岩手山いわてさん)    

205 2011/9/9(金) 岩手山 2,038 日本100名山




桶の縁(こがのふち)、御神坂(おみさか)、草鞋脱場(わらじぬぎば)


暑さに耐えた節電の夏。夏の終りに岩手山に登る。朝靄を通り抜けた先が<馬返し> 車もここまで。山の朝は早い。駐車場には既に数台のマイカーが駐車し、50名ほどの自衛隊員が右往左往している。小道を進めばキャンプ場、休憩舎やトイレ棟、<鬼又清水>と名付けられた豊富な湧水の水場がある。見上げれば遥かに岩手山が見える。広場の右手に看板が乱立する。ここが柳沢コースの登山口。山頂まで標高差1,400m、路程5kmを予定では4時間半かけて登る。


ミズナラ林に入ると<改め所>の標示板がある。柳沢コースは古くから信仰登山の参詣路。かつて神官が服装を改めた所だそうな。この登山道には、現れる度に元気づけられる合目表示の標柱がある。登路は05合目でふたつに分かれ、1合目で再び合流する。左を選ぶと片側が谷間へ落ち込む<桶の縁>に沿って上る。歩き始めなのにもう足が疲れてきた。1合目であえなくダウン、ベンチに腰を下して小憩。そこに、あの自衛隊ご一行様が到着、号令一下休憩し始めた。

七合目に上り着くと山頂へ続くお鉢が姿を現す 岩手山の山頂、薬師岳


一旦樹林から抜け出して火山砂礫のザレ道を上る。25合目は新道と旧道の分かれ目。ガイドブックには、悪天候でなければ見晴しのいい旧道を選べとある。別の本には足場の悪い砂礫と露岩の旧道を避けて樹林の新道を上れという。僕は旧道を上る。登路は岩に白ペンキで描かれたマーカーを辿ればいい。旧道はきつい上り。岩また岩を越える悪路。タフな露岩に耐えかねて4050分ごとに3合目、5合目、6合目でひと休み。それでも往路は旧道、復路は新道がお勧め。


僕を追ってきた自衛隊員も休憩し始めたのには驚いた。そう云えば僕と同じ場所に同じ回数だけ休憩をとっている。7合目<鉾立> 新道と旧道との合流点。岩手山山頂へ続く<お鉢>が姿を現す。斜度が緩み、初夏ならば高山植物が咲き誇るという草原を縫って8合目。130人も収容できる避難小屋は3階建、隣にトイレ棟がある。管理人が居るが素泊りのみの小屋。小屋の前には数人が憩うベンチのほか、<お成り清水>という水場がある。冷たい水に喉を潤し生気が蘇る。


<不動平>は気持ちのいい草原。十字路に出る。西へ直進すれば網張温泉へ。南進すれば<鬼ガ城>の稜線を越え<御神坂駐車場>へ下る。さて北へ。お鉢へ上る中間点で登路はふたつに分かれる。Y字分岐。山頂に近い左方を上るが、これは大失敗。踏み込めば深々とした砂礫に靴が沈み、ずるずると滑る。見れば誰しも右方の斜面を上り下りしている。突然、お鉢から下ってくる赤トンボの大群に遭遇する。僕の身体を掠めて飛び去るが僕にぶつかるトンボはいない。

お鉢と呼ばれる中央火口丘、三十三観音を見ながら火山砂礫を踏んで右端の薬師岳へ


岩手山は東西ふたつの火山体が合体した火山。立入り規制は解かれたが注意個所がある。西の火山体は屏風尾根と鬼ガ城という外輪山に囲まれて草原や湖沼がある。東の火山体は<お鉢>と呼ばれる中央火口丘に最高点の薬師岳が聳えている。その内側には<お室>という火口と妙高岳を見る。三十三観音を見ながら<お鉢>を13ほど巡って薬師岳に登頂。山頂標識、三角点のほか石祠の前に石仏がある。いつの間にか天候は急変、ガスと冷風が吹き上げてきた。


秋田駒や八甲田山、鳥海山も展望能ず。不動平へ降った頃には青空が戻る。不動平避難小屋前から鬼ガ城の稜線に上ると南一面にハイマツ帯が広がる。ここが御神坂コースの下降点。標高差1,200m余りをいっきに下る。岩手山とは岩の山。岩の悪路に泣く。溶岩塊の<笠締>を通過、露岩を伝い降り、ロープに縋って崩壊地を下る。ダケカンバの樹林からブナ林、カラマツ林へ。斜度が緩んで<草履脱場> もう疲労困憊に達し、足が前に進まない。遠い<御神坂駐車場>。


晴 盛岡に前泊、日帰り 単独行 歩行距離=11.5km 歩行時間=8時間

JR盛岡駅前530⇒(タクシー)⇒5:50馬返し
馬返し6:006:40一合目6:507:35三合目7:458:30五合目8:409:15六合目9:2510:00八合目避難小屋10:0510:10不動平→11:05薬師岳11:2511:55不動平避難小屋12:0012:05鬼ガ城分岐→13:15笠締→14:20草鞋脱場14:2515:15御神坂駐車場
御神坂駐車場前15:26⇒(岩手県交通)⇒16:10JR盛岡駅前