大白森おおしろもり)   

178 2009/6/25(木) 大白森 1,216東北100名山 ← 小白森山 1,144




梅雨の晴れ間に東北の名山、秋田駒ヶ岳を登る前日に、軽く足慣らしをと大白森を登る。大白森とは南八幡平縦走路の一角、と云っても分かりにくい。秋田の秘湯、乳頭温泉から真北に向かうこと6km、深い森を抜けると広々とした湿原の中に山頂がある。それが小白森山と大白森。閉口したのはどこまでも続く山道のぬかるみ。この山に登るなら登山靴はいらない。長靴を履けばいい。どんなに暑くても半そでシャツや短パンは禁物。待ち構えるアブの恰好の餌食となる。


よく晴れた日。東京は30度を越えたというが、田沢湖だって暑い。駅前バス停には長蛇の列。駒ヶ岳8合目行きのバスに乗り込む登山客。残されたのは数組の湯治客と僕。乳頭温泉行きのバスは日本一深い田沢湖で折返し、水沢温泉と高原温泉を抜ける。乳頭温泉からパイプで湯を引いているのだという。鶴の湯温泉旧道口で下車。暗いブナ林の入口。そこには<ようこそブナの森 乳頭温泉郷 優秀観光地づくり賞>と彫られた二つの大きな石碑が置かれている。

鶴ノ湯温泉 大白森へブナの森


ひっそりと立つ鶴ノ湯峡への標識に導かれ、厚く積もった落葉の森を進む。聞こえる水音。遥か下に流れる白濁した先達川。丸木の階段を降り吊橋を渡る。この森はツアールの森と呼ばれ植生豊かな散策道だという。道幅が広くなると本陣、鶴の湯温泉。水車、黒い板塀、藁葺屋根、陣屋。なんだかタイムスリップしたような家屋。日帰り入浴500円。人気の温泉だけあって右往左往する人達。大白森への山道が分からぬまま左手の坂を上がると鶴の湯神社と初めての道標がある。


ブナ林の隘路を進むと十字路に出る。鶴の湯蟹場分岐。大白森は直進を示すこの道標を信じてはいけません。案内書を思い出してあえて左折する。10mほど先に道標が立ち大白森への分岐がある。ゆるやかに自然林を上る。伸びてきた下生えの枝葉が煩わしい。そこで異様な光景に出くわす。狭い山道に体長50cmほどの蛇がいる。途端に足がすくむ。不気味な赤と黒のまだら模様はヤマカガシだ。蛇は蛙の尻を咥えこみ、蛙はそれでも平然と呼吸している。そっと去る。

秋田駒ヶ岳 小白森山山頂


先の見えない一本道をただひたすらに上る。急坂の傾斜がゆるむと水場がある。その先で笹の広場に出る。前方に緩やかな盛り上がった山は小白森山かしら。振り返れば残雪が残る双耳峰のような駒ヶ岳が見える。ここでひと休み、食事にしよう。またブナ林に突入。山道が平坦になって蟹場分岐。蟹場とは乳頭温泉の北端にある温泉。登山路を直角に左へ曲がると道幅が広くなる。およそ尾根道らしくない山道。鬱蒼としたブナ林は景観を遮り、深い森の中を歩いているようだ。


マイナーな山だが既に十数人と出会う県境尾根。展望はなくぬかるんだ山道。深みにはまれば膝まで潜ってしまいそう。露出した腕に噛みつくアブが怖い。払い落とさねば逃げないしたたかさ。喘ぎながら急坂を直登すると勾配が緩み木道が現れる。一直線に伸びる木道脇に山頂標識が立つ。小白森山。背丈ほど伸びたチシマザサの草原に小ぶりのダケカンバやオオシラビソがまばらに生えている。山頂に鳴く鶯。咲く花はニッコウキスゲ、レンゲツツジ、イワカガミ。皆、赤色系の花。

大白森山頂 大白森の湿原、右奥は岩手山


展望のない山道を降り、鞍部でまた悩まされるぬかるみ。ダケカンバの林を上り返せば大白森(山)に着く。見渡す限りの高層湿原。遮るもののない山頂に強風が吹く。波打って揺れる白いワタスゲ、コバケイソウ、イワイチョウ。皆、白い花。湿原に伸びる白い木道。そこに山頂標識。南は秋田駒から乳頭山へ続く山並み。東に三ツ石山の肩から覗く岩手山。北から西は草原に隠れて山はない。写真を撮り終えれば強風に辟易してもう戻るだけ。帰路は往路をとぼとぼと下山する。


快晴 日帰り 下山後、高原温泉泊 単独行 歩行距離=12km 歩行時間=4時間50

JR秋田新幹線、田沢湖駅前1012⇒(羽後交通バス)⇒1053鶴ノ湯温泉旧道口
鶴ノ湯温泉旧道口1055→1115鶴ノ湯温泉11201215(休憩)12301245蟹場分岐→1315小白森山1320→1355大白森14101440小白森山14451600鶴ノ湯温泉16051625鶴ノ湯温泉旧道口
鶴ノ湯温泉旧道口1638⇒(羽後交通バス)⇒1650高原温泉 (泊り)