原、温泉平。ここで束の間、昼食休憩。シラビソやコメツガの樹林に入る。この辺りから立ち枯れの木が異様な光景を醸しだす。水場のある小沢を渡る。やっと新装なった念仏平避難小屋に着く。念仏平とはその昔、猟師が深い笹原に方向が判らず念仏を唱えて歩いたという。

金精峠、金精神社、後ろは金精山 根名草山山頂


行く手を阻む倒木が実に多い。跨いで越えるか潜ればいい。ザックを先に潜らせ、後から這って通り抜けた厄介な倒木もある。緩やかに稜線をアップダウンして進む。若者と擦れ違う。この人は金精山峠から僕より先に登った人、この山で出会ったただ一人の人。後方に奥白根山が、右手に太郎山の稜線から女峰山が姿を現す。左下には立ち枯れの樹間から丸沼が見える。根名草山に取りつく。笹を分けて登った根名草山。三等三角点の山。見下ろせば紅葉の尾根や谷が広がる。


標高差900mを下る長丁場が始まる。大嵐山を前方に見ながら急下降、上り返して大嵐山を巻く。途中に3個所の岩塊で埋めつくされた崩壊地を横切る。尾根歩きから長い樹林を下る。立ち枯れのシラビソ、幼木のアスナロ、シャクナゲの群生。手白沢温泉分岐を通過。ぬかるみにご用心。山は夕暮れ、次第に樹林が暗くなる。困った、踏み跡がよく見えない。黒い地面にぼおっと浮かび上がる白い落葉。渓流の水音が聞こえる。樹間から赤い屋根を垣間見る。嬉しい、日光沢温泉だ。


曇のち晴 日帰り 単独行 歩行距離=8km 歩行時間=5時間50

JR日光駅前836⇒(東武バス)⇒924中禅寺温泉930⇒(タクシー)⇒955金精トンネル
金精トンネル登山口10001030金精峠→1145温泉平→1200(昼食休憩)12201235念仏平避難小屋12401335根名草山13501525手白沢温泉分岐→1630日光沢温泉 (宿泊)