鹿岳かなだけ

108 2005/5/21(土) 鹿岳 1,015m (ニノ岳 ) ← 四ツ又山 900




西上州から奥秩父に続く山は、端正な姿とはほど遠く、奇怪な山容、岩峰の山ばかり。妙義山、荒船山、両神山また然り。そんな中にあって、四つのピークを持つ四ツ又山は、下仁田富士と称される異端児。一方、鹿岳は二つの岩峰が天に向かって聳える山。鹿岳と書いてカナダケと読む。岩稜のスリルを求めて、新緑の四ツ又山から鹿岳へ登る。ちびらなければいいが。


ようこそ、ネギとコンニャクの下仁田へ。南牧バスはマイクロバス。南牧川沿いに走って小沢橋下車。絶好の山行日和。せせらぎの大塩沢川を遡って大久保集落。登山口の導標と、南牧村ハイキングコースの大きな絵看板がある。ここからが山道。堰堤を右岸の杉林で巻くと細い流れの滑滝。マメガタ峠との分岐に着くと、大天狗を経て四ツ又山への道標。出のいい水場がある。


山の凹みを目指して登れとの標識があるが、生い茂った自然林は展望を隠し、どこが鞍部か分からない。杉林の中、丁寧に石組した土留め。小石混じりの崩れ易い土の急登を汗して上る。新緑の雑木林に咲く赤いヤマツツジ、上りの辛さを忘れさせる花。やがて大天狗の鞍部。ここは下郷や野々下への峠。北斜面から吹上げる微風。石塔と天狗のレリーフが気持ちを和ませる。


四ツ又山から鹿岳を見る 一ノ岳と二ノ岳 妙義山はすぐそこ


ひと月前はアカヤシオに彩られた山、今ツツジに酔い痴れて登る。乾いた土と木の根が張る主稜線の急勾配。ここは立木に捉まって身体を引き上げる。山頂への分岐をもうひと頑張りすると四ツ又山の主峰P4。二等三角点に山頂標識。上り口を睨む神官姿の石像。遠く浅間、奇峰妙義山。すぐそこに緑の森から突き出た鹿岳の岩峰。あんな山に登れる筈がない。


すこしづつ高度を下げながらP3を越えて石祠のあるP1へ。ここから鹿岳へは、西へ向かって200m下り、300m上り返す。ロープに身を委ねて、とんでもない急斜面を下りる。ギョッ、赤い蛇。下りるほどに樹間から見え隠れする鹿岳の一ノ岳が迫る。草原のマメガタ峠、大久保への分岐点。鹿岳から40歳くらいの人が降りて来た。この人に鹿岳の様子を尋ねて、うん納得。


鹿岳への上り始めは杉林。落葉を踏みしめてジグザグの道を上る。新緑の潅木帯からは岩のヤセ尾根。心地よい風。三つ目のコブを越えると、一ノ岳の絶壁に突き当たる。北側を回り込むような桟道をロープにしがみついて上り、岩の間を通過すると鹿岳のコル。やれやれ。四段の丸木梯子を上り、岩を攀じ登り、急な登りをこなすと笑い声が聞こえる。一ノ岳登頂。


右手前は一ノ岳、左は四ツ又山


大きな黒岩に摩利支天の石碑。赤いツツジと白い糸屑のような花が咲く山頂。展望またよし、360度。東方、眼下に四ツ又山、その後方は稲含山か。西にニノ岳の岩稜、その右奥は妙義。黒岩の手前に陽気な二人の女性、岩の向こうには敷物に食べ物を全部広げて食事中の二組の老夫婦。少し下りると切り立った絶壁のテラスがあるという。下を覗いたらニノ岳を登れなくなっちゃう。


鹿岳のコルまで戻って西へヤセ尾根を辿ると、梯子とロープは一人ずつとの注意書きがある。垂直に立てられた19段の丸木梯子。これは序の口。次は層状に積み重ねられた階段のような岩を上る。幸いにも、左に添えられた6段の梯子をロープに助けられて上ればよい。それでも緊張。梯子のない頃は落下事故が絶えなかったという。勾配がゆるむと二ノ岳登頂。


男女6名の若い人達がビールパーティ中の狭い山頂。東に先ほど登った一ノ岳。よくぞ上ったあの岩峰。ぐるりと上州の山、浅間に八ヶ岳、台状の荒船山。さて下山。こわごわ鹿岳のコルに戻って、一ノ岳直下が下高原への降下点。下山路も容赦なく、楽はさせてくれない。長い急斜面と崩壊地に泣く。一般道に下りると膝ガクのご帰環。緑にむせたツツジの岩山、登って降ってまた登り。


快晴 日帰り 単独行 歩行距離=10.9km 歩行時間=5時間45分

上信電鉄、下仁田駅845(南牧バス)858小沢橋
小沢橋9001015大天狗ノ鞍部10201050四ツ又山11001145マメガタ峠11551240鹿岳のコル→1250一ノ岳13001320ニノ岳13301435鹿岳登山口→1520小沢橋
小沢橋1627⇒(南牧バス)⇒1641下仁田駅