燧ヶ岳(ひうちがたけ)   

166 2008/9/24(水) 燧裏林道 → 9/25(木) 燧ヶ岳 2,356m 日本100名山




尾瀬の山といえば至仏山と燧ヶ岳共に日本100名山に数えられる。燧ヶ岳は東北の最高峰だという。尾瀬ヶ原の南端と尾瀬沼の北岸の山。同じ尾瀬にありながら群馬県と福島県の山。県境を画すのは沼尻川。その源流は、周囲の山々から注ぎ込んだ水を湛えた尾瀬沼。西に向かって標高差260mの尾瀬ヶ原に流れ落ち、尾瀬ヶ原の水を集め、下田代で北に転じて只見川と名を変える。さて、久々の山行。ひと足早い秋を探して、燧裏林道を歩いて燧ヶ岳に登る。


横浜を早朝に発っても、日帰りで燧ヶ岳を登るにはちょっと無理。そこで初日は御池から燧裏林道を歩いて温泉小屋泊り、次の日は見晴新道を上って燧ヶ岳へ登る。下山は御池へ戻ろう。電車とバスに5時間以上も揺られて、御池に辿り着いたのは正午過ぎ。身体の節々の痛みとザックを背負ってやおら歩き出す。青い空、強い日差し。だだっ広い御池駐車場を突っ切ると最奥が尾瀬ヶ原への入口。登山者の自動記録カウンターをすり抜けて真新しい木道へ足を踏み出す。


池塘が点在する横田代 尾瀬ヶ原の水を集めた三条ノ滝


木洩れ日の樹林は、ダケカンバやオオシラビソが目を惹く美林。括りつけられた標語がある。<おるまい、とるまい、高山植物> 樹林から湿原へ、湿原からまた樹林へ。これが燧裏林道。燧ヶ岳への分岐を過ぎると御池田代。田代とは田んぼのこと。花の季節はとうに終わり、草もみじが始まった小湿原。姫田代から木段を上って上田代に出る。燧裏林道で最も広い湿原。遠く、平ヶ岳や荒沢岳の山並。入深沢を渡ると池塘が点在する横田代に西田代。池塘とは水たまりのこと。


木道は続く。ノメリ田代を通過、天神田代で渋沢温泉への道を分ける。シボ沢に架かる裏燧橋は、鉄製の橋脚で造られた立派な吊り橋。橋の中央から平ヶ岳が見える。道標に従って三条ノ滝への急坂を下る。ここまで木道を歩いてきた足は岩場と岩礫になじめない。沼尻川の右岸から二つの急階段を降りると観瀑台がある。轟く滝音。尾瀬ヶ原の全ての水を集めた圧巻の滝。案内板、<三十丈(約100m)の滝が転訛したとも渇水時に滝が三筋に分かれるからとも云われます>


岩角を掴んで這い上がり、眼下に平滑ノ滝を見る。悪路から木道に入ってほっと一息。今宵の宿は赤田代に二軒ある山小屋の一軒、温泉小屋。三条ノ滝見で酷使した足を癒せるのはありがたい。早速入浴16:1515人の宿泊客と夕飯17:00、6畳ひと間を独り占め、就寝20:00。翌朝400になると小屋が騒がしくなり起床5:00、朝食6:30。金850円のおにぎり弁当と、金300円の尾瀬の水というミネラルウォーターをザックに詰め込んで出発6:45。天気予報では曇りのち雨。


草もみじの尾瀬ヶ原、赤い草は羊歯、至仏山 柴安ー山頂、尾瀬沼 背景は日光連山


赤田代を後にして下田代へ向かう。静かな朝、コツコツと、木道を歩く靴音だけが響く。低い空、漂う朝霧。はるか先に白い雲を中腹に浮かべた、あれは至仏山。見上げる燧ヶ岳の頂を流れる雲が越えてゆく。拠水林を抜けると尾瀬ヶ原が広がる。草もみじの草原に赤く変色した羊歯。紫色の花が咲く。竜胆、鳥兜、薊。朝の挨拶を交わしながら擦れ違うハイカー。木立の中に静かに佇む6軒の山小屋。下田代十字路。別称、見晴し。屋根から舞い降りる鴉。ここから見晴新道が始まる。


ブナの大木、オオシラビソの森。木道が尽きると沢を歩き涸沢を遡る。浮き石、濡れた岩。展望のないガレ場の急登。思いもしなかった山頂まで続く悪路の上り。上るのはまだしも、降るのは辛いだろうなと思っていると、上から軽々と下りてくる人がいる。ついでもう一人。山頂近くでは女の一人旅。皆凄い。悪戦苦闘3時間、板状に重なった岩場を過ぎるとやっと傾斜が緩む。そこは烈風が吹き荒ぶ山頂に続く稜線。這松、赤い岩。吹き飛ばされまいと身を低くして岩また岩を這い上る。


向こうの柴安ーから登り返して俎ー山頂 ガレ場を下ると熊沢田代 振り返る俎ー


燧ヶ岳は俎ー(まないたぐら)と柴安ーとの双耳峰のように見える。実は5峰から成る。残りの3峰は赤ナグレ岳、御池岳、ミノブチ岳。柴安ーの山頂は大岩が重なる岩稜の山。墓石もどきの花崗岩の山頂標柱がある。曇天なるも抜群の展望を誇る。尾瀬沼、尾瀬ヶ原と至仏山は勿論のこと、日光、那須、上信越の峰々。強風に恐れをなして山位同定なぞする余裕もない。数枚の風景をそそくさとカメラに納めて俎ーへの降り口を探す。折しも数名のパーティーが岩陰から現れた。


俎ーは柴安ーと同様、東北と関東の山の展望台。山頂標柱、小祠3体。風を避けて岩陰で早い昼飯。あの温泉小屋の食事の不味さに比べ、この握り飯の美味さを変に感心する。下山の始めはぬかるんだ土の道、濡れた岩。熊沢田代で会津から来た陽気な3人組に追いつく。熊沢田代と広沢田代は下りの辛さを忘れさせる別天地。草もみじの高層湿原、色づいたナナカマド、青空を映す池塘。湿原を過ぎると展望を隠す樹林、水が流れる急斜面のガレ場降り。悪路は続き御池は遠い。


9/24(水): 快晴  単独行 歩行距離= 6.9km 歩行時間=3時間20分 

 東武鬼怒川線、会津高原尾瀬口駅10:50⇒(会津乗合自動車)⇒12:20尾瀬御池
 御池1225→1250上田代→1330天神田代→1415兎田代→1450三条ノ滝1500→1555赤田代  (温泉小屋泊)

9/25(木): 曇り 単独行 歩行距離=101km 歩行時間=6時間15 
 
赤田代645→715下田代十字路→730沼尻分岐点(途中休憩10分)→1015柴安ー1025→1050俎ー1105→1210熊沢田代1215→1250広沢田代→1345御池
 尾瀬御池14:40⇒(会津乗合自動車)⇒16:30東武鬼怒川線、会津高原尾瀬口駅