岩木山いわきさん)     

180 2009/9/7(月) 岩木山 1,625m 日本100名山




今の季節、たわわに実ったリンゴ畑の向こうに端正な山が見える。そんな風景写真を見たことはありませんか。それが岩木山、津軽富士。津軽の人々の心の拠り所として山頂には奥宮が祀られ、山麓には社殿を構える。その岩木山神社が登り口。なんと標高差1,400mを延々4時間半かけて上る。これはきつい。楽々コースだってある。8合目までシャトルバスに乗り、ついでリフトに乗り継げば、たったの1時間で山頂に登れるのよ。弘前はもう秋。枕辺に虫の音色が忍び寄る。


きりりと空気がしまる北国の朝、岩木山神社の山門に立つ。鳥居の間に、まさに象形文字の山の形をした岩木山の山頂が見える。土地のお婆さんに登山口を訊くと親切に教えてくれるがさっぱり解らない。社殿の左に百沢登山道の案内板を見つける。<岩木山は、中世以降修験道の峯入り修行の場となる。山で霊魂が再生するという古い観念は、修験道や山岳仏教とつながって盛んとなった。これが五穀豊穣祈願の山かけや、成人儀礼のお山参詣(登拝行事)に発展した>

岩木山神社、鳥居の間に象形文字の山の形を
した岩木山が見える
大沢、もしやここが坊主コロバシ? 右側に足
がかりがある


昼なお暗い杉林に雨音がする。生い茂る枝葉は天然の笠、雨を遮ってくれる。雨の様子を見ながら、宿の朝飯代わりに作ってくれた握り飯を立って食う。樹林から神苑桜ヶ丘公園に入る。<明治の初め、モミジやコブシ桜を移植して百沢公園と命名した。明治37年、日露戦争開戦記念として1万本の吉野桜が植樹された。以来、桜の名所、桜林公園として憩の場として親しまれている> 公園を抜けると百沢スキー場に出る。ゲレンデの奥に、雲に薄れてゆく岩木山が見える。


焼止まで2時間30分の標柱に導かれて樹林に入る。滑りやすい黒土の登山道を下って石切沢を渡る。上り返すと七曲りという長い坂、ついで鼻コクリと呼ばれる上り坂。鼻が地面につくほどの急斜面だというが、そんなことはない。杉林からミズナラ林へ、また杉林。しめ縄が張られた大石と崩れかけた物見櫓が忽然と現れる。姥石。緩やかに上る山道。視界はない。時折り、雨が通り過ぎる。風通しのない樹林は猛烈に暑い。おや、ダケカンバの林に突然人声が聞こえてくる。

鳳鳴ヒュッテと御倉石 二ノおみ坂


やっと着いた焼止ヒュッテ。二組の老夫婦が今しも小屋を発つところ。ブロック造りの避難小屋の石段に腰を下ろす。疲れた。無理に菓子パンを腹に詰め込んで昼飯休憩。樹林から開放されるが、ここからは心して登れ。難所といわれる大沢を遡る。迸る沢水。大岩を越えるとまた大岩。鎖やロープなぞ一切ない。自力で岩を越えるほかはない。アルミ梯子で上る坊主コロバシという岩場がある筈だが見かけない。水場、錫杖清水に着く。冷たい湧水が喉を通ると生き返るようだ。


涸沢を上る。もう大沢の源頭部。この季節にしてはかなり多くの花が咲く。急坂を上りきって種蒔苗代。水を湛えた静かな沼。御倉石と呼ばれる双頭の大岩を左に見て一ノおみ坂を上る。稜線上に建つ鳳鳴ヒュッテに辿り着く。ブロック造りの壁に二つの扁額が掲げられている。そこに鳳鳴ヒュッテの由来が記されている。<昭和39年、山岳部生徒が下山途中に猛吹雪のため遭難した。このヒュッテは再び悲劇の起こらぬことを願って岩木町が建設した。秋田県立大舘鳳鳴高校>

岩木山山頂、左端が岩木山奥宮 岩木山山頂


スカイライン8合目からの登山道と合流する。山頂まで標高差70mだが、岩が重なる厄介な急坂。小屋脇に重いザックを残して登ることにする。うん、これなら楽だわい。8合目から上ってきた観光客は物珍しさに嬉々として岩を上るが、僕には辛い。二ノおみ坂を上りきると平坦なニのテラス。ひと息入れて三ノおみ坂を上る。岩が堆積した山頂。岩陰に奥宮と改装中の山頂避難小屋がある。下は絶壁。覗けば紅葉し始めた森がある。鐘を納めた石造りのピラミッドが山頂標識。


生憎の曇天、北海道の松前まで見られるという眺望はない。白神山地も八甲田連峰も雲の中。下山にあたって下山路を目で追う。赤い屋根の鳳鳴ヒュッテ、御倉石、リフトの山頂駅、8合目バス停。三ノおみ坂、二ノおみ坂を立札の指示どおりに右側通行で降る。ヒュッテ脇のザックをデポして歩き出す。折しも陽が射してきた。御倉石は大絶壁を擁し、底部には鳥ノ海噴火口があるという。観光リフトに身を委ねて8合目へ下る。あとは70曲りの坂を降るシャトルバスを待つばかり。


曇り 百沢に前泊、日帰り 単独行 歩行距離=7.5km 歩行時間=5時間

岩木山神社645→700(途中、食事休憩)715725百沢スキー場登山口→820姥石830930焼止りヒュッテ9401050錫杖清水1055→1125鳳鳴ヒュッテ11301150岩木山12001220鳳鳴ヒュッテ→1245とりのうみふんかこう駅
とりのうみふんかこう1245⇒(岩木山リフト)⇒1255いわきさんちょう
岩木山8合目1345⇒(弘南バス)⇒1415岳温泉1430⇒(弘南バス)⇒1525JR弘前駅