日向山ひなたやま)   

#128 2006/6/21(水) 日向山 1,660 山梨100名山→尾白川渓谷 名水百選




世をあげてFIFAワールドカップに狂奔。にわかサポーターの応援も空しく、日本代表もジャイアンツ同様、楽天クラブの仲間入り。救いようもない黒星続き。お山だけでも白い山へと、青松白砂の日向山を登り、深山幽谷の尾白川渓谷道を歩く。えっ、日向ビーチではありません。ひなたマウンテン。白砂とは風化した花崗岩砂の山。北アルプスの北端、前衛の山で、甲斐駒ヶ岳の北側の稜線にある。山はおばさんの散歩道のようにやさしく、渓谷道は険しいという。


例によってアクセスが悪い。うんざりの林道歩き1時間半を止めて、タクシー利用。長坂駅前には、タクシー営業所がなんと3軒もある。田園地帯に入ると前方に鳳凰三山に甲斐駒がぼんやりと見える。なにせ梅雨どき、今日は夏至。ここは北杜(ほくと)市白州。名産は果物。なんでもござる。リンゴ、桃、栗、柿のタネ。町村合併で良くなったものは何もない。水道料金は全市共通化、つまり値上げ、税金も。ハクシュウ町という名前がなつかしい、とは運転手さんの話。


森の中の別荘地を過ぎ高度を上げて登山口、矢立石。車が入れるのはここまで。日向山ハイキングコースの案内板の下に、貼紙がある。「錦滝→不動滝は、途中の林道が崩落しているため、通行できません」 気を取り直して上る登山道。目も鮮やかな新緑。広葉樹林帯から混生林。クマゼミのけたたましい大合唱。林床がクマザサのカラマツ林。山道には出没しないがクマが居るという。踏みしめる落葉。間伐されて転がる幹。さしたる急坂や難路もないが全身汗まみれ。


日向山から甲斐駒ヶ岳の北面 雁ヶ原から八ヶ岳を見る


山慣れた様子の女性が降りてくる。甲斐駒をすぐそばで眺めようと、鞍掛山へ登ろうとしたが、登山道が見つからなかったと言う。鞍掛山は標高2037m。山地図で見ると、日向山から大岩山へ続く稜線にある。しかも点線で描かれて往復4時間半。ちょっと無理。つぎにむっつり亭主とむっちり奥さんに出会う。皆、山頂までのピストンのようだ。また広葉樹林。緑の森にひっそりと咲くヤマツツジ。傾斜が緩むと、緑の樹林が途切れて、突然世界が真っ白に変わる。


粗い粒子の白砂と岩塔の傾斜地。その先は大絶壁。それが日向山山頂の西端、雁ヶ原。手書きの山頂標識。雲を通して淡い陽光が降り注ぐ。南方、緑なす山並みの奥に残雪の甲斐駒ヶ岳。北側にシルエット状の八ヶ岳。展望とそぞろ歩きの後、白砂に印された足跡を辿って降る。風化した奇岩群を右に見る急斜面。踏み込むと靴が潜るが、そこは花崗岩砂、雪のように滑ることはない。前方に聳える1622m峰との鞍部に、日向山下山道、錦滝を示す道標がある。



日向山は、そういつまでも楽な道を歩かせてはくれない。谷底めがけて自然林を降る。まず2連の鉄梯子の洗礼を受ける。後ろ向きに慎重に。下方から男二人づれが辛そうに上ってきた。膝を痛めないように、この山道を上りに選んだと言う。幹に縋り、根に掴まる急坂。崩れかけた木の階段、短いクサリ。滝音がだんだん大きくなってくる。やっと尾白川林道と錦滝。始めはゆるやかに岩を滑り下りた水が、飛沫をあげて落下する。滝下のあずま屋で涼をとりながら昼食。今日は食欲がある。


雁ヶ原の花崗岩砂と岩塔 尾白川随一の名瀑、神蛇滝


(この段落は読まないでください)
橋を渡ると車止めゲートがある。ここにも林道崩壊、通行止めの貼紙。このまま尾白川林道を矢立石に戻るのはどうも消化不良。渋るO君を唆して通行止めを突破。二人で歩けば怖くない。林道に転がる落石。錦滝から5分、崩落地点。右側の崖が崩れ、林道も破壊して花崗岩が堆積している。上方からの落石がないのを見届けて、幅30mほどの崩落地を素早く渡る。更に5分、尾白川渓谷道を示す道標がある。渓谷道は一部足場が悪い、との注意書きもある。ここを降りちゃおう。


(この段落も読まないでください)
ところどころ補修された木段を降る。枯れた篠竹を分ける山道。しかし最近人の歩いた痕跡がない。通行止めを突破した報いか、気がつくとヤブの中。道が消えている。上方に戻るとO君が尾根から降る道を見つける。あれっ、木の幹に巻かれた赤いテープを見落としたのか。また始まる急下降。鉄梯子を降って、ロープや鎖に縋って降りる道。吹き出る汗。クマゼミの鳴き声。崩れかかった木段を続けて降りると、滝音と人の声が聞こえる。岩をぐるりと回って尾白川、不動滝。


不動滝。「一人の延命行者がこの滝にうたれ、駒ヶ岳への登山道を開いた。行者が去ると滝の飛沫が前の大岩を削り、行者に似た岩が出来た」 エメラルドグリーンの河床。青い吊橋を渡る。渓谷の上流から下流へ、山腹の細い巻道を辿って竜神平。神蛇ノ滝の見晴台。「百合ヶ淵で行者が目を醒ますと枕辺に竜が現れ、この石を渡れと言う。そこには美しい3段の滝が現れた。それが神蛇ノ滝」 揺れる吊橋を渡ると駒ヶ岳神社。遊歩道の始まりは僕らの旅の終り。やれやれ。


曇時々晴 日帰り 同行者=O君 歩行距離=6.3km 歩行時間=4時間

長坂駅900⇒(タクシー)⇒925矢立石
矢立石9301100日向山・雁ガ原11201150錦滝12201300不動滝→1335神蛇滝13451425竹宇駒ヶ岳神社→1430駐車場
駒ヶ岳神社1450⇒(タクシー)⇒1505長坂駅