南大菩薩みなみだいぼさつ縦走

197 2010/12/5(日) 大蔵高丸 1,781m → 破摩射場丸 1,752m → 大谷ヶ丸 1,644




雁ヶ腹摺(がんがはらすり)山、 破摩射場(はまいば)丸、 米背負峠(こめしょい)峠、 大谷ヶ(おおやが)丸


師走の嵐が荒れ狂った2日後、冬枯れの南大菩薩を登る。歩き始めは湯ノ沢峠登山口から。ここは5月に小金沢連嶺を縦走し終わって辿りついたところ。好天なるも頗るつきの寒さ。耐えられずに手袋を嵌め、バンダナで耳を覆う。凍てついた柳木場沢、霜柱を崩しながら右岸の林道を遡る。堰堤を越すと林道は山道に代わる。朽ちた木橋を渡り、時には飛び石伝いに沢を渡り返す。沢の源頭に近づく。山道は沢から離れ、笹藪を分けて上ると湯ノ沢峠避難小屋の前に飛び出す。


大菩薩嶺から南へ伸びる稜線のうち、湯ノ沢峠を境として北半分を小金沢連嶺、南を南大菩薩縦走路と呼ぶ。オオシラビソなどの黒樹の小金沢連嶺に比し、南大菩薩の標高はやや低く、草原や広葉樹林が多い。峠の十字路を右折して縦走路に乗る。ロープで規制された湯ノ沢峠は花で知られた高原。春から秋にかけては百花繚乱のお花畑、今は枯れススキがたなびく草原が広がる。澄み切った大気は遠望がきく。大草原は抜群の見晴台、ハイカーが足を止めて展望に見入る。


行く手はこんもりと大蔵高丸、振り返れば白ガレの白谷丸、雁ヶ腹摺山。右手に八ヶ岳の鋭鋒、雪に覆われた南アルプスの長い壁。左に奥多摩、道志の山々。縦走路は足に優しい落葉と土。だがご用心、霜解けの道はぬかるみの道。滑って転べば泥まみれ。この先破魔射場丸を降るまで泥道に煩わされることになる。緩やかに山腹を巻きながら大蔵高丸。開放的な露岩の山頂は富士山の展望台。大蔵高丸は秀麗富岳12景のひとつ。一段下がった南側の小広場でひと休み。

湯ノ沢峠 遠く南アルプスの連峰、悪沢岳、赤石岳、甲斐駒


大蔵高丸の下りは悩ましい。富士山に向かって泥んこ坂を下る。ロープで規制された草原の縦走路はなだらかな円頂へ続く。破魔射場丸。灌木に囲まれた展望のない山頂。おや、緑の道標と白い道標がある。緑は旧大和村製、白は大月市製。そう云えば南大菩薩縦走路は甲州市大和と大月市の市境尾根。この山も秀麗富岳12景のひとつ。少し下ったところに露岩と砂礫のビューポイントがある。富士山の前景がまたいい。双耳峰の大谷ガ丸、重なりあう山襞の姿が面白い。


破魔射場丸を越すと一路下りの縦走路となる。笹藪を分けてススキ越しに移り行く風景を楽しむ。また泥んこ坂、掴むものがなにひとつない急斜面。すっかり落葉した樹林帯に入るとぬかるみにもう悩まされることはない。厚く積もった落葉を蹴散らして、いくつかのコブを越える。天下石を過ぎてやっと米背負のタルという峠。タルとは鞍部、コルのこと。見上げる大谷ヶ丸の北斜面。踏み跡が失せた標高差100mを遮二無二上り返して大谷ヶ丸。カラマツに囲まれた静かな山頂。

大蔵高丸山頂 秀麗富岳十二景のひとつ 破魔射場丸から南アルプスの遠望


南大菩薩縦走路は大谷ヶ丸でふたつに分かれる。南の稜線は滝子山へ、南西は大鹿山、笹子峠を経て御坂山塊へ繋がる。曲沢峠への道標に従ってまず急坂を下る。実に気持ちいいミズナラ林やカラマツ林。踏み跡を埋めるほど積もった落葉はややもするとトレイルを失わせる。突然、幅広の防火帯に出くわす。南へ伸びる防火線は、幅10mほどカラマツ林が伐採され草が刈り込まれている。その先に逆光の富士山が見える。何ら迷うことなく左に折れて防火帯を降り始める。


後ほど調べると、この防火帯を下がるなと記されている。初めは緩やかな下りも次第に斜度を増す。気付けば人の歩いた痕跡がない。下りの道迷いは危険だが、防火帯はどこまで伸びているか確かめたい。一旦鞍部へ降りて、取り付いた急斜面を這い上がり、また急坂を下る。少し不安を覚える頃、防火帯の右端にリボンマーカーを発見、左端には二つのマーカー。その先に樹林に入るトレイルがある。踏み跡を辿れば沢音が聞こえ、やがてズミ沢沿いの登山道にぶつかる。


予想したとおり笹子から滝子山への登山道。あとは道標どおりに歩けばいい。笹子駅への分岐をやり過ごして曲沢峠へ向かう。登山道はズミ沢を離れて緩やかな上りになる。この辺りは気持ちがいい山道。曲沢峠で景徳院への沢コースをやり過ごし、大鹿山の基部で尾根コースを下山する。うんざりするほど長く単調な尾根道。景徳院とは武田勝頼と家臣の菩提を弔う寺院。もう山の端に陽は沈み、暮れなずむ古戦場。山門を辞して日川渓谷沿いの舗道を甲斐大和駅へ向かう。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=15km 歩行時間=5時間40分

JR甲斐大和駅855⇒(タクシー)⇒915湯ノ沢峠登山口
湯ノ沢峠登山口920→10:00湯ノ沢峠10:05→10:35大蔵高丸10:50→11:15破摩射場丸→12:10米背負のタル→12:25大谷ヶ丸12:35→13:05防火帯を下る13:30→13:50曲沢峠13:55→15:00景徳院15:05→15:40JR甲斐大和駅