鹿留山(ししどめやま)   

165 2008/6/7(土) 鹿留山 1,632m ← 杓子山 1,598山梨100名山




あれは5年前のこと、鹿留山へ上ろうと子ノ神を過ぎると、尾根の積雪は膝上まで深くなる。あと5分で山頂なのに。あえなく敗退した鹿留山。今日は梅雨の晴れ間にリベンジをと、バスを役場前で降りる。一緒に下りたのは三鷹から来た白髯のおじさん。ところで高座(たかざす)山への案内標識がない。北に見えるあの山を目指せば間違いなかろうと、小学校の角を曲がり中学校の脇を進む。杉林の舗装道路の先は鳥居地峠。休猟区の立札と初めての高座山への道標がある。


砂利道の林道を歩くと高座山への登り口に着く。そこに告知板、<<これより杓子山登山コースです。登山中、落石や滑落等危険箇所がございますので、十分注意してください。忍野村>> 薄暗い森を通り抜けると眼前に高座山のうねるような草原が広がる。山裾から山頂までは、牧場ならば牛が転げ落ちるような急斜面が続く。その西端の山道を直登する。辛い上り。きつい斜度の上に滑りやすい湿った土の上り坂。汚れたロープでも天の助け、しっかり掴んで身体を引き上げる。


草原の高座山を上る 富士山の見えない杓子山山頂


樹木が伐り払われた高座山の山頂広場には、三等三角点と山頂標識がある。先着の白髯さんは岩に腰掛けてバナナを食い、O君は立ったまま煙草をくゆらせて、箱庭のような忍野村を俯瞰している。心地いい微風が吹き抜けてゆく。ひと休みの後、東側の山道を下る。歩きやすい土の山道は露岩の尾根道に変わる。送電線鉄塔のある鞍部に下りると、視界が開けて初めて杓子山が姿を現す。緑濃い山。見上げるような高さ。上り返した岩稜の尾根道は山ツツジの咲く自然林。


樹林を抜けると大権首(おおざす)峠。前回は下吉田から林道を歩き、ここから杓子山へ登ったところ。ハングライダーの離陸台がある。今しも飛行しようとするハングライダーと二人の見物人がいる。 <<全国的にも珍しい2人乗りのハングライダースクールです。離陸台の標高は1,350m、着陸地点はここより南1,500m、標高960mです。穏やかな南風であれば約5分のフライト、上昇気流に乗れば1,000m以上上昇し、12時間以上飛行します。忍野スカイスポーツ倶楽部>>


ハングライダーに目もくれず、髯爺とO君は杓子山を上り始める。なかなか離陸しないハングライダー。仕方なく僕もふたりの後を追う。アカマツの根がはびこる直登はつづら折れに変わる。足元にこぼれるサラサドウダンの花びら、見上げれば山ツツジ。息を切らして杓子山。ここにも三等三角点、仰々しい山頂標識、山梨100名山の標柱、石の小祠、それに釣鐘。山頂には2組のテーブル・ベンチに2組の夫婦が食事中。同じテーブルに座るご主人にガスボンベを借りて、暖かな昼飯を摂る。


鹿留山 鹿留山山頂、木に括り付けられた山頂標識


一瞬雲が途切れて富士山を垣間見る。誰ともなく歓声が上がる。市原在の夫婦は、鳥居地峠に戻りたいが、あの高座山の下りは怖くて降りたくないという。はじめは爽やかな微風も、冷たい風に感じられてきた。鹿留山へ向かう潮時。露岩が邪魔する樹林の尾根道。梢の上に緑に包まれた鹿留山が覗く。おや、ピンクのトウゴクミツバツツジが咲いている。杓子山の南面は山ツツジ、北面はミツバツツジとうまく棲み分けている。子ノ神を過ぎてこぶを上り下りすると難なく鹿留山。


杓子山に比し、人の訪れが少ない鹿留山は寂しい山。山頂標識は樹木に括り付けられた小さな木片。視界を塞ぐブナ、ミズナラ林。それでも見事な大木がある。ミツバツツジが咲いている。子ノ神から内野までは標高差700mのいっき降り。露岩を30分間急降下すると、一転足にやさしい土の道。立ノ塚峠からは林道歩き。内野バス停は巡ってきた山々が一望できる。草原の高座山、こんもりとした杓子山。遊弋するハングライダー。一片の雲がゆっくりと流れて鹿留山を越えてゆく。


曇り 日帰り 同行者=O君 歩行距離=11.5km 歩行時間=4時間

富士急、富士吉田駅840⇒(富士急山梨バス)⇒900役場前
忍野村役場905925鳥居地峠→1005高座山10151045大権首峠10501120杓子山12001230鹿留山→12:35子ノ神1315立ノ塚峠→1400内野バス停
内野1415⇒(富士急山梨バス)⇒1450富士急、富士吉田駅