鍋割山2 なべわりやま

#101 2005/3/7(月) 鍋割山 1,273m ← 塔ノ岳 1,491m




一日だけの春が来て、吹き荒れた春一番。道連れは春の大雪。今年の杉花粉量は例年の数十倍といわれる。町にあふれる立体成型のマスクは今時のファッションか、初春の風物詩か。高温、乾燥、強風の日はお気をつけ遊ばせ。これぞ花粉の3Kという。その翌日からは、また真冬に逆戻り。寒さに震え、寒風に首をすくめて過ごす毎日。今月は平地にも2回の降雪。TVが騒ぐほどには降らず、すぐ消えた春の雪。近郊ではどの山も雪化粧。ところで、私事のため、今年はじめての山行。脚力もすっかりなまってしまっただろうと、体力テストを兼ねて丹沢を登る。

久々の好天。上り始めは凍った山道。上るにつれて霜の道となる。静かな山。木々の語らいも、鳥の囀りもなく、ただ霜柱を踏み砕く音だけが聞こえる。改装中の見晴茶屋前を過ぎると、いつしか雪道となる。一本松跡。西に雲間から富士山が覗く。駒止茶屋上のベンチでほっとひと休み。東には三ノ塔や鳥尾山の白い稜線。気持ちのいいアカマツ林を歩いていると、後ろに迫る気配がする。ジャージにタイツ姿のトレイルランナー君が傍らを走り抜ける。上り下り共、1時間以内だそうだ。堀山では駆け降りてくるおっさん。55分で下山するという。今日は超人に出会う日らしい。



塔ノ岳山頂から


丹沢にも降ったパウダースノーの雪、悪名高い大倉尾根のザレ場や木段を覆い隠す。雪のトレ-スどおりに歩かないと頗る危険。靴跡を外すと太股まで潜り込む。300段もの長い木段を上って花立山荘。雪に足を取られるのか体力が衰えたのか、草臥れて4度目の小憩。ベンチで休む数人。空の青さに感激している奥さんと、それを取り合わぬ旦那が居る。ここで軽アイゼンを履く。山頂直下の最後の急斜面にアイゼンの爪を叩き込んで登ると塔ノ岳山頂。雪の頂稜広場からは抜群の景観。不動ノ峰から蛭ヶ岳に続く雪の稜線。そこだけ白く浮かび上がった富士山がまぶしい。


鍋割山稜から蛭ヶ岳を望む


鍋割沢から吹上げる寒風に追い立てられて、尊仏山荘に飛び込む。水場から主人が汲み上げてきた水で沸かしたインスタントコーヒー、1400円也。有難く頂くと、やっと人心地がつく。そこは、いつもの常連が集うサロンだった。山情報と馬鹿話に花が咲く。鍋割山の下りは雪がないとか、丹沢山への尾根道は樹氷が見事とか。2日に一度登ってくる70才ぐらいの人が2人も居る。ひとりは、今年中に登頂1500回になる計算だと言う。月曜日だけに登って来る人が、その後は山頂で暮らせばいい、天国にも近いし、なんて言いながら3杯目のビールを注文する。閑人の話は尽きない。

金冷ノ頭で右に折れて鍋割山稜を辿る。苔蒸したウツギと裸木のリョウブとの取り合わせが妙。春は新緑、秋ならば紅葉の稜線は意外に急斜面。少し水っぽくなった雪は体力を消耗させる。雨期上の足跡は鹿かしら。葉を落とした樹木の間から、右手は丹沢主脈の山並み、左は大倉尾根を見ながら進む。ブナ林を抜けて、お疲れ、鍋割山。雪の広場に日だまり広場。鍋割山荘前に並べられた太陽電池パネルにバクテリア分解の瀟洒な公衆トイレがある。眺めもいい。紅玉を丸かじりして、そろそろ下山の時。アイゼンを仕舞い、ザックと疲れを背負って雪解けの尾根を下る。



快晴 日帰り 単独行 歩行距離=17km 歩行時間=7時間

小田急線、渋沢駅640⇒(神奈川中央交通)⇒655大倉
大倉7:10→8:30章草平8:45→9:40花立山荘9:45→10:20塔ノ岳10:55→11:10金冷ノ頭→12:30鍋割山12:50→13:45後沢乗越13:50→14:25二俣→15:30大倉

大倉1553⇒(神奈中)⇒1610小田急線、渋沢駅