塔ノ岳10とうのだけ

#121  2006/1/8(日) 塔ノ岳 1,491m 日本100名山




記録的な豪雪が災害を招いた今年の寒気団。冬将軍来る。南関東は幸いにして圏外。冬の山登りを阻むのは雪と日没。山の日暮れは早い。昼夜が同じ時間なのは冬至、1222日。日の出がいちばん遅いのは元旦。日の入りが早いのは1月7日だという。さて、久々の快晴を待っていたかのように、大倉行きのバスはほぼ満員。大倉は塔ノ岳の登り口。下山は東へ、長尾尾根から札掛へ。あとはヤビツ峠までの林道歩き。バスを待つ時間が長ければ蓑毛まで歩くことにする。


大倉尾根といえば木段続きで悪名高いが、上り始めの樹林帯と、花立山荘直下の長い階段を除けば、なかなか変化に富んでいる。美林は一本松跡あたり。赤松の大木の間から、右に表尾根の山並、左には富士山が見え出す。上るにつれて残雪が増し、堀山のあたりから雪の尾根道となる。雪に足をとられるためか、体力の衰えゆえか、もうバテバテ。追い抜く人より、追い抜かれる人の方が多くなる。長い木段をやっと上って花立山荘。これで3度目の休憩。


花立付近 塔ノ岳山頂


山荘前のベンチに腰掛けてアイゼンを履く。これしきの雪には必要ないが、6本爪のアイゼンを折角持って来たんだもん。4本爪の軽アイゼンは近郊の山ならばこれで充分。但し着脱が案外面倒。10本爪やつま先に刃が出たアイゼンは何だか怖い。実は登山靴も新調。今日は靴とアイゼンの試着の日。昨年まで履いていたセールス品で足は泣いてきた。山から下りると小指の裏に水ぶくれが出来たり、爪が死んで憐れ真黒。悩ましきは幅広、甲高、外反拇指の足。


葉が落ちて、寒々としたウツギの群生を抜け、雪の木段を踏みしめて上がると塔ノ岳山頂。うへー寒い。冷たい強風が吹く頂稜広場。今日は遠望がきく日。裾野から山頂まで雪に覆われた富士山。その右奥に南アルプスの白い壁。逆光に光る湘南の海。横浜だって見える。デジカメを取り出して驚いた。バッテリー交換の警告が出る。交換しても同じ。まてよと、バッテリーをポケットに入れて暖めてやるとOK。写真を撮り終えると、風の当たらない東の山腹に逃げ込んで昼食。


山頂直下の急斜面を慎重に降りて表尾根へ向かう。雪は深くて重い。木道を歩いて木ノ又小屋。ブナ林に囲まれた瀟洒な小屋。上り返すと新大日ノ頭。さあ、ここから表尾根と別れて長尾尾根を下る。アセビの急坂を降ると、尾根の右斜面は展望のきかない桧林、左は雑木林越しに三つのコブは三ツ峰。
落葉に積もった雪を踏む音だけが聞こえるブナの森。鹿柵2くぐると山腹の道。最後に6ヶ所の木橋と、2ヶ所の崩壊地をこわごわ渡る。水音が聞こえる。やっと札掛。


塔ノ岳山頂、箒杉沢を隔てて不動ノ峰、棚沢ノ頭、蛭ヶ岳


人気のない丹沢ホームと称する国民宿舎を通り抜け、ゆらり揺られて吊橋を渡る。これから一路南へヤビツ峠まで丹沢林道を歩く。藤熊川の右岸に沿う暗い桧林の上り坂。路傍から流れ出す雪解け水。時折マイカーが傍らを駈け抜ける。右下を覗くと岩を噛む激しい水の流れ。左に仰ぎ見れば、西日を浴びた大山が姿を現す。札掛から40分、林道歩きも厭になった頃、小型のバンが止って、乗りませんか、と声をかけてくれる。地獄に仏。渡りに船。

先刻、札掛のゲート前に居たハンターの二人連れだ。好意に甘えて石油臭い後部座席に乗り込む。「獲物は鹿。禁猟区が広がって、この冬はたったの一頭さ」「鹿は示し合わせて禁猟区から出て来ない。馬鹿じゃない」「成長した雌鹿は45頭で群れを組む」「クセも臭みもなく美味の鹿肉。サシミにして食べる」「丹沢には熊は少なく、冬眠しない。熊は撃つなと言われている」そうだ。護摩屋敷の水、ヤビツ峠を越えて蓑毛まで送っていただいた。10回目の塔ノ岳。



快晴 日帰り 単独行 歩行距離=15.4km 歩行時間=6時間20

小田急、渋沢駅648⇒(神奈中バス)⇒700大倉大倉7:05→8:25駒止め茶屋8:35→9:10天神尾根分岐9:20→9:40花立山荘9:50→10:30塔ノ岳11:00→11:45新大ノ頭11:50→13:25上ノ丸13:35→14:00札掛→14:40桧沢出会
桧沢合流点1440⇒(自家用車に便乗)⇒1510蓑毛1530⇒(神奈中バス)⇒1550秦野駅