鼻曲山はなまがりやま)  

149 2007/5/23(水) 鼻曲山 1,655m 信州100名山




夏のような暑さが急にやって来た日、逃げるように軽井沢へ。駅頭に降り立つとさすがに爽やか。駅前広場には北軽井沢行きのバスが停まっている。急行だから登山口の長日向には停まらない。タクシー乗り場に向かうと、バスの運転手さんから「何処まで」と聞かれる。「鼻曲山へ登るのなら、他に乗客が居ないから長日向に停車しますよ」と言う。ありがたや、草軽交通さん。僕ら二人だけを乗せたバスは、人もまばらな新軽井沢から峠を越えて若葉茂れる別荘地へ登って行く。


長日向バス停に、ふれあいの郷はこの先70mとの案内板がある。人けのない別荘を横目で見ながら林道に入る。鼻曲山へ6km、120分の道標。すぐに遮断機の下りた車止ゲートが行く手を阻む。そこにクマ生息地域の警告を見て、早速カウベルを取り出すO君。風のない自然林、鳥の囀りに合わせて、お遍路さんの鈴が鳴る。真っ直ぐな林道を黙々と上ると、いつの間にか細い掘割状の山道に変わる。カラマツ林に混じるダケカンバの美林。葉陰からこんもりとした山が見えてきた。


鼻曲山の小天狗と浅間山 小天狗から見る浅間隠山


鼻曲山と鼻曲峠との分岐。鼻曲峠へは崩落のため通行止めの立て札がある。丸太に腰を下ろしてひと休み。汗を拭いて微風に身を委ねる心地よさ。鼻曲山へ上りだすと、視界は開けて留夫(とめぶ)山の山並が見えてくる。おっと小砂利の急斜面。滑るまいと、靴底を地面とぴたりと合わせて上る。最後の上りは泥まみれの虎縞ロープに縋る。這い上がると山頂の一角に登りつく。折れた標柱に、小天狗と書かれたガムテープが貼られている。開けた山頂は、5月にしては視界がいい。


真西に浅間山、真北に浅間隠山が手の届くような近さにある。その奥に、まだ雪の残る本白根と四阿山が見える。はるか南に八ヶ岳が霞んでいる。鼻曲山山頂の東端は大天狗と呼ばれる最高地点。山名標柱の先は盛り上がった岩頭となっている。鼻曲山の、あの特徴ある絶壁の上にあたるところ。ここで始めて人に出会う。すぐ東には緑の角落山、南に中軽井沢まで連なる山々、その先にはぼんやりと妙義山。木陰がない山頂に容赦なく日が照りつける。これでは長居はできない。


一路南へ、旧碓氷峠まで縦走路を辿る。手始めは小砂利の急坂を慎重に降る。雨水に侵食されて、掘割状にえぐれた尾根道。火山灰土の上に落葉が積っているから足にはやさしい。切り開かれているのは鼻曲山の山頂付近だけ。あとは展望の効かない樹林帯。熊笹の林床にミズナラ、カエデにカラマツ林。この先、留夫山に至るまで、みずみずしい新緑の稜線を歩く。時折視界が開けて東側の風景に目を奪われる。奇態な岩山と谷間が、彩り鮮やかな新緑で埋めつくされている。


留夫山へ続く鼻曲山縦走路、奥に見える妙義山 一等三角点のある留夫山山頂


小峰をいくつも越える。足が悲鳴をあげる急降下、あえいで登る長い坂。樹林の鼻曲峠を通過。一等三角点の留夫山に着いて驚いた。乱舞していた虫が衣服に纏わりついてお出迎え。ハエは五月蝿く、アブなら怖い。すわ退散して留夫山の下り坂で昼休み。軽井沢駅で買った「おぎのやの釜飯」を食う。中島誠之助ばりにクリから食べ始める。美味、いい仕事をしてますね。予定よりも1時間早い。早ければ早いなりに急ぐ。気付かぬまま一ノ字山を越えると、もう此処はセミの夏。


山道から林道に飛び出すと、旧中山道の十字路。左は霧積温泉へ、右は旧碓氷峠、熊野神社へ。クマの生息地の警告板、いくつかの石の祠。恩婦石の石碑、仁王門跡の案内板があるが、これって何? 熊野神社が山旅の終わり。参道に並んだ茶店を見ると歩く意欲を失う。見晴台遊歩道から軽井沢駅まであと6kmはタクシーに乗る。旧軽銀座では人波を掻き分けて走る。この人達は皆観光客。週末は大混雑になるという。軽井沢駅から鼻曲山が見える。緑の山はもう夏の山。


快晴 日帰り 同行者=O君 歩行距離=9.6km 歩行時間=3時間20

R軽井沢駅820⇒(草軽交通バス)⇒840長日向
長日向840920林道を横切る→935鼻曲峠分岐9451005鼻曲山10251040鼻曲峠→1125留夫山11351140休憩12101230一ノ字山→1305思婦石→1310旧碓氷峠
熊野神社1320⇒(タクシー)⇒1335JR軽井沢駅