黒斑山 (くろふやま)   

150 2007/9/20(木) 黒斑山 2,404m 日本100名山




彼岸の入りは、また夏がやってきたように暑い。東京では今年52日目の真夏日だそうな。佐久平の朝は清々しい。青い空、幾分秋めいた空気。高峰温泉行きのバス停でびっくり。貼り紙がある。<台風9号の影響により高峰高原線チェリーラインは土砂災害のため、通行止めになっています。現在佐久平〜植物園間は高峰温泉、高峰高原ホテルの車が送迎しています> ともかく車坂峠まで行けるのだ。たった5人の登山客を乗せたバスは、コスモスの咲くリンゴ畑を分けて走り出す。


乗り継いだマイクロバスを、高峰高原ホテルの前庭で降りる。そこは見晴台。朝霧の上に青いシルエットの山並が広がる。奥秩父の山、その右に富士山、八ヶ岳。車坂峠は、もう標高2000mほど。公道を横切ると登山口。峠の標識、表コースの指標、山ノ神と書かれた鳥居とふたつの石祠。自然林に掲示板、<高峰国有林 この辺りは高山帯に近い林相です。ここの草花や樹木は、厳しい風雪に耐えて育った貴重な植物です。草木は折ったり採ったりしないこと、山火事注意>


赤ゾレの頭から見る浅間山、左はトーミの頭へ、右は牙山


中コースと別れて、眺望がいいという表コースを採る。低い樹高のカラマツに、ダケカンバやシャクナゲが点在する林を上る。黒土に砂礫や溶岩の山道。張りめぐらされた緑色のロープ。岩に書かれた白ペンキマーク。まるで公園を散策しているかのよう。樹林を出て展望の裸地へ、そしてまた樹林に入る。水ノ塔山、篭ノ登山。北アルプスも見えてくる。南に奥秩父と八ツの山。前方に、上部が立ち枯れの外輪山の一角が見える。知らぬ間に車坂山を通り過ぎて鞍部を駆け下りる。


カラマツ林からシラビソの森に入る。赤いドラム缶のような建物に着く。槍ガ鞘の避雷小屋。そう云えば、注意書きがあった。<浅間山の火山活動は、このところ比較的静穏な状況を保っています。しかし、人体に危険な火山ガスが常時発生しており、全ての噴火を予知できません。小諸口からの登山道以外は、立入り禁止です。予知できない小規模の噴火でも、噴石等の危険が大きいと判断されますので、「下山は必ず小諸口」へ、してください> はて、小諸口ってどこだ。


湯ノ平高原を挟んで、黒斑点、蛇骨岳、仙人岳、Jバンドと続く外輪山と浅間山


シラビソの梢の上から、まさに劇的に浅間山が現れた。少し登って岩峰の赤ゾレの頭。白い水蒸気が立ち昇る浅間山は、中腹から緑の裾野が大きく広がる山。上部は火山礫の山肌。さて、左側はシラビソ林、右側が切れ落ちている縁に沿って上るとトーミの頭。展望の山頂。左手は外輪山。眼下は緑の湯ノ平高原。岩の頂稜に休む人の多さに辟易して、シラビソの林を抜けて黒斑山へ。嬉しいことに、山頂には日陰がある。遊弋する赤トンボ。やっと足を延ばして展望を愛でる癒しのひと時。


腹拵えを済ませると下山のとき。トーミの頭の手前にある、湯ノ平降下点まで戻る。草スベリと呼ばれる急斜面にジグザグにつけられた山道。どうも谷側に引っ張られそうな気がする。上ってくる4人と擦れ違う。草スベリを上るのはきついという。浅間山荘から来た人。Jバンドから高原を突っ切ってきた人。前掛山に登ってきた人。更に火口まで覗いてきた人。浅間山は地面が暖かい山だという。張り付いてトラバースする岩場が唯一の危険箇所。慎重に降りるとカラマツ林が出迎えてくれる。


黒斑山からは大きな浅間山が見える 湯ノ平高原からトーミの頭を仰ぎ見る


クマザサの林床に、まばらに生えるカラマツの樹林。初夏ならば湯ノ平は花の宝庫だという。この季節でも紫系の花が高原歩きを楽しませてくれる。オヤマリンドウ、トリカブト、マツムシソウ。見上げる左手に牙山の岩峰、右手はトーミの頭の絶壁。ちょっと異様な光景を醸し出す。今しもインディアンが襲来しそうな雰囲気。浅間神社と火山館が現れる。<市営火山館内は、平成11年、旧火山館を取壊し新築オープンしたものです。ウッドデッキの下は浅間山噴火の際の避難施設になっています>


実は4ヶ月ぶりの山行。心配は現実となって、草スベリの途中から右膝の裏側が痛み出した。足のご機嫌をとって歩くほかはない。火山館で休むともう歩けなくなりそう。赤い川底を眺めながら蛇掘川に沿って下る。カモシカ平を通過。また樹林に入る。二の鳥居で山道は二つに分かれる。よせばいいのに川沿いの悪路を選ぶ。すさまじい不動の滝音。束ねた丸木橋で川の流れを徒渉すると一の鳥居。林相は陽気なブナ林に変わり、山道は幅広の林道となる。天狗温泉浅間山荘はまだかしら。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=8km 歩行時間=3時間45

長野新幹線、佐久平駅840⇒(JR関東バス)⇒940植物園前945⇒(マイクロバス)⇒955車坂峠
車坂峠10001055赤ゾレの頭→1110トーミの頭→1130黒班山11501200湯ノ平高原降下点→1240湯ノ平口→1250火山館13001350一ノ鳥居14001425浅間山荘
天狗温泉、浅間山荘1445⇒(タクシー)⇒1515JR小海線、小諸駅