大山4(おおやま)

161 2008/2/14(木) 大山4 1,252




凡そ東京周辺の山ならば、どこもかしこも雪の山。日刊スポーツの山岳情報では、近郊の山でも50cm、吹き溜まりは1mの積雪だそうな。雪の山なら尾根歩きがいい。よく知った山がいい。丹沢の大山でもタフな登りを強いられる登路がある。北側にふたつ。山地図では点線で記された北尾根と、不動尻を上り唐沢峠からの尾根歩き。アプローチが悪い前者にはご遠慮願って、不動尻から登ろう。これで年初から、マイナーな登山路を上る、滅多に人に会わない丹沢の山、三部作。


長い林道歩きは、珍しい風物が退屈さを紛らわしてくれる。広沢寺の入口にお地蔵様がある。その昔、七沢の石工が地蔵を造ったが、鼻を欠いてしまった。親方曰く、高いところに乗せれば優しく語っているように見える。それから、誰言うとなく下向き地蔵と呼ぶようになった。やがて広沢寺温泉。東丹沢の山里には、いくつもの温泉宿がある。温泉郷は七沢温泉と飯山温泉。一軒宿はかぶと湯と広沢寺温泉。その広沢寺温泉は、イノシシ鍋と強アルカリ性の露天風呂が名物とか。



唐沢峠下の東屋 唐沢峠付近から振り返ると北に大山三峰山


全長200mの山ノ神トンネルを抜けると雪だった。凍結した林道をこわごわ歩き通して不動尻。キャンプ場跡に、右へ大山三峰山を示す道標がある。直進は大山との標示がない。靴跡もない。ままよと、ひずめが二つに割れた動物の足跡を追い、木に括り付けられた赤いリボンを頼りに左手の沢に下りてゆく。草木に掴り、右斜面のけもの道を這い上がると、知らず知らずに藪の中。これはおかしいと思い直して、戻るのがひと苦労。その途中に、おやっ、立派な道があるではないか。


幅員2mもある林道は杉林をジグザグに上る。歩きやすい緩やかな斜度。杉林が途切れる度に展望がひらける。鐘ヶ岳、三峰山、厚木市街。虎縞模様のロープに導かれて、林道から木段の山道を上る。林道を串刺しに突っ切る登山道だ。上るにつれて傾斜はきつく積雪は深くなる。不思議なことには、いつの間にか数人の踏み跡がある。樹間から大山が見え出すと分岐がある。直進は暗い桧林の急登、左は明るい山腹の巻き道。そこに立札がある。山林管理道につき立入禁止。


唐沢峠から尾根道を南へ向かうと右手に大山と北尾根


巻き道は大山を目指しているし、尾根に抜けられたら儲けもの。かまうものかと山林管理道を選ぶ。崩れやすい崖上の隘路は、何と唐沢峠を巻いて峠下の東屋に出る。ザックをテーブルに投げ出してベンチにへたりこむ。見回すと、ここから3本の山林管理道が分岐し、うち2本は木柵が道を塞いでいる。2年前に遭難騒ぎがあったが、恐らくその再発防止策であろう。右手には、大山から派生する北尾根が白い壁のように聳えている。陽射しは意外に強くとも、谷間から忍び寄る風は冷たい。


太陽に向かって歩く尾根道は、今日いちばんの気持ちのいいところ。新雪のような深い雪。足を踏み入れると膝までもぐる。岩の隙間を踏み抜いたら一大事。先人の踏み跡どおりに歩けば、圧雪はそれ以上沈まない。ポケットに片手を入れた外国人がやって来る。今日はじめて会った人。左右に鎖を張られたヤセ尾根を数箇所通過する。緑のアセビやツゲに巡り合うとほっとする。枯木の林はウツギの群生地。雪道は歩きにくいし疲れる。ススキの草原のベンチで、またひと休み。


イタツミ尾根から見る 左には三ノ塔の肩に富士山、中央に塔ノ岳、右端が丹沢山


日向薬師への分岐を過ぎると、かなり大勢の人が降りてくる。見晴台から下社へ抜ける人が多いようだ。踏み固められた急登を上って登頂、大山。冷たい風を避けて、阿夫利神社の奥宮横で腰を下ろす。ここは関東平野から伊豆半島まで一望できる展望台。うっすらと江ノ島、真鶴岬、伊豆の山。丹沢の山陰に白い富士山。さて、1時間遅れの下山。あと2時間で蓑毛へゴールできる。雪道は上りよりも下りの方が危ない。アイゼンの紐をきつく締めてイタツミ尾根を降りてゆく。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=12.8km 歩行時間=6時間

厚木バスセンター735⇒(神奈中バス)⇒800広沢寺温泉入口
広沢寺温泉入口810900不動尻→915三峰山分岐(迷走)9451050唐沢峠下東屋11101225日向薬師分岐12301245大山13001400ヤビツ峠→1450蓑毛
蓑毛1500⇒(神奈中バス)⇒1525小田急、秦野駅