涸沢 (からさわ)  

168 2008/10/10(金)、11(土) 涸沢 2,309




涸沢へ行かないかと誘ってくれたNさんの車はサラダ街道を突っ走る。終着は北アルプスの山間、沢渡温泉。これから先は自然保護による交通規制でタクシーを利用する。くねくねと曲がる釜トンネルを抜けて上高地。涸沢カールと云えば、北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳、前穂高岳にぐるりと囲まれた絶景の高地。3,000m級の峰に登るべくもないが、今が紅葉たけなわ。山が招けばどっと登山客は押しかける。今宵の山小屋は布団一枚に3人が寝るらしい。はてどうなることやら。


山旅は大正池で始まる。ジャケットを脱いで長袖1枚で水辺に降りる。吐く息は白く、寒い。<大正池は大正5年の焼岳の大噴火の際に生じた火山泥流が梓川をせきとめて作った池です> 水中に立つ枯木、波紋を広げて泳ぐ鴨、水辺に横たわる倒木。河原でカメラを構える人達。ぼうと霞む朝霧の向こうに、朝日を浴びた焼岳が聳える。<焼岳 標高2,455m 北アルプス唯一の活火山で、活発な活動によりドーム形の山体になりました。最近は昭和37年に爆発がありました>


河童橋から梓川の上流には穂高連峰が 涸沢を遡る、右が屏風の大岩壁


<ここは、ほぼ1,500mの高さにあり、低山帯と亜高山帯との境界付近にあたります> 自然研究路は道草を食う遊歩道。シラカンバの美林の田代湿原を覗き、梓川コースで穂高の山並みを遠望する。<正面の谷が岳沢で、その奥の平らな山頂が標高3位の奥穂高岳3,190mです。左側に西穂高岳、右側に前穂高岳、明神岳が連なっています> 田代橋を右岸へ渡るとウェストン碑、カラマツ林の中に佇むホテル群、そぞろ歩く観光客。梓川左岸に、あれは六百山と霞沢岳。


幅広の道路が横尾で尽きると、4時間の上高地漫歩は終わる。それでも移り変わる風景は見飽きることがない。見上げれば明神岳、前穂高岳、屏風。ほぼ1時間ごとに休憩ポイントがある。河童橋、明神、徳沢、横尾。穂高連峰が一望できる河童橋。対岸に穂高神社や人気の明神池がある明神。前穂の東壁を舞台とした小説「氷壁」の登山基地となった徳沢。見事に黄葉した巨木のハルニレがある。何れも道標、案内板、トイレには困らないし、軽食、宿泊施設も揃っている。


涸沢カールから見る奥穂高岳 涸沢岳、右は涸沢槍


楽して涸沢には登らせてくれない。横尾から涸沢までは山道を上る。路程は3時間。新装なった横尾山荘前から槍ヶ岳、蝶ヶ岳への登路を分けて横尾大橋を渡る。始めは本谷橋まで緩やかに上る。横尾谷の左岸を遡って、氷河で侵食された屏風の大岩をぐるりと回る。谷間の正面には北穂が現れる。ダケカンバやカラマツの明るい原生林。本谷橋へ着く。小振りの吊橋と小さな木橋が架けられている。河原で休む大勢の人。僕らも大岩に腰掛けて2回目の昼飯を食う。


靴紐を締め直して出発。露岩を越えて紅葉の樹林を急登する。手強いガレ場に立ち止まり、息を整える。落石箇所を足早に通過する。切り立った屏風の山腹を巻きながら紅葉の涸沢を遡る。Sガレまで登ると紅葉、黄葉の上方に北穂、奥穂、前穂が姿を現し、涸沢ヒュッテの赤屋根がちらっと姿を見せる。最後は谷間を埋めて石積みされたモールの山道を上る。やっと到着、涸沢カール。今宵の宿は岩塊の上に建てられた涸沢ヒュッテ。数棟から成る山小屋。収容人員200名。


北穂高岳、直下に涸沢小屋 涸沢カールのテント村


カールとは氷河にえぐられたお盆のような地形のこと。名だたる穂高連峰の山々に三方を囲まれた涸沢、絶景の地。加うるに今年の紅葉は10年振りの見事な色づきだという。ヒュッテの屋根上には涸沢カールが一望できるテラスがある。そこに陣取る宿泊客。見上げると涸沢岳と奥穂高岳との鞍部に穂高岳山荘。岩稜とザレた山腹。まだ残る雪渓。カールの底に敷かれた紅い絨毯。北穂を背にして、涸沢のもうひとつの山小屋、涸沢小屋。色とりどりのテント。散策する登山客。


熱いおでんをおかずに、これで3度目の昼食。寒さに居たたまれず屏風の間に逃げ込む。この部屋には4枚の布団がある。今晩は1枚の布団に2名、明晩は3名が寝る混みよう。Nさんを含む3名の常連が1階の乾燥室で寝ると言い、毛布を抱えて下へ降りて行く。翌朝500起床。降り止まぬ夜来の激しい雨。雨をついて山小屋に別れを告げる。先発グループを追い抜きながら往路を下る。濡れた石。滑るまい、転ぶまい。ガスが流れて屏風の大岩壁が静かに隠れてゆく。


10/10(木): 快晴  同行者=Nさん 歩行距離=19km 歩行時間=5時間40分

 沢渡655⇒(タクシー)⇒710大正池
 大正池710→800田代橋→820河童橋825→900明神→955徳沢1025→1110横尾1120→1210本谷橋1230→(途中休憩10分)→1405涸沢 (涸沢ヒュッテ泊)

10/11(金): 雨のち晴  同行者=Nさん 歩行距離=15km 歩行時間=6時間15

 涸沢630→730本谷橋735→825横尾→940徳沢1000→1045明神1115→1150河童橋→1155上高地BT
 上高地BT1155⇒(松本電鉄シャトルバス)⇒1215沢渡