尊仏ノ土平2そんぶつのどだいら

#119 2005/11/26(土) 尊仏ノ土平 ← 塔ノ岳 1,491




赤色は人を興奮させるが、紅葉もその例に洩れない。山は紅葉の渓谷がいい。丹沢の紅葉は、西丹沢では玄倉(くろくら)川。それに用木沢、白石沢、寄(やどろぎ)沢。これしか知らない。東丹沢にも広葉樹の美林があるが、ヒルが恐い。思い出深い山の紅葉もある。夕日を浴びて金色に輝いたカラマツの大群山。天空に、ヒラヒラと風に舞った紅葉の落葉は林道秦野峠。昏れなずむ玄倉川沿いを、紅葉に酔い痴れて歩いたあの日。もう一度、あの紅葉の山を歩きたい。


るるぶの紅葉情報によると、ユーシン渓谷は落葉、丹沢湖は見ごろという。山行予定は、先ず3時間かけて塔ノ岳を上る。山頂から尾根を西へ降って尊仏ノ土平へ、1時間。あとは林道歩き。ユーシンを経て、丹沢湖畔の玄倉まで3時間。ざっと距離20km余りを7時間で走破する。最後の林道歩きが今日のハイライト。日頃、人っ子ひとり出会わない玄倉林道も、この季節になると、紅葉の見物客がどっと押しかける。長時間の林道歩きを渋るO君を、なんとか誘って紅葉狩。


さて、冬のはじめは快晴、無風。数人の立ちんぼを乗せて大倉へ。登り始めは朝7時。こんな筈ではと、体力の衰えを隠して上る大倉尾根。新装なった見晴茶屋。自炊小屋から通常小屋になったとの張り紙がある。大倉尾根といえば、長い木段が悪名高いが、癒しのポイントだってある。紅葉の一本松跡。モミジは植林だが、今は見事な紅葉のトンネル。左手、赤松の間に富士山が見え隠れする。さて、難関は花立山荘直下。325段の木段を、あえいで上ってベンチに倒れ込む。


一本松付近 一本松付近から


塔ノ岳に登る度に鹿を見かける。静かに草を食む見事な角の牡鹿が居る。そういえば、山頂下に案内板があった。<丹沢でよく見かけるシカは、本来は草地を好む平地の動物です。シカは山の動物としては大食漢なので、餌になる下草や木の芽生えがシカに食べられており、丹沢のあちこちで草が激減したり、将来の林を担う若木が育たなくなったりしています。そこで餌になる下草を残し、森林を健全な状態で後世に伝えていくために植生保護柵を設置しました>


山頂には、ベンチや土砂流出防止の木枠に腰掛けて休む十数人。微風だが、おお寒い。見晴らしがいい。360度、山なす山。西方、いっとき雲に隠れていた富士山が、冠雪の頂きを雲から出している。東はすぐそこに大山、新大日や行者岳などの表尾根の山々。北から西にかけて、陽を浴びた丹沢山、不動ノ峰に蛭ヶ岳。昼食中、40人ほどのツアーが賑やかに上って来た。何と新潟から来たご一行さま。丹沢の主脈を縦走して、今夜は蛭ヶ岳山荘泊だという。


ユーシン渓谷 玄倉川


塔ノ岳の西尾根を降る。急斜面に延々と続く木段。霜解けのどろんこ道。滑るな転ぶな、慎重に。下り始めて10分、不動ノ清水。パイプからほとばしる水。尊仏山の主人が毎朝40リットルの水を担ぎ上げる水場。傍らに小さな不動菩薩像に碑文。ほどなく傾斜もゆるんでブナ林。広葉樹林の中にツゲやアセビの群生。樹間から見上げる不動ノ峰、棚沢ノ頭。下方に白い河原の箒杉沢。厚く積もった落葉を蹴散らして進む。雰囲気のいい尾根筋にO君もすっかりご満悦。


広葉樹林から桧林のジグザグ道を降ると尊仏ノ土平。鍋割沢を渡る。広い涸沢。前回の記憶とはまるで違う。堰堤が出来ている。河原の中央に立つ枯木がない。今日は向こう岸の渡河点が見えるではないか。長時間の林道歩きを嫌って、滅多に人に会わないが、後方から人が来た。不動ノ清水でビデオカメラを回していた人。時間を確認する。玄倉発1506のバスに乗りたい。あと3時間21分。3時間で歩いて途中休憩は21分にしよう。公称は3時間50分、12kmの距離。



林道は鍋割沢の左岸を下る。源頭は丹沢山の箒杉沢が合流。この辺りは紅葉末期。懐かしの棚沢ノ頭尾根を見て熊木沢出合。源頭は蛭ヶ岳。真っ白な石で埋まる広い河原。水は伏流となって見えない。脚の疲労は増してゆく。1回目の休憩。ユーシンロッジへの分岐はオンタイム。雨山橋を通り過ぎ、素堀りのトンネル辺りから紅葉が冴えてくる。玄倉に近づくにつれて岸辺に、対岸の山腹に、鮮やかな紅葉が映える。O君も感嘆、よかった。玄倉は遠い。とてつもなく遠い。


快晴 日帰り 同行者=O君 歩行距離=21.3km 歩行時間=6時間45

小田急線、渋沢駅643⇒(神奈中)⇒700大倉
大倉705→825駒止茶屋835→915小草平920→940花立950→1025塔ノ岳1045→1145尊仏ノ土平→1215熊木沢ノ出合1225→1245ユーシン分岐→1445玄倉
玄倉1455⇒(富士急湘南バス)⇒1550小田急線、新松田駅