鍋割山4なべわりやま)    

185 2009/11/8(日) 鍋割山 1,273m → 小丸 1,386




秋も深まれば、思い起こすはユーシン渓谷の紅葉。ところが、青崩隧道に崩落の兆しがあるため、玄倉林道が完全通行止めになったのは3年前。もう玄倉から歩き出すわけにはいかない。寄沢を遡って雨山峠を越えれば、青崩隧道より遥かに奥の玄倉林道に出られる。だが山道は荒れ、崩壊地点があるという。背に腹は代えられない。玄倉林道から先はオカラ(オガラ)沢を遡上すればいい。熊木沢出合の先に玄倉川に流れ込む沢。エアリアに記載はないが鍋割北稜への登り口。


山行計画は21kmを9時間で歩く。いつもの倍の距離、倍の時間。目玉はオカラ沢の右岸尾根。気がかりは二つ。道迷しないで正確に登れるか、それに日没前に鍋割山を下山できるか。想定外は下り坂にかかると右の膝裏が痛みだしたす。下山はままならず、訓練所(小丸)尾根を予定時間の倍もかけて下る。沈む夕日は山の端に隠れ、夜の帳が降りてくる。登り終えれば、オカラ沢をからんだ素晴らしいブナの美林を登れたし、翌日には足の痛みは消え、いつもの筋肉痛もない。


寒い朝、宇津茂から舗道を北へ向かう。山陰で朝日が当たらない。気温は7度。赤い寄大橋に着く。それでも汗ばんでウインドドレーカーを脱ぐ。駐車する数台のマイカー。ゲート脇を通って閉鎖されたキャンプ場跡を抜ける。車道の終わりが登山道入り口、寄ユーシン線の始まり。雨山峠まで41km。木段を上って杉林に入り、幾つもの堰堤を高巻いて遡上する。道なりに寄沢に下りて流れを渡り、また渡り返す。適度に道標が配され、リボンマーカーまであるから迷うことはない。

雨山沢 玄倉川


鹿のひと鳴きが谷間に響く。寄沢の紅葉は今が旬。対岸は見事な錦繍の斜面。花崗岩がぼろぼろと砂粒となって崩れる鎖場を上る。山腹を巻く杉林に入る。こんなところにテーブルベンチ。この前に見落とした寄コシバ沢を横切る。その源頭は鍋割峠、鍋割山への近道。崩れやすい山腹に架かる鉄パイプで組まれた橋を渡る。涸沢を歩いて水無しゴルジェを通過。この辺りは深山の趣があるところ。最後に2連の梯子を上り桟道を歩けば上方にテーブルベンチが見える。雨山峠。


静かに忍び寄る霧。小田急線から見えた冠雪の富士山は見るべくもない。雨山峠は峠の十字路、左の尾根を上ると雨山へ、右は鍋割山へ。共に今迄に歩いたことのある尾根。今日は峠を越えて雨山橋まで12kmを降る。山腹を巻く濡れた落葉の山道をよたよたと下る。水場を過ぎると雨山沢の右岸には隘路が続く。緊張、また緊張。僅か靴幅しかない崩れた細い道、転げ落ちた鉄パイプ橋、横に張られた鉄鎖。アルミ敷きの桟道を歩くようになるともう危険はない。雨山橋は近い。


うす暗い谷間から玄倉林道に出るとほっとする。青崩隧道通行止めの立て看板がある。オカラ沢出合までは24kmの林道を歩く。玄倉川を彩る紅葉。広い河川敷を埋める真っ白い岩。休業中のユーシンロッジ分岐を過ぎて、エメラルドグリーンの水を湛える熊木ダムを通過する。熊木沢ノ出合。どこから舞い込んだのか広い河原に宴たけなわの数人。おや、対岸へ渡るコンクリート橋の橋桁が落ちている。熊木沢の先に聳える蛭ヶ岳、箒杉沢の先には竜ヶ馬場や丹沢山を見る。

オカラ沢右岸尾根 鍋割山荘


オカラ沢の出合。林道から眺めると、手前の堰堤にもその奥の堰堤にも<なべわり>と赤ペンキで大書されたドラム缶が据えられている。逸る気持ちを抑えて小憩、2回目の軽食を摂る。右岸の草地から回り込んで涸沢に立つと沢は二俣に分かれる。陽のあたる右沢、日陰の左沢。右の涸沢を鹿が駆け抜けて姿を消す。登り易いと云われる左沢を選ぶ。落葉に踏み跡は消されているが、赤ペンキや青いリボンを頼りに3番目の堰堤を左岸から巻き、次の堰堤を中央から越す。


右岸の杉林に青いリボンを見つけて急斜面を這い上がる。オカラ沢右岸尾根の背に乗れば鍋割り山に辿りつける筈。急な稜線をひたすら上ると足に疲労を覚えてくる。しばし立木に凭れて紅葉のブナ林を眺め、カサコソと枯葉が舞い落ちる音を聞く。上るにつれて、紅葉の賑わいから落葉した冬の山に変わる。鞍部から上り返すと風に乗って話声が聞こえる。雨山峠からの一般道に合流する。今登ってきた尾根を指す立札がある。<ユーシン方面踏跡不明個所あり、厳重注意>


霧に包まれた鍋割山。山頂に溢れる人。山荘名物、鍋焼きうどんを食べる人、老いも若きも外人も。切り株の椅子にへたり込む。弱った、右膝の裏が痛い。右足を曲げると激痛が走る。恐怖の下山は小丸尾根。むずかる足をおだてて下りるほかはない。やっと降りた二俣、ここからは長い林道。平地なら足は痛まない。1600夕日は山の端に隠れ夕闇が迫る。1640日没は避けては通れない樹林の中、それでも足元は見える。やっと到着、暮れなずむ大倉、バス待ちの列に並ぶ。


晴ときどき曇り 日帰り 単独行 歩行距離=21km 歩行時間=9時間

小田急線、新松田駅653⇒(富士急湘南バス)⇒715
寄(やどろぎ)715740寄大橋745800車道終点→935雨山峠9451020雨山橋→1035ユーシン→1115オカラ沢出合11251250鍋割山13001335小丸→1545二俣15501655大倉
大倉1708⇒(神奈中バス)⇒1723小田急線、渋沢駅