八月中旬、薫は八の宮の一周忌の準備にいそがしい宇治を訪れて再ぴ意中を訴 え、大君のかたくなな態度に困惑する。大君は自分の人生を諦め、中の君を薫と 結婚させようと思っている。一周忌がすんでまもなく薫は女房の手引きで寝所を 襲ったが、大君は身をかわし、中の君を相手に襖悩の一夜を明かすほかなかった。 八月末、薫は一計を案じて匂宮を宇治に案内した。匂宮は中の君との首尾を遂げ たが、薫は大君に拒まれて、道化た役割をまた演じてしまった。匂宮は身分がら 宇治訪問もままならず、大君は心配でならない。薫は中の君のために匂宮を宇治 に伴う口実として紅葉狩を催したが、仰々しいお供の人数のために山荘を訪れる ことさえ妨げられ、かえって姫君たちに身分違いを思い知らせることになってし まった。京では匂宮の身持を治めるために六の君との婚儀をいそぐことにした。 大君の心労は激しく、ついに十二月には薫が見守るうちに他界してしまっ た。薫にはそれは出離を促す仏のしわざにも思えた。