不老山ふろうざん)   

146 2007/4/11(水) 不老山 928m




前日になって、午前中は晴れ、午後曇り、15時からは花散らしの雨が降るとの天気予報。世附の吊橋から上り、山市場の吊橋に降りて15:00のバスを待つ。これでは雨に遭う。山は地表より先に雨が降る。平地よりも天に近いからではあるめえ。不老山が関東の最西端にあるからよ。天気予報を信じて予定変更。1時間早く、山市場から登り始めて、JR駿河小山駅へ駆け込むルートにしよう。不老山とは不老長寿のフロウではなく、雨降山、アメフロウ山がなまったのだという。


山市場でバスを降りて、丹沢湖から流れ出る河内川沿いを数百m遡る。吊橋が見え、不老山への道標がある。二人並んで歩けるほどの幅がある吊橋。ふと上流を見ると、もうひとつ小さな吊橋がある。狭い一人だけの幅。間隔を空けて渡れとの注意書きがある。こっちの方が面白そうだと小さい橋を渡る。揺れる、大きく揺れる。前方を見ると橋が上下に踊っている。こわごわ渡りきると、整然と刈り込まれた茶畑が広がる。足柄茶。小さな実をつけた梅林を抜けると登山口がある。


狭い吊橋を(向こうから手前に)渡ると茶畑 芽吹きはじめた樹木の間から大野山を見る


杉林をジグザグに上る。振り返れば葉陰から大野山が見える。丹沢の低山にはファミリーハイクができる山が多い。シダンコ山、高松山、大野山。ところが、この不老山は不遇の山。訪れる登山客が少ないのは、植林帯が多すぎるからだろう。芽吹き始めた闊葉樹林帯に入る。春の山は賑わう。そよ風に恥らうスミレ、ようこそとヘビノコシカケ。芽吹き始めた木々、足元に蠢く虫、競い合って鳴く鳥。沢水がはしゃぎ、風に樹林が騒ぐ。木漏れ日が薄い雲を通して差し込む。汗がふき出してきた。


丹沢にしては珍しく、不老山は火山岩が風化した黒い砂まじりの山。ちなみに同じ丹沢でも、同角ノ山稜は花崗岩の白ザレの山。道標は完備している。作業道やけもの道に出くわしても、必ず道標が立つ。鹿柵が現れるとまた桧林。番ヶ平ノ頭を巻きながら上ると稜線に飛び出す。ここが本来の番ヶ平。見晴しの尾根の筈が、ぼうと霞む西丹沢の山並み。ゆるやかな桧の尾根道を辿ると林道に出る。番ヶ平の標識がある。朽ちたベンチでひと休み。枯れススキの向こうに小田原市街が霞んでいる。


この高さまでは春は届かない。固く締まった蕾、寒々とした林が広がる。有刺鉄線に注意しながら、鹿柵沿いに一旦鞍部まで下る。前方に大きな峰。姿を現した不老山。崩れかかった土留めの丸木を避けて直登する。長い急斜面を、最後のひと踏ん張りで登頂。ここは不老山の北峰、双耳峰の主峰。樹木で囲まれた山頂広場からは展望はない。壊れかけたふたつのベンチと山頂標識がある。いつの間にか日は翳り、地を這う風に身を晒す。おお寒。誰も居ない山頂でひとり摂る昼食。


不老山の北峰 不老山の南峰


細長い山頂広場の先に南峰がある。ここにも山頂標識。切り開かれた西斜面からは、本来ならば富士山が見えるところ。霞む西丹沢の山がただ見えるのみ。さて、駿河小山駅への下山路は二通りある。小山町の道標は金時神社を示し、手製の道標は県境尾根から生土(いけど)を奨める。生土とは坂田金時が生まれたところ。不老から生土へとは面白い。不老山の南斜面を下る県境尾根コースは、桧の幹に掴りながら降りる急坂。鬱蒼とした桧林にもウグイスが鳴きわたる。


傾斜が緩んで芽吹きの自然林に入る。いつの間にか黒ザレの道は赤土に変わる。送電塔を通り過ぎると県境尾根の続きは塞がれている。仕方なく林道へ降りて神縄断層への道を辿る。<<神縄断層とは今から1500万年前、現在の小笠原諸島の辺りにあった島が北上して、本州と衝突した痕跡だという。その島は伊豆半島となり、丹沢山塊が隆起した>>という。はて、その断層はどこにあるの。誰にも会わなかった山。今にも泣きそうな空。黒雲に追われて長い林道を駆け降りる。


薄曇り 日帰り 単独行 歩行距離=106km 歩行時間=4時間10

小田急、新松田駅715⇒(小田急湘南バス)⇒750山市場
山市場755935番ヶ平→945林道番ヶ平9501020不老山北峰10401045不老山南峰10501135林道に出る→1220生土→1235JR駿河小山駅