丹沢山4たんざわさん) 

#140 2006/12/11(月) 丹沢山 1,567m → 塔ノ岳 1,491 日本100名山




天気予報士によると、一年でいちばん早く日が沈むのは今頃だそうだ。冬至よりも早い日の入り、1630。山が暗くなるのはそれよりも1時間前。だから1530にはゴールしたい。ところで、丹沢山へ登る最短ルートは塩水橋からだという。塩水橋は、宮ガ瀬湖の南岸から6kmほど南下したところ。標高差1,100m余りの天王寺尾根を上って丹沢山。塔ノ岳を経て長尾尾根を降りれば周回コースとなる。16kmの長くて辛い歩き。バテなければいいが。日暮れ前に下山できればいいが。


紅葉の飯山温泉郷を走り抜けて、宮ガ瀬湖から本谷川沿いの県道70号に入ると、そこはもう落葉の渓谷。ヘアピンカーブの先端が塩水橋。橋を渡ると数台分の駐車スペースがある。既に2台が駐車している。今朝は久々の快晴、登山日和との予報が大外れ。寒々とした谷間から恨めしげに鈍色の空を見上げる。長旅は、車止めゲートをすり抜けて、川沿いの林道歩きから始まる。堂平へ通ずる新、旧瀬戸橋をやり過ごす。激しい水音を聞きながら本谷川を遡る。


本谷橋登山口から、濡れた落ち葉を踏んで小沢の左岸を上ると、右手に鹿柵が現れる。金網に沿って外側の梯子を上り、内側の梯子を降りて鹿柵に入る。間伐作業を終えたばかりの桧や杉林をジグザグに上る。尾根筋に上り着く。天王寺峠。ところで、東丹沢は悪名高きヒルの生息地。6月から9月の間、東丹沢なら何処にでも生息するという。杉林で常に湿り気があるところを好むから、この辺は絶好のテリトリーだろう。12月なら、ヒルにお目もじすることはあるまい。



丹沢山直下の天王寺尾根 丹沢山山頂



天王寺尾根を登る。桧林をひたすら上る。食害保護のため、網が巻かれた幹。鹿柵を出て、また鹿柵に入る。ほどなく、稜線を境にして、南斜面は相変わらずの桧林、北斜面は自然林に変わる。落葉した樹間から丹沢主脈の山並が見える。あれは丹沢三峰。太礼ノ頭、本間ノ頭、円山木ノ頭。急登につぐ急登。階段替わりの桧の根。崩れやすい砂混じりのロープ場。濡れて滑りやすい黒土の斜面。癒しは聞こえる冬鳥の囀り。草木が大きく揺れると鹿が急斜面を駆け下りて行く。


植林帯からアセビの茂みに入り、ブナとモミ林に変わる。この辺りは気持ちのいいところ。厚く積った落葉は踏み跡を消してもコースを見誤ることはない。ただ尾根筋を外さなければいい。堂平分岐を通過。やがて左右が崩壊した岩塊のヤセ尾根に出る。鎖場がある。ガレ場がある。崩壊地は展望がいい。見上げるように見えた丹沢三峰も同じくらいの高度に見えてきた。苔が幹に描いたまだら模様のブナ林。木道と木段が続く。時折立ち止まり、息を整えてまた上る。


霧氷、 不動ノ峰 日高


新装のみやま山荘脇を通ってベンチにへたり込む。丹沢山の山頂は草地の広場。一等三角点や木製と御影石の山頂標識がある。西を見やると、なんと霧氷の林がある。真っ白に覆われた不動ノ峰北面。これから蛭ヶ岳までピストンするという元気君が氷の世界へ降りてゆく。昼飯にはまだ早い。小憩後、塔ノ岳へ向かう。膝にずしんと響く木段を降りる。ウツギの枝から剥がれた氷の小片や水滴が降りかかる。薄くなった頭に直撃弾はごめんだ。あわてて帽子を被りだす。


うねるようなクマザサの草原が続く。鹿の糞を踏まないよう足元を見て、また頭を上げて展望を楽しむ竜ガ馬場。ここは抜群の景観を誇る。東は大山、下方に日の射す市街地。西は斜面の下に白い河原の箒杉沢、丹沢や道志の山々。日高を越えると草を食むニ頭の牝鹿。そう云えば、天王寺尾根で鹿の調査をしている県の職員に会ったっけ。塔ノ岳直下にはみごとな角を持つ牡鹿がいる。逃げもせず、もの憂げに見つめている。アセビの群生の中、急階段をやっと上って塔ノ岳。


丹沢山地の標高番付を見ると、塔ノ岳は第13位、丹沢山は第7位にすぎない。トップは蛭ヶ岳。塔ノ岳山頂からは第1位から第7位くらいまでは山位同定できる。昼食を終える頃、山頂に霧が忍び寄ると、十数人居た登山客も思い思いの下山路へ降りてゆく。長尾尾根は年初に歩いた稜線。気をつけよう、落葉に隠れた木の根と浮石。上ノ丸の巻き道は整備したばかりの道。本谷川へは山腹の狭い巻き道。沢音が聞こえ出す。本谷橋は揺れる吊橋。ゆらり揺られてゴールイン。


曇り 日帰り 同行者=O君 歩行距離=15.8km 歩行時間=6時間30

東名道、厚木IC⇒宮ガ瀬、三叉路⇒塩水橋
塩水橋715→本谷橋→(天王寺尾根)→940堂平分岐9501020丹沢山10401145塔ノ岳12251255新大日ノ頭→(長尾尾根)→1400上ノ丸1420→本谷橋→1515塩水橋
塩水橋⇒宮ガ瀬、三叉路⇒東名道、厚木IC