五十四帖梗概
夕 霧
〜Yugiri〜


 一条御息所は病に臥し、加持を受けるために、落葉宮ともに洛北小野の山荘に 移った。夕霧の落葉宮への愛情はしだいにつのり、八月中旬夕霧の立ちこめるこ ろ、小野を訪問する。夕霧は帰りそびれてそのままとどまり、落葉宮に愛情を告 白するが受け入れられない。一条御息所は律師から夕霧の行動を聞かされて当惑する が、落葉宮が夕霧に頼るのもその身の振り方の一つの解決として、夕霧の真意を 確めるために消息を送った。ところが雲井雁が嫉妬してその手紙を隠してしまっ た。夕霧から何の応答もなく、悲嘆のあまり母御息所は息絶えてしまう。夕霧は 葬送のことなど懇切に取り計らった。
 九月中旬、夕霧は小野を訪問して、落葉宮に迫るが、またむなしく帰った。源 氏も夕霧の噂を聞いて心を痛め、紫の上は女の宿命をつくづくと思う。落葉宮は 世をはかなんで出家しようとするが、父朱雀院は反対し、夕霧は大和守を語らっ て落葉宮を強引に一条宮に移し、侍女小少将の手引きもあって、ついになびかせ てしまった。雲井雁は激怒して、父の致仕大臣邸に帰ってゆく。夕霧は落葉宮と 雲井雁との間に立って途方にくれている。夕霧の愛人で、多くの子供がいる藤典 侍は消息を送って雲井雁を慰める。