平標山たいらっぴょうやま

112 2005/7/28(木) 平標山 1,984m 花の100名山




梅雨が明けても、山行日を決めかねるうっとうしい毎日。台風7号が房総沖をかすめ去って、夏本番。平標山に登る。たいらっぴょうやま。谷川連峰の西端が平標山。その東の仙ノ倉山は谷川連峰の最高峰。このふたつの山を結ぶ稜線には、雪が融けると、谷川でも最大級のお花畑が現れるという。好展望にして花の山に登るのも楽でない。登山口から標高差1000mを3時間かけて上る。登り終えれば暑さと階段に負けて、右膝に痛みを抱えて泣き泣き降りた夏の山。


ふれあいの里管理事務所前が出発点。右手の平元新道は帰路の林道。左の松手山コースを進む。テニスコートを過ぎて、別荘地に入る。あれっ、登山口がない。後戻りすると山火事用心と書かれた赤い旗と導標がある。苗場スキー場を見上げながら歩いたので見落したのか。10分間のロス。仕切り直して、登山口は木段の急登から始まる。薄暗い潅木林、濡れた山道。風にもげた枝葉、転がるクルミの実。林床は熊笹のダケカンバに変わり、さらに低木となる。もう汗まみれ。


松手山から続く平標山への稜線 振り返って見る松手山、後方は苗場山


勾配がゆるんで樹林が開けると、高さ120mの送電鉄塔。ここでひと休み。振り返れば痛々しい山肌を晒す苗場スキー場。その右上は台地状の苗場山。また、うんざりの階段を登る。やっと松手山。重なる岩の上に山頂標識。久々の抜けるような青空、気持ちよい風。ここからは森林限界を越える。一望すると、笹と低木に覆われた平坦な稜線は、一ノ肩から平標山に続く。容赦なく照りつける灼熱の太陽。体が燃えるように熱い。これは不調の兆候。気がつけば、前方遥か先にO君。


植生保護のみならず、ガレ場にも木段、木道、規制のロープ。過剰整備された山は歩き難い。木段でも踏み板が広いと、まあ歩きやすい。辛いのは狭い踏み板のやつ。ただ慰めは色とりどりに咲く花。赤紫色した五弁のハクサンフウロ、咲き残った白いシャクナゲ、風に揺れるニッコウキスゲ。O君に追いつこうと必死に登って平標山。草地に囲まれた小広い砂礫の山頂。23角点に山頂標識。夥しい数の舞う赤トンボ。昼食を摂る数組の登山客。草地を見つけてへたりこむ。



この時期に、こんなに眺望がいいのは珍しいという。仙ノ倉山の奥に谷川岳のトマノ耳、オキノ耳。大きな雪渓は巻機山。あれは尾瀬の至仏山に燧岳、会津の高原山。大きな山体の赤城山。白根山、榛名山。噴煙たなびく浅間山。山上台地の苗場山。遠く、まだ冠雪の北アルプス。つくづく眺めると、この平標山と仙ノ倉山は、どうも他の谷川の山と違うようだ。谷川岳といえば峻険で岩稜の山。平標山と仙ノ倉山は、ゆったりとした起伏の風食裸地。低木が散在する笹と草原の山。

仙ノ倉山へ向かう途中、平標山を振り返る 平標山ノ家

食欲はないが、無理にパンを腹に押し込んで、仙ノ倉山へ向かう。山頂にリュックを置いて、3本目のスポーツドリンクだけを持つ。木段を下りて木道を歩く。稜線と言うより、花咲く高原の散歩道。ニッコウキスゲの群生地がある。釣鐘状の花弁にとまるアゲハチョウ。3つ目の小ピークに上がる。あと10分で仙ノ倉山、しかもほぼ平坦なのに、ひどく草臥れて動けない。軽度の熱中症か。O君は快調に4つ目のピーク。大声でUターンするよ、と告げる。岩にもたれて空ろに眺める谷川の山。仙ノ倉山敗退。


見下ろすと、緑の林の中に小さな赤い屋根が見える。木段を下り始めた途端、右膝がずきんと痛む。やってしまった。右足からゆっくり下りよう。高度が下がるにつれて、笹原は低木林となりカラマツも増えてくる。平標山ノ家。山小屋の後ろに水場がある。冷たくてこれはうまい水。ひととき生き返る。また、泣きの階段がはじまる。右足を先に下ろして左足を添える。間違って、左足を先に下ろすと激しく痛む。広葉樹林の中、ホトトギスが嗤う。テッペンハゲタカ、マイッタカ。はい、参りました。木段が延々と続く。


快晴 日帰り 同行者=O君 歩行距離=13.3km 歩行時間=7時間25

JR越後湯沢駅730⇒(タクシー)⇒750平標登山口
平標登山口800→950松手山1000→1125平標山1200→仙ノ倉山の手前のピーク→1325平標山1350→1420平標山ノ家1435→1550平標山登山口→1650平標登山口
平標登山口1715⇒(南越後観光バス)⇒1751JR越後湯沢駅