蓼科山たてしなやま)  

194 2010/10/11(月、祝) 蓼科山 2,530日本100名山




馬には乗ってみよ、人には添ってみよ。山には登ってみよ。茅野市街から北に目を惹く二つの山がある。えらが張った北横岳、イケメンの蓼科山。諏訪富士とも呼ばれるこの山はどこから見ても端正な姿とは裏腹に、登って吃驚、全山岩が積み重なった山。上るに辛く下るに怖い。蓼科山は八ヶ岳火山列の最北端に位置するが、ヤマ屋は八ヶ岳連峰に容れずに独立峰とする。四方にある登山路のうち、最短時間で山頂に辿りつける北側の蓼科牧場から上る。下山は天祥寺原へ。


蓼科山を日帰り登山するには、この連休だけ運行する蓼科ラウンドバスに乗る。季節バスは寄り道がお好き。蓼科牧場に着いたのは11時過ぎ。空高く澄みわたり微風、絶好の行楽日和。色づいた樹林の上に孤高の峰が聳える。ゴンドラリフトはカラマツに囲まれたゲレンデをひと跨ぎ。眼下の景色がいい。陽だまりに膝をついて休む牛の群れ、駆け回る子供達、点在する別荘地。女神湖、白樺湖、霧ヶ峰。終点は御泉水自然園、登山口。山頂を見上げながら幸せの鐘を撞く。

蓼科山登山口から始まるカラマツ林の美林 蓼科山山頂 南西にある展望盤


歩き始めは気持ちのいいカラマツ林。舗装道路を二度横切ると蓼科神社と書かれた扁額を掲げた鳥居がある。一ノ鳥居、7合目。登山届箱がある。既に満車の駐車場。ここからが山道。カラマツ林を緩やかに上り、やがてガレ場の直登に転じる。馬返し。樹林もシラビソの黒木に変わる。浮き石は踏むな、転がすな。汗にまみれてザンゲ坂。道標が現れて天狗の露地を告げる。天狗の露地は岩が重なる見晴台。美ヶ原、ひと際高く王ヶ頭が見える。ちょっと遅めの昼飯休憩としよう。


かなり大勢の登山客が降りてくる。さすが好天の連休、子供連れ、幼児を背負った父親、ペットボトルだけ持った4人組、遅れる亭主を尻目にさっさと下る奥さん。上るにつれて道は荒れる。ダケカンバが増えてくると聞こえる大勢の人声。途端に歩みが早まる。やっと将軍平。蓼科山荘前のベンチでひと休み。ここは登山路が交わる十字路。蓼科牧場のほか、駐車場のある大河原峠、下山を予定している天祥寺原の各コース。さて、重いザックをデポして身軽に山頂へ上りませんか。


将軍平から山頂まで樹林の露岩を上る。初めは濡れた岩また岩の急斜面。途中に二連の鎖場。降る人の多さに遅々として上れない。森林限界を越える頃、気付けばロープの規制を越えた岩を上っている。岩陰からぬっと山小屋が現れた。蓼科山頂ヒュッテ。広い火口に岩塊が折り重なった山頂。東寄りに蓼科山頂上と書かれたポール、入れ替わり記念写真を撮る人達。南西に方位盤、その台座に群がる人達。山頂は大展望が広がる。南、中央、北アルプスの連なり、雲の八ヶ岳。

八ヶ岳 北横岳天祥寺原から望む


北横岳の山容に感嘆し、前掛山の縞枯れ現象に魅入る。蓼科山の降りに御用心。上りは素早いものの下りに戸惑う子供達。さて、将軍平から天祥寺原へ標高差400mをいっきに降る。ここからは独り旅。視界のないシラビソの樹林を抜け、北横岳を真正面に見ながら涸沢を下る。泣きの岩ゴロ急斜面。足元を確かめて降るこの不甲斐なさ。下りの半ばで涸沢はロープで塞がれ右岸の樹林に誘導される。やがて樹林から涸沢へ、また樹林の中へ。林床が苔から笹に突然変わる。


アルピニストの野口健さんは「山登りの喜びは何?」と訊かれ「無事に帰ること」と答えた。まさに然り。笹を分ける山道は平坦となり土を踏むようになる。無事に天祥寺原。シラビソが点在する草原。滝ノ湯川に沿った山道がまた悪路。一難去ってまた一難。ぬかるみ、濡れたガレ場、行く手を隠す肩の高さまで伸びた笹。足元が見えぬまま水たまりに踝まで浸かってしまう。秋の日は釣瓶落とし、もう日が暮れる。想定外の遅れに焦る。最後の急斜面を降るとビーナスラインが見えてきた。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=8km 歩行時間=4時間35

JR茅野駅945⇒(蓼科高原ラウンドバス)⇒1105蓼科牧場1110⇒(白樺高原、ゴンドラリフト)⇒1119御泉水自然園
御泉水自然園11201135七合目、一ノ鳥居→1215天狗の露地12301255将軍平13001330蓼科山13451415将軍平14251530天祥寺原→1640竜源橋
竜源橋1653⇒(蓼科高原ラウンドバス)⇒1825JR茅野駅